パーキンソン病とは、進行性の難病です。
しかし、どのような病気でどのような看護を提供していくのかお悩みの方も中にはいるのではないでしょうか。
今回はパーキンソン病の看護のコツについて、以下の項目を中心に解説します。
- パーキンソン病患者の看護の方法
- パーキンソン病の治療方法
- パーキンソン病患者が暮らしやすい環境
パーキンソン病患者の適切な看護方法を学び、今後の看護ケアに役立てていただけたら幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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パーキンソン病とは
パーキンソン病は、中脳の黒質から分泌されるドパミンの量が減少し、運動の調整ができなくなる難病です。
原因
中脳黒質のドパミン神経細胞が減少することによって発症します。
ドパミンが減少する原因は、加齢や中脳にレビー小体が異常蓄積することなど諸説ありますが、はっきりとしたパーキンソン病の発症のきっかけはわかっていません。
症状
パーキンソン病の症状は、運動症状と非運動症状に分けられます。
運動症状である振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害は、パーキンソン病の4大症状といわれています。
非運動症状には自律神経障害、精神症状、睡眠障害などがあります。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
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パーキンソン病患者の看護の方法
看護のポイントは低下する身体機能とそれに伴う日常生活動作の援助、精神的ケアをすることです。
一日の中でも体調の変化があるため、看護する上で個々の特徴を把握することも重要です。
生活援助
まずは生活援助において具体的にどのような看護をすれば良いか見ていきましょう。
歩行
パーキンソン病の歩行には、すくみ足、突進歩行、小刻み歩行などの特徴があり、非常に転びやすいです。
転倒しないためには、手がかりの活用が効果的です。
例えば「いち・に…」などのようなリズムで声をかける聴覚の手がかりや、床に横線を引き目印をまたぐ視覚の手がかりなどが有効です。
また、前屈みの姿勢になりやすいため、適宜姿勢を直すように声かけすることも必要です。
誤嚥防止
パーキンソン病の方で嚥下障害になる方は全体の半数以上いるといわれており、特に誤嚥性肺炎は非常に起こりやすい合併症です。
誤嚥性肺炎になると、さらに体調が悪化する恐れがあります。
看護するときには安全に経口摂取が継続できるように、嚥下障害の早期発見が大切です。
以下の項目を心がけると誤嚥防止になります。
- 食べ物は飲み込みやすい形にする
- とろみをつける
- 食事の姿勢に注意をする
- 口のまわりのリハビリをする
- 口の中をきれいに保つ
褥瘡(じょくそう)発生防止
長時間圧迫され続けることにより褥瘡が発生します。
褥瘡とは、長時間睡眠などにより、ある箇所の血流が悪くなったり滞ったりすることで、皮膚に影響を及ぼす症状です。
褥瘡は一度発症してしまうと、治るまでに時間がかかり心身ともに負担がかかります。
そのため、褥瘡発生防止は看護ケアでも非常に重要なものです。
褥瘡発生防止には以下の3点が重要です。
【体位変換】
長時間の圧迫を避けられる重要な予防法です。
体位変換は2時間おきに行うことが望ましいです。
また体圧分散の寝具の使用も推奨されています。
【栄養管理】
低栄養になると褥瘡が発生しやすく治りも悪いです。
一日3食を食べること、バランスの良い食事を摂ることで防ぐことができます。
また適宜サプリメントを使用し栄養素を補うことも良いといわれています。
【スキンケア】
皮膚の摩擦やおむつかぶれで皮膚が炎症を起こすと褥瘡が発生しやすくなるため、適宜清潔に保つことが大切です。
また乾燥によっても皮膚は傷ついてしまうため、保湿を心がけることも必要です。
精神的ケア
進行性の病気であり不安感や絶望感を感じることが多くあります。
まずは病気について本人がよく理解することが必要不可欠です。
身近な人に話しを聞いてもらうだけでもストレスが減ります。
また趣味などを通して外出をし、多くの人と多くのことを楽しむと前向きな姿勢になれます。
入念な看護計画とケア
パーキンソン病はさまざまな症状がみられるため、包括的な看護ケアが必要になります。
症状に合わせた援助
既に出ている症状に対して適した看護ケアの提供が必要です。
例えば、すくみ足歩行の出現や起立性低血圧など転倒のリスクがある場合は転倒しないように付き添い歩行や車椅子を使用するなどといった対処が有効です。
日常生活の安全の確保・自立の援助
病気の進行に伴い、日常生活動作に影響が出てきます。
日常生活を安全に自立できるように看護目標を立て援助をします。
日常生活活動・訓練の援助
関節拘縮や誤嚥性肺炎などの二次障害予防も大切です。
家族に対する援助
家族が疲れてしまうと、パーキンソン病の方も安心した生活が送れません。
そのため看護の視点からも、支えている家族にも支援が重要です。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
パーキンソン病の治療方法
現在パーキンソン病には対症療法しかなく、根本的に治療する方法は確立されていません。
しかし、投薬や手術により、症状を軽減させることができます。
Lドーパの服用
Lドーパは不足したドパミンを補うことができ、振戦やこわばりなどの運動障害を改善する効果があります。
しかし病気の進行によって、薬の効く時間が短くなるウェアリングオフ現象、突然症状が良くなったり悪くなったりするオン・オフ現象、自分の意思ではないのに勝手に体が不随意に動いてしまうジスキネジアなどが出ることがあります。
このような症状がみられる場合、薬を飲むタイミングや量、他の薬を増やすなどの対応が必要になることがあります。
また、自己判断で薬の種類の変更や飲むタイミング・量の変更、飲むことを中止するなどの行為は、思わぬめまいなどの副作用を招くことがあります。
医師の判断を仰ぎ、適切な対処をしましょう。
DBSによる療法
DBSとは、脳深部刺激療法というパーキンソン病の手術治療です。
主にパーキンソン病が進行し、ウェアリングオフ現象やジスキネジアが出現してきたり、薬の副作用で困ったりしている方の治療に役立ちます。
DBSそのものは症状を改善するものであり、完治することはできません。
しかし、DBSにより運動症状が軽減し動作が改善することで、日常生活を送ることが楽になる可能性があります。
50歳から65歳の方に発症することが多いパーキンソン病。日常生活に影響を及ぼし、治すことが難しい病は、高齢者の増加に伴い発症する患者も増えており、厚労省が指定している難病の一つです。パーキンソン病は一度発症しても治療すれば治る病なの[…]
パーキンソン病患者が暮らしやすい環境とは
パーキンソン病では、病気が急速に進行しないためにも、日常生活の場面で暮らしやすい環境作りをしていくことが大切です。
体が動かしやすく転倒のリスクが低い環境を作りましょう。
さまざまなケア用品を用いて作ることができますので紹介します。
部屋
- 物を片付ける(コードなどの整理)
- 目印をつける(すくみ足の方に有効)
- 家具の工夫(硬めのマットレスへの変更など)
トイレ
- 手すりの設置
- 段差をなくす
- 暖房便座にする
玄関・ドア
- 段をつける(スロープよりも段がある方が目印となり足が出やすくなる)
- 引き戸にする
浴室
- 浴槽台をおく
- 手すりや入浴グリップをつける
- シャワーチェアをおく
- バスボードをおく
パーキンソン病患者の看護のまとめ
ここまでパーキンソン病の情報や看護の方法などを中心にお伝えしてきました。
- パーキンソン病患者の看護方法は、生活支援(歩行時の転倒防止、誤嚥防止、褥瘡発生防止)や、本人のみならず家族への精神的なケアが必要である
- パーキンソン病の治療は、ドパミン不足を補うLドーパの服用や、DBSによる手術治療がある
- パーキンソン病患者が暮らしやすい環境とは、体が動かしやすく転倒のリスクが低い環境であり、さまざまなケア用品を用いて作ることができる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
パーキンソン病は大多数が原因不明の進行性の病気です。脳の黒質に存在するドパミン神経がなくなることで、筋肉が硬くなったり、手足が震えるなどの症状が見られます。パーキンソン病は親から子への遺伝や影響はあるのでしょうか?本記事では以下に[…]