認知症と感情には密接な関係があります。
家族や友人に認知症の方がいる場合、認知症と感情の関係を理解することは重要です。
今回は認知症と感情について、以下の項目を中心に解説します。
- 認知症と感情の関係
- 認知症が引き起こす感情失禁の症状
- 感情が変化しやすい血管性認知症
- 認知症が引き起こす感情失禁との向き合い方
認知症の方の感情を理解するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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認知症とは
認知症は、脳の病気や障害などの様々な原因により、日常生活に支障が出てくる状態です。
認知症は、脳に異変が起こる原因や部位によって、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症などの種類に分けられます。
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認知症の症状
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。
ここからは、認知症の症状について、詳しく解説します。
中核症状
中核症状とは、脳の細胞が死滅することによって起こる、認知機能の低下症状を指します。
具体的には、記憶障害、理解力・判断力の低下、見当識障害、遂行機能障害、失語・失行・失念といった症状が挙げられます。
なお、見当識障害とは、時間や場所、周囲の人々と自分との関係を正しく理解できなくなる症状です。
また、遂行機能障害とは、計画を立てて、工程を順序よくこなしていく能力が低下する症状です。
認知症のもっとも代表的な症状である中核症状。記憶障害などを伴う中核症状ですが、どのような原因や症状があるのでしょうか?認知症の中核症状について症状の種類や治療法、対処方法についてご紹介します。アルツハイマー型[…]
周辺症状
周辺症状とは、中核症状に付随して起こる症状です。
中核症状だけでなく、周囲の環境や人々による影響、患者自身の経験、性格などの要因が影響を及ぼし合っています。
具体的には、暴力や暴言、抑うつ、妄想、幻覚といった症状などが挙げられます。
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認知症と感情の関係性
ここでは、認知症と感情の関係性について解説していきます。
関係性を理解することで、行動の理由も理解できるようになります。
認知症患者の気持ち
認知症だからといって、気持ちが失われているということは決してありません。
むしろ、認知症患者は自身の記憶力・見当識・判断力などの機能が少しずつ失われていくことを自覚し不安になっています。
不安になっている状況を言葉で表現できないだけなのです。
周囲の人は、認知症患者が常に不安を抱えやすい状況にあることを理解する必要があります。
認知症患者の感情は残る?
認知症が進行してくると、物事の事実関係は忘れてしまいます。
しかし、その時に感じた感情は心に長く残ります。
例えば、ある行動を認知症の患者が失敗してしまい、その失敗を誰かに怒られてしまうと、「失敗した事柄」は忘れてしまいますが、「怒鳴られた・怒られた」という感情は残ります。
認知症の患者が感じた感情は長く残るため、認知症の初期段階から患者本人と家族、周りの人と良好な関係を築き、患者本人が物事に失敗しても、優しく笑顔で受け入れてあげましょう。)などの文を生かして書いてください。
認知症患者の記憶障害は、すべてを忘れてしまうかのように思えます。
しかし、自身の体験や事実関係を忘れてしまうことが記憶障害の特徴です。
一方で、体験や事実関係において感情が伴っていると、感情は心に長く残るということがわかっています。
例えば
- 食事や排せつなどの失敗を周囲からとがめられた
- 施設内のレクリエーションで成功体験を通し賞賛された
などの体験から考えてみましょう。
「失敗」と「成功」の体験は忘れてしまう可能性があります。
しかし、「とがめられた」「賞賛された」ような感情に働きかけるものは残ります。
よって、認知症患者と関わる際は
- 患者本人・家族・周囲の人と良好な関係を築く
- 物事に失敗しても優しく笑顔で受け入れる
- 肯定する声かけによる感情への働きかけをする
などの対応が望ましいといえます。
認知症患者は感情が豊か?
認知症患者は健常者と比較し感情が豊かとも言われています。
「その人らしさ」とは、もともとの感情・人生で得られた知識・性格の3つから成り立っていると考えられています。
ところが、人生で得られた知識は認知症の進行により徐々に失われます。
その結果、感情の部分が占める比率が大きくなります。
健常者と比較し喜怒哀楽が大きくなると考えられるのです。
認知症患者が周囲の言葉や態度に反応しやすく、怒りをあらわにするのは感情の占める割合が大きいからといえます。
逆に、優しく丁寧な対応によっては笑顔や喜びを生み出すこともできるといえます。
認知症患者の感情表現について
ここでは認知症患者の感情表現について、
- 怒りっぽくなるかどうか
- 暴力・暴言
の2点から解説します。
認知症患者は怒りっぽくなる?
認知症患者は怒りっぽい人が多いといわれています。
脳には様々な役割があり
- 感情を抑える
- 冷静に行動する
- 自身の行動の先を予測する
など人の理性にかかわる部分(大脳の前頭葉)が、認知症によって萎縮します。
そのため、ささいな出来事がきっかけになり急に怒りだす(易怒性)ことがあるのです。
また、認知症患者は周囲の人の行動・感情や自身の体調に感情を左右されることがあります。
- 家族がイライラしている
- 他の患者が大きな声を出した
- 自身の体調が悪い
などが考えられます。
原因は1つとは限りません。
さまざまな原因が複合的に絡み合っているため、解決できそうな問題から対処していきましょう。
認知症による暴力・暴言
認知症患者は、自身の感情がコントロールできず暴力・暴言が見られることがしばしばあります。
しかし、理由なく暴力・暴言を起こしているわけではありません。
周辺症状は中核症状とその他周囲の環境・人・経験・性格などの要因が影響を及ぼし合って起こる症状です。
行動を起こす原因を判断し対処できれば暴力・暴言を減らせるといえます。
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認知症が引き起こす感情失禁とは
認知症の患者が引き起こしやすい感情の変化として、感情失禁が挙げられます。
ここからは、感情失禁について、詳しく解説していきます。
症状
感情失禁とは、感情の調整がうまくできず、過度に感情を出してしまうことです。
具体的には、些細な出来事で大喜びしたり、激怒したり、泣いてしまったりすることが挙げられます。
認知症の場合、患者本人の精神状態が不安定になることで起こる可能性があります。
原因
感情失禁は、自分自身の感情がコントロールできなくなることで表れます。
そのため、感情失禁の症状が出ている本人も、なぜ今この感情が出ているのかはわかりません。
認知症症状の一つでもあるため、怒るのではなく理解することが大切です。
認知症の方の感情失禁との向き合い方
ここからは、認知症の方の感情失禁との向き合い方を、詳しく解説します。
症状を理解する
認知症の方の感情失禁の症状を、病気による症状の一つとして理解するようにしましょう。
症状を理解する事によって、患者に関わる側の人の気持ちも楽になり、自然と感情失禁の症状と向き合えるようになります。
きっかけを理解する
感情失禁の引き金を理解することが大切です。
感情失禁が見られるタイミングは、患者によって異なります。
些細な言動で感情失禁が見られる人もいれば、何も言わなくても何かを見ただけで感情失禁が出る人もいます。
しかし、感情失禁のきっかけは簡単に分かるものではありません。
家族、ケアスタッフなどと情報を共有して理解していきましょう。
感情に惑わされない
感情失禁に陥っている人と関わる際は、感情を高ぶらせず落ち着いて対応することが重要です。
感情失禁に陥っている人は、なぜ自分が今の感情に陥っているのか分からない場合が多いです。
そのため、本人の感情に合わせた対応をしてしまうと、相手はますます混乱してしまいます。
お互いのためにも、症状に惑わされないような介護を心がけましょう。
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感情が変化しやすい血管性認知症
感情が変化しやすい認知症の種類として、血管性認知症が挙げられます。
ここからは、血管性認知症について詳しく解説します。
症状
血管性認知症は、脳に血液を送る血管に異常が生じ、脳の一部に血液が行き渡らない、血管が破れて出血することで起こる認知症です。
以前はできていたことが段取り良くできなくなる、記憶を思い出す時に時間がかかる、物忘れが増えるなどの症状がよく現れます。
脳は部位ごとに働きが異なるため、神経細胞が死滅した部位によって現れる症状も異なります。
特に、脳の白質という、情報を伝える経路の神経線維が死滅するケースが多いです。
神経線維の死滅が広範囲に及ぶと、気分の落ち込み、言葉数が減る、感情のコントロールができなくなるといった症状も代表的です。
治療
血管性認知症の治療は、脳血管障害の再発予防と認知症の症状緩和が中心です。
脳血管障害の再発防止のために、食事内容の見直し、適度な運動、禁煙などの生活習慣の改善が行われます。
また、脳梗塞を防ぐために、血液をサラサラにする「抗血小板薬」、「抗凝固薬」が使われることもあります。
血管性認知症によく見られる意欲低下がある場合は、脳の循環と代謝を改善する「脳循環代謝改善薬」、「抗うつ薬」が使われることもあります。
血管性認知症によって運動障害や言語障害が見られる場合は、リハビリテーションが一般的です。
自立した生活に近づくことができるだけでなく、脳にも多くの刺激が加わり、認知症の進行を抑える効果も期待できます。
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認知症患者に対してできること
大切な方やご自身が認知症になったらと考えると、たいへん不安になることでしょう。
認知症には何らかの兆候が見られます。
普段と何かが違うと感じたら適切な機関へ相談しましょう。
できるだけ早期に対応すると、症状の改善や予防につながりやすいといわれています。
- かかりつけ医
- 物忘れ外来
- 地域包括支援センター
- 認知症の電話相談(公益社団法人 認知症の人と家族の会)
などに相談してまずは助言してもらうとよいでしょう。
また、認知症患者を地域で支える仕組みの構築も徐々にすすんできています。
「認知症施策推進大綱」は
- 認知症の発症を遅らせる
- 認知症患者が希望をもって生活できる社会を目指す
- 患者と家族の視点から「共生」と「予防」をすすめる
という国の施策です。
さまざまな知識や経験をもった専門家たちが、適切に支援し関わってくれます。
認知症患者を地域で支えていくために、必要に応じて
- 介護保険サービス:デイサービス・ショートステイ・ヘルパー
- 介護保険施設:老人保健施設・特別養護老人ホーム
などの利用も検討してみてはいかがでしょう。
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認知症と感情のまとめ
ここまで認知症と感情についての関係、感情失禁、血管性認知症を中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症が進行しても、感情は心に残りやすい
- 認知症による感情失禁は、過度に感情を出してしまうこと
- 認知症の中でも、血管性認知症には感情の変化が起きやすい
- 感情失禁と向き合う時は、感情に惑わなれないことが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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