パーキンソン病は、10万人当たり100~150人(60歳以上では100人に1人)が発症する進行性の病気です。
中脳の神経伝達物質であるドパミンが減少することで起こります。
パーキンソン病はほとんどが孤発性です。
近年の研究で、患者の方のうち5~10%が血縁者に発症者がいる家族性パーキンソン病だということが分かってきました。
さらに、若年で発症する方に家族性パーキンソン病が多いことも判明しています。
しかしながら、パーキンソン病の根本原因および根本治療方法はまだ見つかっていません。
パーキンソン病は、進行段階によって、あらわれる症状が異なります。
とくに、進行期には運動症状だけでなく、合併症もあらわれるため、適切な対策が必要です。
本記事では、パーキンソン病の症状の進行について、以下の点を中心にご紹介します。
- パーキンソン病の進行段階別の症状
- パーキンソン病の進行を遅らせる方法
パーキンソン病の症状進行の対策のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
パーキンソン病は大多数が原因不明の進行性の病気です。脳の黒質に存在するドパミン神経がなくなることで、筋肉が硬くなったり、手足が震えるなどの症状が見られます。パーキンソン病は親から子への遺伝や影響はあるのでしょうか?本記事では以下に[…]
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パーキンソン病とは
パーキンソン病は、神経変性疾患の一つで、中脳の黒質という部分の神経細胞が徐々に減少することで起こります。
この神経細胞の減少により、脳内のドパミンという神経伝達物質が不足し、様々な症状が現れます。
この疾患は、1817年にイギリスの医師ジェームス・パーキンソンによって初めて報告され、その名を取ってパーキンソン病と呼ばれています。
パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の主な症状は以下の通りです。
- 振戦(ふるえ)
- 固縮(筋肉の硬直)
- 寡動・無動(動作の遅さや少なさ)
- 姿勢反射障害(バランスの保持が難しい)
これらの症状は、ドーパミンの不足により引き起こされます。
また、これらの運動症状の他に、
- 嗅覚低下
- 便秘
- 頻尿
- 立ちくらみ
このような非運動症状も見られます。
パーキンソン病の進行スピード
パーキンソン病の進行スピードは個々の患者さんにより異なります。
病状の進行には、遺伝的要因や生活習慣、環境因子などが影響を与えると考えられています。
また、パーキンソン病の進行に伴い、症状の日内変動や運動合併症、非運動合併症などの問題が生じることもあります。
これらの症状の管理と緩和が、治療の主な目標となります。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
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パーキンソン病の症状の経過
パーキンソン病の進行段階は、大きく3つに分けられます。
あらわれる症状は、進行段階ごとに異なりますが、症状のあらわれ方にも個人差があります。
同じ進行段階でも、特定の症状があらわれる方と、あらわれない方がいます。
ここからは進行段階ごとの症状を解説していきます。
パーキンソン病診断前
パーキンソン病と診断されるのは、運動症状があらわれてからが一般的です。
しかしパーキンソン病では、運動症状に先駆けて、非運動症状があらわれることもあります。
非運動症状とは、主に精神面にあらわれる障害です。
パーキンソン病の非運動症状には、具体的に以下の症状があります。
【パーキンソン病による非運動症状】
- 自律神経失調(便秘・動悸・めまい など)
- うつ
- 幻覚
- 妄想
- 嗅覚障害
- 手足のしびれ
非運動症状は、発症前だけでなく、パーキンソン病の発症後にも進行します。
上記の非運動症状に加え、手足の震えや筋肉の硬直といった運動症状が顕著になると、パーキンソン病と診断されます。
病初期
運動症状があらわれると、パーキンソン病と診断されます。
パーキンソン病の初期では、症状は3年~5年かけて進行するのが一般的です。
パーキンソン病の初期では、特有の運動症状が目立ちます。
運動症状の例は、以下の通りです。
【パーキンソン病の運動症状】
- じっとしているときに手足が震える(静止時振戦)
- 筋肉が硬直して手足・関節が動かしづらくなる(筋固縮)
- 体のバランスがとれなくなる(姿勢反射障害)
- 動きが遅く・小さく・少なくなる(無動)
病初期の治療は薬物療法が中心です。
発症後3年~5年は治療の効果が出やすいため、「ハネムーン期」とも呼ばれます。
進行期
ハネムーン期が終わると、パーキンソン病は「進行期」へと段階が移行します。
進行期は発症から3年~5年以降に訪れることが多いですが、病状の進行の仕方には個人差があります。
進行期では、運動合併症があらわれます。
具体的には、「ウェアリングオフ現象」と「ジスキネジア」です。
ウェアリングオフ現象は、治療薬の持続時間が短くなる現象です。
治療薬を服用しても、2~3時間で効果が切れてしまいます。
一方、ジスキネジアとは、薬が効いている時間内に身体が勝手に動いてしまう現象です。
原因は薬が効きすぎてしまうことです。
【パーキンソン病の進行期の症状】
- ウェアリングオフ現象(薬の効き目が悪くなり、症状の波が大きくなること)
- ジスキネジア(薬が効いている時間内に、身体が勝手に動いてしまう現象)
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
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ホーン・ヤールの重症度分類
ホーン・ヤールの重症度分類は、パーキンソン病の進行度をあらわす指標です。
それぞれの段階における症状を解説します。
Ⅰ度
身体の片側にのみ、運動症状があらわれます。
具体的な症状は、手足の震えや筋肉のこわばりなどです。
障害は比較的軽度で、日常生活にも大きな支障はありません。
Ⅱ度
身体の両側に運動症状があらわれます。
Ⅰ度では片側のみだった手足の震えや筋肉の硬直が、身体全体に広がった状態です。
身体が動かしづらくなるため、日常動作や仕事、作業などがやや不便になります。
Ⅲ度
歩行障害や姿勢反射障害があらわれ始めます。
たとえば小刻み歩行になったり、前かがみ歩行で転びやすくなったりします。
日常生活に支障はありますが、基本的に介護なしでも自立した生活が可能です。
Ⅳ度
パーキンソン病による運動症状が顕著になります。
一人での歩行や立ち上がりなど、さまざまな日常動作が困難になります。
日常生活の多くの場面で誰かの介護を必要としますが、自力でできる運動や動作もあります。
Ⅴ度
一人で立ったり動いたりすることが困難になります。
移動に車いすを必要とするほか、寝たきりになることも少なくありません。
日常生活のすべての場面で、誰かの介護を必要とします。
生活機能障害度分類
生活機能障害度分類は、厚生労働省が定めたパーキンソン病の進行の指標です。
Ⅰ度
日常生活、通院にほとんど介護を要しない段階です。
ホーン・ヤールの重症度分類では、Ⅰ~Ⅲに該当します。
Ⅱ度
日常生活、通院に部分的な介護を要する段階です。
重症度分類のⅢ~Ⅳに相当します。
Ⅲ度
日常生活の全面的に介護を要し、一人で歩行、起立ができない状態です。
重症度分類のⅤに相当します。
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パーキンソン病の治療法
パーキンソン病は、神経変性疾患の一つで、患者の日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
しかし、現代医学の進歩により、多くの治療法が開発され、症状の管理と生活の質の向上が可能となっています。
薬物療法
パーキンソン病の主な治療法は薬物療法であり、病状に合わせて薬の種類や量が調整されます。
主に使用される薬剤には、L-ドパ、ドパミン受容体作動薬、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬などがあります。
これらの薬は、脳内のドパミンの量を増やしたり、ドパミンの効果を長持ちさせたりすることで、パーキンソン病の症状を軽減します。
しかし、これらの薬物は副作用を引き起こす可能性もあり、その管理も重要な治療の一部となります。
手術療法
薬物療法だけでは症状のコントロールが困難な場合や、薬物の副作用が強い場合には、手術療法が選択されることがあります。
手術はパーキンソン病を完全に治すものではなく、薬物療法を補助する役割を果たします。
手術を受けるためには、いくつかの条件があり、主治医との詳しい話し合いが必要となります。
注意事項と副作用
パーキンソン病の治療には、様々な注意事項と副作用が伴います。
薬物を飲み始めた時や長期間飲み続けた時に特有の副作用が現れることがあります。
また、薬物の効果が突然なくなる「オン・オフ現象」や、薬が効きすぎて手足が勝手に動いてしまう「ジスキネジア」などの現象にも注意が必要です。
これらの症状が現れた場合は、主治医に連絡することが重要です。
パーキンソン病の治療は薬物療法が中心です。しかし、重症化すると外科手術や胃ろうによる治療が検討されることもあります。本記事では、パーキンソン病の治療について、以下の点を中心にご紹介します。 パーキンソン病の治療法 […]
今からできる進行を遅らせる4つの方法
パーキンソン病には、根本的な治療法は確立されていません。
しかし、適切な対応により、症状の進行を遅らせることが可能です。
パーキンソン病の進行緩和に役立つ4つの方法を解説します。
楽しく前向きな気持ちで過ごす
明るく楽しい気持ちでいることは、パーキンソン病の進行緩和に役立ちます。
なぜなら、明るく楽しい気持ちでいると、脳内での「ドパミン」の分泌が増えるからです。
ドパミンは神経伝達物質の一つで、脳の情報伝達をスムーズにする作用があります。
実はパーキンソン病は、脳のドパミンが減少することによって発症します。
よって、明るく楽しい気持ちを心がけ、ドパミンの分泌を促すことで、パーキンソン病の悪化を予防できます。
身体を適度に動かす
パーキンソン病では身体が動かしづらくなるため、運動量が自然と減少しがちです。
しかし運動をしなくなると、筋力・体力や身体の柔軟性が低下するため、パーキンソン病がますます悪化しやすくなります。
一方、適度な運動をすることで、筋力・体力や、身体の柔軟性の維持に役立ちます。
また、脳のドパミン分泌を促進する作用もあるので、パーキンソン病の悪化を予防することもできます。
散歩や体操など、軽い有酸素運動をこまめに行いましょう。
規則正しい睡眠をとる
パーキンソン病の方には、睡眠障害があらわれやすいです。
睡眠が不足すると、頭がボンヤリして幻覚・妄想が起こりやすくなったり、薬の効き目が悪くなったりする場合があります。
よって、パーキンソン病の方は十分な睡眠を確保する工夫が必要です。
たとえば昼間に身体を動かして適度に疲れておくと、夜はぐっすり眠りやすくなります。
また、寝具を整えたり、照明を工夫したりするのも良い方法です。
コーヒーを飲む
コーヒーをよく飲む人は、パーキンソン病のリスクが低いというデータがあります。
相関関係は明確ではないものの、一説には、コーヒーに含まれるカフェインが、ドパミン神経細胞を保護すると指摘されています。
パーキンソン病の予防・改善には、一日4~5杯程度のコーヒーが推奨されています。
コーヒーが苦手な方は、緑茶でもかまいません。
パーキンソン病かも?セルフチェックシート
パーキンソン病は、早期発見し治療を開始することが大切な病気です。
本人の自覚はもちろん、家族が気づいて伝えることで進行を遅らせるきっかけになるかもしれません。
そこで、もしかしたらパーキンソン病?と思った時に使えるセルフチェックシートをご紹介します。
- じっとしていると手足が震える
- 動作に時間がかかる
- 指先の細かい動作が苦手になった(キーボード操作・小銭の出し入れなど)
- 歩くときに腕を振っておらず、転びやすくなった
- 表情が乏しくなった
- 声が小さくなり、ぼそぼそ話すようになった
- 着替え・ボタンかけがうまくできない
- 歩行スピードが遅くなり、歩幅が小さくなった
- 手足の筋肉が硬くこわばる
- 姿勢が前かがみになってきた
- 寝ているときに大声を出す・暴れることがある
- 肩こり・便秘がひどくなった
パーキンソン病の初期症状は、加齢のためと見過ごしがちな症状が多く見られます。
少しでも不安に感じたら、一度医療機関を受診しましょう。
パーキンソン病の治療は薬物療法が中心です。しかし、重症化すると外科手術や胃ろうによる治療が検討されることもあります。本記事では、パーキンソン病の治療について、以下の点を中心にご紹介します。 パーキンソン病の治療法 […]
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パーキンソン病の症状の進行に関するよくある質問|Q&A
パーキンソン病の最初の症状は何ですか?
パーキンソン病の最初の症状は、人により様々ですが、一般的には手の震え、筋肉の硬直、動きの遅さ、バランスの失調などが見られます。
また、非運動症状と呼ばれるものも存在し、これにはうつ病、便秘、睡眠障害、味覚や嗅覚の変化などが含まれます。
パーキンソン病の症状は時間とともにどのように進行しますか?
パーキンソン病は進行性の疾患で、症状は時間とともに徐々に悪化します。
初期段階では症状は軽度で、日常生活に大きな影響は出ません。
しかし、病状が進行するにつれ、歩行困難や認知機能の低下など、日常生活に影響を及ぼす症状が現れるようになります。
パーキンソン病の進行速度には個人差がありますか?
はい、パーキンソン病の進行速度は人によって大きく異なります。
一部の人々は数年で重度の症状を経験しますが、他の人々は10年以上も病状が比較的安定していることもあります。
病状の進行は多くの要素によって影響を受け、個々の健康状態、年齢、生活習慣などが関与します。
パーキンソン病の進行を遅らせる方法はありますか?
現在、パーキンソン病の進行を完全に止めることはできませんが、生活習慣の改善や適切な治療により、症状の管理や進行の遅延は可能とされています。
運動療法や健康的な食事、ストレス管理、良好な睡眠習慣は病状の管理に役立つと言われています。
また、薬物療法や外科手術も症状の改善に寄与します。
パーキンソン病の進行段階を評価するための尺度は何ですか?
パーキンソン病の進行を評価するための主な尺度としては、ホーヤーン&ヤール(Hoehn and Yahr)スケールが広く使用されています。
これは1から5の段階で病状を評価し、1は最軽度(通常は片側の症状のみ)、5は最重度(歩行が困難または不可能)を指します。
また、UPDRS(統一パーキンソン病評価尺度)も一般的に使用され、より詳細な症状の評価が可能です。
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パーキンソン病の症状の進行のまとめ
ここまで、パーキンソン病の症状の進行についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- パーキンソン病の前兆症状は、うつ・自立神経失調などの「非運動症状」
- パーキンソン病の初期症状は、手足の震え・筋肉のこわばり・バランスが取れないなどの「運動症状」
- パーキンソン病の進行期の症状は、ウェアリングオフ現象やジスキネジアなどの「運動合併症」
- パーキンソン病の進行を遅らせるには、前向きな気持ちでいることや、適度な運動が大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
50歳から65歳の方に発症することが多いパーキンソン病。日常生活に影響を及ぼし、治すことが難しい病は、高齢者の増加に伴い発症する患者も増えており、厚労省が指定している難病の一つです。パーキンソン病は一度発症しても治療すれば治る病なの[…]