統合失調症の症状の一つでもある見当識障害。
症状が現れると日常生活に支障をきたす恐れのある見当識障害ですが、統合失調症との間にはどのような関係や原因があるのでしょうか?
今回、統合失調症と見当識障害についてご紹介した上で、その症状や特徴についてもご紹介します。
- 統合失調症で失われやすい見当識
- 統合失調症以外で見当識障害を発症する疾患
- 統合失調症でみられる見当識障害以外の症状
統合失調症と見当識障害に関する理解や治療・対策を行う際の参考にしてください。
是非最後までご覧ください。
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見当識障害とは
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見当識障害はアルツハイマー病や認知症などでみられる認知機能障害です。
認知症以外にも、脳血管障害や統合失調症などでみられます。
見当識とは時間、場所、人などを認識する認知機能をさします。
見当識障害では脳が何らかの影響を受けることで、情報を正しく認識できなくなってしまうのが主な症状です。
たとえば、今何時なのかわからなくなったり、目の前にいる人が誰なのかわからなくなったりします。
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統合失調症の原因
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統合失調症の原因についてはまだはっきりとわかっていないのが現状です。
考えられる原因には遺伝などもありますが、あくまで原因の一つと考えられているという程度でしかありません。
仮に同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、二人とも発症する確率は5割です。
統合失調症の家系をみても、両親が統合失調症である割合は約1割、兄弟を含めても約2割にとどまります。
また、環境による原因も考えられ、かつては養育環境が統合失調症の主因とされてきましたが、現在では養育環境との関係性はあくまでも要因として挙げられるものの一つとして考えられています。
ですが、養育環境や職場環境、家庭環境などでの過度なストレスは、統合失調症発症の原因になりうるとされています。
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統合失調症の症状
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以下、統合失調症の症状について説明します。
陰性症状
統合失調症による陰性症状は、精神機能が低下したり失われることで、正常な精神状態を保てなくなる症状です。
陰性症状には、感情鈍麻、発語の乏しさ、快感消失、非社交性といった症状がみられるようになります。
感情鈍麻では、顔の表情が失われ感情の表出が減少します。
あまり人と視線を合わせようとしないことも特徴の一つです。
笑ったり泣いたりするような場面でも、反応に乏しく無表情でいるようになります。
発語の乏しさでは口数が減り、短い単語で会話をするようになるのが特徴です。
快感消失では趣味や活動への興味が低下し、自ら行動するようなことはなく、行動の継続が困難になります。
非社交性はその名の通り、他者とのコミュニケーションをとらなくなるのが特徴です。
自分の世界に閉じこもり、他者への関心をしめさなくなります。
陽性症状
統合失調症による陽性症状では、精神機能が極度に高まり幻覚や妄想を引き起こすようになります。
幻覚は、いるはずのない他者の声が聞こえたり、見えるはずのない人やものが見えるようになり、現実での出来事として捉えるようになります。
特に聞こえるはずのない音が聞こえる幻聴は、統合失調症では多く見られる症状です。
妄想は思い込みの一つで、実際の体験や認知とは違った認識をするのが特徴です。
明らかに事実無根であることを証明しても認めようとせず、頑なに思い込みを抱くことがあります。
被害妄想などは代表的な妄想症状で、誰かに見張られている、騙されている、噂されているなどの妄想を抱くようなことも少なくありません。
認知機能障害
統合失調症による認知機能障害では、記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下がみられるようになります。
記憶力の低下がみられると、ものごとを覚えることが困難になり、新しい知識や情報の取得に困難さが生じます。
注意・集中力の低下では、読書やテレビ鑑賞などを落ち着いて行うことができません。
注意力が散漫になることで他者との会話が上手くできなくなったり、思考の整理などにも困難さが生じるようになります。
見当識障害などその他の症状
その他の症状では、見当識障害、不安や抑うつなどがみられることもあります。
見当識障害は前述のとおり、時間、場所、人などを認識する機能が低下してしまう症状です。
見当識障害がみられるようになると、初期段階では時間がわからなくなるといった症状がみられるようになり、昼夜の認識が損なわれる場合があります。
場所に関する見当識障害では、自分のいる場所や目的の場所がわからなくなるのが症状の特徴です。
外出先で自分の現在地がわからなくなり混乱してしまうようなこともあります。
人に関する見当識障害では、目の前の人が誰なのかわからなくなり、重度になれば家族の顔も認識できなくなってしまうこともあります。
このように見当識障害がみられるようになると、日常生活に大きな支障をきたしかねません。
さらには、統合失調症のみならず認知症がある場合には、見当識障害のほか短期記憶障害を伴うようなこともあります。
その他不安や抑うつ症状については、常に不安がつきまとう症状や、不眠になることがあります。
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治療方法
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見当識障害をはじめとする各症状の治療は、根本原因である認知症や統合失調症に焦点をあてて治療計画をたてる必要があります。
そのため、見当識障害を治すのではなく統合失調症を優先して治療することになります。
治療方法としては、薬物療法と非薬物療法に分けられます。
薬物療法
薬物療法はその名のとおり薬を使用した治療方法です。
統合失調症の薬物療法で使用される抗精神病薬は、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の二種類です。
定型抗精神病薬は主に、幻覚や妄動などがみられる陽性症状への効果があるとされています。
ただし副作用には注意しなければなりません。
ドーパミン量を調整する働きにより、パーキンソン症状のような筋肉の硬直や、手足の震え、体幹のふらつきなどの副作用がみられることもあります。
非定型抗精神病薬は、陽性症状だけではなく陰性症状への効果も期待できるとされている薬です。
ドーパミンに加え、神経伝達物質であるセロトニンの量を調整する働きがあります。
パーキンソン症状のような副作用は定型抗精神病薬よりも少ないとされていますが、眠気や体重増加、代謝に関する副作用がみられる場合があります。
副作用をともなう薬であることから、処方を受けても使用をためらうこともあるかもしれません。
気になる場合には自分で判断せず、主治医に相談することが大切です。
薬の副作用について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
非薬物療法
統合失調症の非薬物療法には以下の治療方法があります。
- 作業療法
- 心理教育
- SST(生活技能訓練)
3つの治療方法についてそれぞれ解説していきます。
作業療法
作業療法では作業療法士の指導のもと趣味活動や就労、生活場面で行われる作業を通してできることを増やしていきながら、日常生活や社会参加に必要なスキルの獲得を目指します。
心理教育
心理教育では、病気に関しての学びを通して病気の理解を深め、問題解決していくための方法や知識を身につけていきます。
当事者だけでなく家族を対象としたプログラムもあります。
SST(生活技能訓練)
SSTでは、他者とのコミュニケーション方法など、日常生活において自分が行えるようになりたいことをグループ内で実践練習し、社会生活への復帰を目指します。
統合失調症相談窓口
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自分や家族が統合失調症かもしれないと感じた場合は、地域の相談窓口に相談することで統合失調症に関する情報や、関連制度やサービスの情報を得ることも可能です。
統合失調症自体の治療が必要な場合には、精神科など医療機関への受診が推奨されますが、精神疾患であることを受け止められずなかなか受診に繋がらない場合もあります。
そのような場合には、医療機関ではなく保健所や精神福祉センターへ相談することで、必要な情報を得ることや、必要に応じて医療機関へ繋げてもらうこともできます。
保健所は保健、医療、福祉全般の相談が可能な専門機関です。
医師、保健師、精神保健福祉士などへの相談が可能で、直接面談から電話による問い合わせもできます。
精神保健センターは、各都道府県・政令指定都市ごとに一カ所設置されています。
精神疾患に関する相談全般に対応している専門機関です。
その他市町村(保健センター)では、障害福祉サービスの利用に関する相談や申請ができます。
精神障害者保健福祉手帳
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統合失調症の方の場合、申請により精神保健福祉手帳を発行してもらえます。
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害を有していることを証明するもので、精神障害者を対象としたサービス利用の際に役立ちます。
手帳の等級は1級~3級までです。
手帳の対象者
対象疾患は以下になります。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
知的障害があり上記に該当しない方の場合は、療育手帳制度の対象となるため精神保健福祉手帳の対象とはなりません。
受けられるサービス
全国一律で受けられるサービスは以下の通りです。
- NHK受信料など公共料金の減免
- 所得税、住民税の控除
- 相続税の控除
- 自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級の方)
- 生活福祉資金の貸付
- 手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウント
- 障害者職場適応訓練の実施
また、自治体や企業によっては以下のサービスを受けられる場合があります。
- 公営住宅の優先入居
- 公共交通機関の割引
- 公共施設利用の割引
- 携帯電話料金の割引
見当識障害と統合失調症の関係まとめ
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統合失調症と見当識障害に関する内容や、その症状・特徴を中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 統合失調症で失われやすい見当識は、時間、場所、人に関する見当識
- 統合失調症以外で見当識障害を発症する疾患は、アルツハイマー病や認知症、脳血管障害
- 統合失調症でみられる見当識障害以外の症状は、陰性症状、陽性症状、認知機能障害
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。