病気やケガが原因で脳に損傷を負うと、高次脳機能障害を発症することがあります。
高次脳機能障害は、ほかの障害のように目に見えるものではありません。
そのため周りの方に理解されず、「離職」や「離婚」など社会的に孤立して苦しむケースも少なくありません。
高次脳機能障害という障害があること、原因や症状を知るだけでも、障害を持つ方々の理解につながるのではないでしょうか。
そこで今回は以下について解説していきます。
- 高次脳機能障害はどういった場合に起こるのか
- 高次脳機能障害はどのような症状が特徴なのか
- 高次脳機能障害を克服して社会復帰はできるのか
ぜひ最後までご覧いただき、高次脳機能障害をお持ちの方の理解にお役立てください。
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高次脳機能障害とは
人間の脳は、さまざまな機能を司っています。
肉体、感情、記憶など、生きていく上での司令塔のようなものです。
病気やケガで脳の一部が損傷を受けると、損傷を受ける前とは違ういろいろな症状があらわれます。
ときには、その症状が周囲を困惑させ、反社会的な行動ととらえられてしまいます。
高次脳機能障害をお持ちの方は、外見では判別できません。
そのため、「人格が変わってしまった」「暴力的だ」「怠けている」など、周囲からの評価が著しく損なわれ、同時に疎外されることになるケースも多いのです。
高次脳機能障害は脳の損傷が原因となる後遺症であるとともに、社会の理解が得られにくい障害ともいえるのではないでしょうか。
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高次脳機能障害の原因
高次脳機能障害の原因は、大きく分けて病気とケガがあります。
病気では脳血管障害である「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」が原因で発症することが多く、高次脳機能障害全体の17%といわれています。
ケガでは、交通事故や作業中の事故などで外傷性脳損傷が原因で発症することが多く、高次脳機能障害の76%を占めているといわれています。
そのほかには、子どもに多い脳炎や溺れることでおこる低酸素脳症が原因で発症することもあります。
乳幼児では、激しい揺さぶりなど虐待に関連して起こることもあります。
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高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害の症状には、いろいろなものがあります。
個人差があり、単独であらわれる場合や複数が同時にあらわれる場合、症状が強く出る方、それほどでもない方もいます。
いろいろな症状の中でも、特に高次脳機能障害を診断する上で医師が注目する症状が4つあります。
それぞれの症状を詳しく見ていきましょう。
記憶障害
記憶障害の主な症状は「置いた場所を忘れる」「新しいことが覚えられない」「同じことを何度も聞いてくる」といった症状です。
その中でも高次脳機能障害に特徴的なのが、前向性健忘と逆行性健忘です。
前向性健忘はケガや病気を境界線として、新しいことを忘れてしまう症状です。
たとえば、前から知っている友人や家族のことは覚えていても、新しく出会った人たちのことは名前も覚えられません。
逆行性健忘はその逆で、新しいことは覚えられるのに過去のことは一切思い出せません。
また、短期的な記憶障害と長期的な記憶障害も特徴的です。
たとえば「さっきまでのことが覚えられない」というのが短期的記憶障害で、「通い慣れた道がわからない」というのが長期的な記憶障害です。
注意障害
高次脳機能障害の注意障害には、主に4つの症状が挙げられます。
覚醒度の低下
表情が乏しくなって、すべての反応が鈍くなります。
ボーッとするときが多くなり、自分から何かをするという気力もなくなります。
持続力の低下
周りの音など別のことにすぐに意識が向いてしまい、本来集中するべきことに取り組めなくなります。
転導性の低下
持続力の低下とは逆に周りへの注意が散漫になり、すぐに起こすべき行動に出られなくなってしまう症状です。
たとえば、テレビを見ているときに電話が鳴っても、すぐに出ることができません。
転換性注意力の低下
状況に応じた行動に転換できないため、同じ言動を繰り返してしまう症状です。
たとえば、探し物をするのに何度も同じ場所を探してしまうというのも転換性注意力の低下が原因です。
遂行機能障害
何か行動を起こす場合には、判断力や思考力が必要になってきます。
言語や記憶力など高次脳機能は正常なのに、機能をうまく活用できないのが遂行機能障害です。
遂行機能障害には、4つの症状がみられます。
目標の設定ができない
作業など何かを始めるとき、私たちは目標を決め行動します。
たとえば「ここまでできたら次に進む」といった具合です。
しかし、高次脳機能障害の方の場合は目標設定ができないため、手当たり次第に進めてしまうので途中から訳がわからなくなってしまいます。
計画立案ができない
目標を達成させるためには、計画を立てることが必要です。
高次脳機能障害の方は「いつまでに仕上げる」といった計画が設定できないため、段取りも立てることができません。
計画の実行ができない
段取りを組んだとしても、実際に行動に移すことができません。
そのときの気分に任せた動きしかできないので、計画を実行して結果を出すことができないのです。
効率的な行動ができない
作業をしているとき「やっぱりこうしたほうが早くできる」「この材料が足りないから、別のものを代わりに使おう」と柔軟に考えます。
しかし、高次脳機能障害の方は、必要に応じて計画や行動を修正することができません。
社会的行動障害
私たち人間は、何らかのコミュニティに生きています。
最小コミュニティが家族でしょう。
社会的行動障害は、社会で生きていくための適切な反応ができないことです。
代表的なものとしていくつか紹介しましょう。
意欲や発動性が低下する
積極的な行動ができず、また意欲も湧かない状態です。
一日ボーッと過ごしていて、周囲からは「怠けている」と思われてしまいます。
感情のコントロールができない
イライラしやすかったり、怒りを抑えきれずに爆発させてしまいます。
通常であればコントロールできる感情の起伏が抑えられず、突然大きな声で怒鳴るといった衝動的な行為を起こします。
対人関係がうまくいかない
人の気持ちをうまく汲み取れない、急な話題の変化についていけない、抽象的な指示が理解できないなど、コミュニケーションに障害があるため対人関係がうまくいきません。
依存的行動が目立つ
何事をするにもすぐに人に頼ってしまい、自分で決めることができません。
固執
同じことをずっと続けている、注意しても、人の意見は聞き入れずにこだわり続けるといった症状があります。
高次脳機能障害になっても復職できる?
高次脳機能障害の方の症状は、社会というコミュニティにおいてなかなか受け入れてもらえないのが実情です。
というのも、目が不自由、耳が不自由といった障害についてはある程度の知識があります。
しかし、高次脳機能障害の方に対しては、知識がないために偏見の目で見てしまうことが多いからです。
そのため、せっかく治療が終わって社会復帰しようと思っても、前職に戻ることができないばかりか、仕事ができないからと退職を迫られるケースも少なくありません。
会社として配慮するべきこと
高次脳機能障害の方は、外見では分かりにくいものです。
しかし、実際に一緒に仕事をしてみると徐々に違和感に気づくはずです。
「前よりも仕事が遅くなった」「ミスをすることが多くなった」「何度も聞き返してくる」など、周囲の方からすると「仕事ができない人」というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
会社としてできることは、一緒に仕事をする仲間に高次脳機能障害とはどのような病気で、その方の場合の症状をハッキリと伝えることです。
また、症状に合わせた仕事内容と仕事時間を調整する配慮も必要です。
たとえば、集中力が続かないのであれば30分程度で終わる仕事を中心にする。
2つのことが同時にできないのであれば、電話での受け答えをしなくて済む仕事へ配置転換するなどです。
自分でもできること
職場に復帰するためには、自分でもできることはするという姿勢でなければ、会社も受け入れにくいでしょう。
たとえば、注意力や物忘れが多ければメモはこまめに取るようにしましょう。
また業務全体の流れを常に把握しておくために、その都度やるべきことや進行状況を書き出して「見える化」しておくことも重要です。
また、高次脳機能障害を持つと疲れやすくなります。
無理をすると症状が強く出たり、会社に行きたくなくなったりするので、疲れたら休むというスタンスで仕事をすることが重要です。
高次脳機能障害の対応について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
高次脳機能障害の症状のまとめ
ここでは、高次脳機能障害の症状について紹介してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 高次脳機能障害は、病気やケガによる脳の損傷が原因で起こる。
- 高次脳機能障害の主な症状は「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」が挙げられる。
- 高次脳機能障害は、会社や周囲の理解によって社会復帰が期待できる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。