自宅で介護をされている方にとって、トイレ介助に苦労することは多いのではないでしょうか。
排泄はプライバシーの配慮が必要で気を遣うのと同時に介助する頻度が多い行為です。
そんなトイレ介助は、どのように行いどんな点に注意すればいいのでしょうか?
介護をされる方と被介護者の方がお互いによりよい信頼関係を構築していくために、トイレ介助について学んでいきましょう。
本記事では、トイレ介助について以下の点を中心にご紹介します。
- 排泄方法の違いとその選び方
- トイレ介助を行う際の注意点について
- 夜間にトイレ介助をするときのポイント
- 介護の負担を軽減する方法について
デリケートなトイレ介助の負担を軽減するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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状況に応じた排泄介助の方法とは?
トイレ介助で重要なことは、「被介護者はどこまで一人で行えるのか?」と「介護者はどこまで介助を行えばいいのか?」を見極めることです。
なぜなら、この二つを知ることで被介護者がどの方法で排泄をすることが最適なのかが分かるからです。
通常のトイレだけでなく専用の介助器具を使って介助を行うケースもありますが、介助を行うときに注目するべきポイントはそれぞれ異なります。
そのポイントを確認しつつ、被介護者の方がどのような排泄方法が望ましいかを考えてみましょう。
トイレを使用する場合
通常のトイレで排泄する場合、トイレに向かうための介助が必要になります。
通路に障害物がある場合や階段などの段差がある場合は、誘導したり体を支えたりして手伝いましょう。
しかしトイレをする度に付き添うのが大変だと思う方は、通路に手すりやスロープを付けて一人でもトイレに行けるようにすることで介助の負担を軽減できます。
排泄中は、なるべく干渉しすぎないように見守ることがポイントです。
何かあった際は声をかけるように伝えておき、すぐに駆け付けられるようにトイレの鍵はかけずに外で待機しましょう。
例えば排泄後は力んだせいで血圧が急激に上がって、めまいを起こすケースがあるため注意が必要です。
排泄後の体調に、異常が見受けられないかも確認しましょう。
ポータブルトイレを使用する場合
ポータブルトイレとは、持ち運んで使用できる簡易式のトイレのことです。
寝室からトイレまでの移動が困難な場合に、ベッドの横にトイレが設置できるため便利です。
しかしあくまで簡易式のトイレのため、水洗トイレのような洗浄機能はありません。
排泄をしたら、すぐに排泄物の入った容器を洗う必要があります。
また通常のトイレのように、他人に見られないようにするための仕切りもありません。
人前で排泄をする恥ずかしさを感じやすいというデメリットもあります。
排泄中は下半身をバスタオルなどで隠すかカーテンなどの仕切りを用意するなどして、排泄時のプライバシーに配慮しましょう。
便器と尿器を使用する場合
便器や尿器を使った排泄は、基本的にベッドの上で行います。
歩行や起き上がりが困難で便座に座ることも難しい場合に使用します。
容器を下腹部に添えて排泄をしてもらいます。
便器を使用する場合は、排便した容器を洗いやすくするために容器の内側にトイレットペーパーを敷いてから使用するのがおすすめです。
尿器を使用する際は、男性と女性で容器を添える位置が少し変わってくる点に注意しましょう。
また容器に入った尿や排泄物の状態をチェックすることで、健康状態に異常がないかを確認できます。
おむつ
おむつは介助の負担を軽くでき、排泄に失敗しても安心な点がメリットです。
しかし、おむつを付けること自体に不快さを感じる方は多いです。
また排泄後の感触を、嫌う方もいます。
加えておむつを付けたことによりトイレに行く回数が減り、運動量が下がることで筋力が低下してしまう場合もあります。
おむつはどうしても使用しなければいけない場合を除いて、できるだけ使用しないことが望ましいです。
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トイレ介助を行う際の注意点は何がある?
次にトイレ介助を行うときは、どのような点に注意すればいいのかについて説明していきます。
前提として、誰だってトイレをしている姿は見られたくないものです。
またトイレに間に合わず失禁や排便をしてしまったときは、恥ずかしさや申し訳なさを感じてしまいます。
そのような状況下で、介護をする方がどのような意識を持つかは大事な要素です。
トイレ介助以外でも介護全般に当てはまる内容もあるので、チェックしていきましょう。
自尊心を傷つけない
トイレ介助をする際は、介護者と被介護者の緊張感が高まる状況でもあります。
今まで一人で行えたトイレが誰かの支えがないとできなくなり、恥ずかしさや惨めさを感じてしまいやすいからです。
そんな中で介助している方が不快な気持ちを表してしまうと、被介護者の心に大きなダメージを与えてしまいます。
介護を行う方も大変だと感じてしまうときもあると思いますが、相手の気持ちに寄り添う振る舞いを心がけましょう。
水分摂取に制限を設けない
トイレの回数を減らすために、水分摂取を制限することは避けてください。
水分不足に陥ると、脱水症状や便秘などの症状を引き起こすリスクがあるからです。
またトイレ介助をしてもらうことを避けて、水分を少なく摂取してトイレの回数を減らそうとする被介護者の方もいらっしゃいます。
その場合は、充分な水分補給が健康を維持するために必要であるということを伝えましょう。
なるべく本人にやらせる
基本的に本人が一人でできる行動には、なるべくサポートをしないようにするのが望ましいです。
どんな行動もサポートをしてしまうと被介護者の方のストレスになるだけでなく、体を動かす頻度が減ったことにより運動機能が低下してしまうリスクがあります。
被介護者の方がどこまで一人でできるのかを、普段の行動から観察することが大切です。
また本人に一人でできることや手伝って欲しいことをヒアリングするなど、コミュニケーションを取ることを心がけましょう。
排泄パターンを理解する
被介護者の方がどのタイミングで排泄をするのかを、ある程度把握しておきましょう。
尿意や便意を感じやすい時間帯を知っておくだけでも、排泄のサポートがスムーズになります。
また加齢とともに尿意や便意を感じづらくなることもあるため、決まった時間にトイレに誘ってみることもおすすめします。
尿意や便意があることを伝えづらいと感じる方もいらっしゃるので、介護者の方が日頃から行動パターンを観察することが大事です。
失敗しても責めない
トイレに間に合わず失禁や排便をしてしまった場合、被介護者は恥ずかしさや申し訳なさを感じてしまいます。
しかしこのような失敗は介護をしていると、どうしても起こってしまうことです。
決して失敗してしまったことを責めたり、不快な顔を見せたりしないように心がけましょう。
相手を急がせない
排泄は気を遣う行為のため、被介護者のペースを乱してしまうと尿や排泄がうまくできない場合もあります。
そしてトイレをする行為が嫌いになってしまうと、前述した通り水分補給を減らしてトイレの頻度を下げようとしてしまいます。
常に相手のペースに合わせて、できる限り見守ることを心がけましょう。
プライバシーに配慮した排泄介助を行う
ポータブルトイレやおむつを使用するのは便利な反面、他人の目が気になってしまう場合が多いです。
周囲の目が気になる場合は下半身にバスタオルをかけるなど、少しでも精神的負担を和らげましょう。
また周りにカーテンや仕切りを付けて、プライバシーを確保することも大事です。
介助の手間を少なくすることだけを考えるのではなく、排泄をする本人がなるべく快適に過ごせるように配慮しましょう。
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夜間の排泄に対応するために
夜間に何度もトイレに行くことは、被介護者の方の負担だけでなく介護者の方の睡眠不足にも繋がるので可能な限り頻度は下げたいですよね。
長期にわたって介護を行うためには、介護する側の睡眠時間をしっかり確保することも大切です。
そこで、どのような対策をすれば少しでも夜間の負担を軽減できるかについてご紹介していきます。
介助器具を使用する
トイレに付き添う負担が大きい場合は、介助器具に頼ることも大切です。
例えば歩行は難しいけど座ったり立ったりすることができる方は、ポータブルトイレをベッドの横に設置することで排泄を一人で行えます。
このように夜間の間だけ、介助器具を使用するという手段も考えてみましょう。
就寝前にトイレに行く
就寝前にトイレに行く習慣をつけておくと失禁のリスクが軽減でき、夜間にトイレ介助をする頻度も減るはずです。
特に夕方以降に水分を多く摂取した日は、寝る前に尿意を感じやすくなってしまいます。
習慣化するために、寝る前には毎日トイレに誘ってみるのはいかがでしょうか。
過度な水分摂取は避ける
先程、水分不足は機能障害を引き起こすリスクがあると話しましたが、水分の過剰摂取にも気を付けましょう。
体重などによる個人差はありますが、一日に必要な水分量の目安は、1500ml程度だといわれています。
水分を摂りすぎてしまうとトイレの回数が増えるだけなので、適切な水分量を摂取するように配慮しましょう。
排泄パターンを朝型にシフトさせる
排泄時間は夜を少なくし、朝に行えるようになるのが理想的ですよね。
決まった時間に椅子に座って朝食を摂ることで、排泄するタイミングをできるだけ朝に近づけてみましょう。
食事を摂ることは腸が活発に動くことにつながり排泄が促されます。
また上半身を起おこした状態で食事を摂ると、食べ物が腸に届きやすくなります。
その他にも日中の運動量を増やして、内臓の働きを活発にさせることも効果的です。
おむつを着用する
上記に挙げた対策を実施してもトイレに失敗してしまうことが多い場合は、おむつを着用することで介護の負担は軽減できます。
しかし前述した通り、おむつは被介護者の方の多くは望まないケースが多いです。
おむつの着用は夜間だけにするなどの一時的な使用に留めておきましょう。
トイレ介助をより楽にするために
トイレ介助を含めた介護を行う方の中には、住宅改修やリフォームを考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、住宅改修やリフォームには多額の費用がかかるため金銭的な理由から断念せざるを得ない場合もあります。
そこで、介護保険サービスを利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
介護保険サービスを利用することで金銭面でのサポートを受けることができます。
介護保険とは介護をするために必要な費用を一部負担してくれる制度で、基本的に全ての人は40歳から保険料の支払い義務が発生します。
介護保険は65歳以上または特定の病気と診断された40歳以上の方が様々な介護サービスを受けられ、一部の費用を負担してくれる制度があります。
例えば居宅介護住宅改修費や高齢者住宅改修費用助成制度では、介護に伴う自宅のリフォームを行った際に最大で20万円まで費用を負担してくれます。(費用の一部は自己負担です。)
また住宅特定改修特別税額控除という制度では、介護に伴うリフォームをした場合に税金の特別控除を受けられます。(ただ住宅ローンに関連する控除をすでに受けている場合は、どちらかしか控除を受けられません。)
こういった介護保険サービスを利用し住宅改修といったリフォームを行うことで、介護者と被介護者の双方にとって介助のしやすい環境を作ることができます。
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便の拭き方にもコツがある?
おむつで排便する際や排便に失敗してしまったときなどの便の拭き方について、三つのコツをお伝えします。
一つ目は、お尻をタオルで拭く際は前から後ろの方向に拭くことです。
こうすることで、便が陰部に触れてしまうのを防げます。
二つ目は、汚れを最初におむつで拭き取ることです。
おむつの生地は吸水性に優れているため、柔らかい排泄物のときはタオルで拭くよりも汚れが広がりません。
最初におむつで排泄物を取り除いてから、タオルなどで拭き取るのがおすすめです。
三つ目は、汚れた場所は可能な限りお湯で洗い流すことです。
おむつやタオルで拭くだけだと皮膚に便が残りやすい場合があります。
お湯で洗い流すことで、臭いも残らず清潔さを保てます。
また排泄物の臭いを軽減するために、おむつや拭き取った紙を捨てるゴミ箱は蓋が付いているタイプにしたり、おむつ専用のゴミ箱を用意したりするなど工夫をしてみましょう。
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トイレ介助もできる介護ロボットの実用化
介護ロボットとは、利用者の自立支援や介護者の負担を軽減するのに役立つ介護機器のことです。
平成27年の補正予算では介護ロボットの更なる開発、普及のため52億円が投入されました。
厚生労働省関係では、介護ロボットに関連した以下のような事業に取り組んでいます。
- 介護ロボットのニーズ・シーズ連携調整会議設置事業
- 介護ロボットを活用した介護技術開発モデル事業
- 介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業
すでに実用化されている介護ロボットもあります。
「移乗サポートロボットHUG」は、座位間の移乗補助などを行うロボットです。
利用者は介護者ではなくHUGに負ぶさる体勢になるので介護者の負担が減り、利用者も気兼ねなくトイレに行けるようになりました。
介護とトイレ介助に関するよくある質問|Q&A
介護とトイレ介助については、多くの疑問があります。
よくある質問に対して回答します。
介護用語のトイレ介助とは?
介護用語のトイレ介助とは、介護が必要な人がトイレを利用する際に、介護者が身体的・精神的なサポートを提供することを指します。
具体的には、トイレへの移動支援、衣服の脱ぎ着の援助、体位の調整、清拭(おしりふき)などが含まれます。
トイレの介助の仕方は?
トイレの介助の仕方は、介護が必要な人の身体的な状態や能力により異なります。
基本的には、安全にトイレを利用できるようにサポートし、プライバシーを尊重することが重要です。
具体的な手順としては、まず介護が必要な人を立たせ、トイレまで導きます。
次に、衣服の脱ぎ着を援助し、適切な体位になるように支援します。
用を足した後は、清拭を行い、衣服を着せ直します。
高齢者のトイレ介助の注意点は?
高齢者のトイレ介助の注意点としては、まず安全性を確保することが最も重要です。
転倒や滑りなどの事故を防ぐため、手すりの設置や床の滑り止め対策などが必要です。
また、高齢者のプライバシーを尊重し、可能な限り自立を促すことも大切です。
そして、高齢者が恥ずかしさや不安を感じないように、優しく丁寧なコミュニケーションを心掛けることが求められます。
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介護と排泄介助のまとめ
ここまで、トイレ介助の方法や介助の負担を減らす方法についての情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 排泄方法にはトイレだけでなく、ポータブルトイレ、便器・尿器、おむつを使用する方法があり、被介護者に合わせて選ぶことが大切
- 自尊心を傷つけないようにするなど、被介護者の方の気持ちに寄り添って丁寧な介護を心がける
- 夜間に排泄する頻度を減らすため介助器具を使用したり就寝前にトイレに行ってもらうなどの対策が大切
- 自分の力だけで介護を行おうとせずに介護保険サービスや介護器具を利用することも検討してみる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。