「食事介助とはどのようにやるのだろう?」
「食事介助の準備・食後のケアなどについて詳しく知りたい。」
と上記のような疑問を抱えている方もいらっしゃると思います。
介護職には食事介助の仕事もあり、基本となる事柄は要介護者の食事を手助けすることが挙げられます。
また食事介助の介護の準備・食後のケアなどは基本となる事柄の補助的要素と言えます。
今回は食事介助の介護の基本についてどのような事柄があるのか、また食事介助の介護の準備・食後のケアなどについて詳しく解説していきます。
- なぜ食事介助が必要なのか
- 食前、食後のケア
- 食事介助の基本
- 介護食の選び方
ぜひ最後までお読みください。
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なぜ食事介助が必要?
※画像はイメージです
その理由は、噛む力の衰え、飲み込む力が弱くなる、味覚・臭覚の衰え、消化機能が低下するの4つがあげられます。
一つずつ詳しく説明していきます。
噛む力の衰え
噛む力の衰えとは、要介護者が歯を失ったり顎の力が弱まったりすることが原因と言われています。
次第に硬い食べ物から柔らかい食べ物を好むようになります。
それと比例して食べられる種類の幅が狭くなり、栄養に偏りが出始めさらに身体を弱めてしまいます。
そのため要介護者の噛む力にあわせて食べ物の硬さと大きさを把握し、負担にならないように心がけると良いと言えます。
飲み込む力が弱くなる
口の中のものをうまく飲み込めない状態の障害を嚥下(えんげ)障害といいます。
嚥下障害は、のど・気管・食道などの神経や筋力が衰えることにより起こると言われています。
嚥下障害があると「食べ物がのどに詰まり窒息になる」「水分摂取が行えず脱水症状になる」「誤嚥により気管に細菌が入る誤嚥性肺炎になる」などの危険性があります。
そのため、誤嚥(ごえん)を起こさないためにリラックスして正しい姿勢で飲み込めるようにサポートすると良いと言えます。
味覚・嗅覚の衰え
味覚・嗅覚の衰えとは、加齢による感覚機能の低下から弱まることが原因と言われています。
まず「味覚」ですが、舌には味を感じる感覚細胞の味蕾(みらい)があり、味蕾の減少により味の濃さ(塩味や甘味)がわからなくなると言われています。
そのため濃い味付けを欲する方が多くいるとされています。
次に「嗅覚」ですが、衰えてしまうと料理の匂いを感じることができず、食欲不振・減退につながる可能性があります。
そのため介護職員が要介護者の食事の時間と量を把握し、栄養不足や食べ好き防止を行い健康を維持する役目があります。
消化機能が低下する
消化器官の低下とは、胃や腸など消化・吸収の役割の臓器が機能低下することです。
主に加齢が原因と言われています。
まず「胃」ですが、年齢と共に細胞の弾力性や胃酸分泌量の低下を招きます。
細胞の弾力性や胃酸分泌量が低下すると、食べ物が胃に貯まりにくくなったり消化不良により胃もたれで苦しくなると言われています。
次に「腸」ですが年齢と共にぜん動運動(内容物を先へ押し出す働き)の低下や筋力の衰えにより、下痢や便秘などの原因となります。
そのため、規則正しい時間と消化吸収の良い食事を適量だけ摂取できるように食事管理する必要があります。
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食事前の準備
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具体的な準備の内容を解説いたします。
食事に集中しやすい環境を作る
食事の準備の種類の一つに、食事に集中しやすい環境を作ることがあげられます。
食事に集中しやすい環境とは、要介護者が食事をとれる状態にすることだけでなく、要介護者自体の身体的・精神的な準備も含まれます。
例を挙げると以下の通りです。
体調チェック
まず体調チェックですが、要介護者の現在の体調を確認します。
発熱はないか、食欲はあるか、呼吸の乱れはないかなど日常と違った事柄があれば、食事の内容と量や時間を変える必要があります。
排泄
食事に集中しやすい環境を作るには、食事の前に排泄を済ませておくことが大切です。
食事の準備ができていざ食べ始めても、排泄したくなると我慢したり逆に食事を急がせてしまう可能性があります。
途中でトイレに立つと集中力が切れますし、その分手洗いやチェックなど食事に時間が掛かります。
要介護者の集中力を持続させるためにも先に排泄を済ませておくことが大切です。
手洗い
食事前に手を清潔にすることも忘れてはいけません。
これは要介護者だけでなく食事介助者も同様に行い、汚れやバイ菌を口腔内に侵入させない努力の一つといえます。
声掛け
声掛けは、要介護者が「今から食事をする」と言う意識を高めるために行います。
またコミュニケーションの一環であり、要介護者との連携を上手くとるためには必須の行動です。
特に味覚や嗅覚と視力など、何を食べているのか自身で理解できない要介護者の方もいます。
挨拶や献立の説明、美味しいかどうか、お腹は満たされたのかなど細かい会話を行います。
姿勢
食事をしている時の誤嚥を防ぐために姿勢を整えることは大切です。
ベッドや椅子など要介護者の負担にならない場所にしっかりと座らせ、背筋や頭の向きを整えます。
またテーブルの高さも高すぎず低すぎず、要介護者の食事をとりやすい位置を確認します。
食事をとる意識作り
最後に食事をとる意識作りですが、前述した事柄以外の外部からの意識阻害を防止するために行います。
例えばテレビが付いているなら消したり、騒がしい場所であれば静かな環境に整えることがあげられます。
また食事をするのに相応しくないニオイ(排泄・残り香など)があれば、先に換気して空気の入れ替えを行いましょう。
落ち着いた空間や状態で集中力を高め、要介護者が気持ちよく食事できる状態に保つことが重要です。
このほかにも細かい点を注意深く観察し、要介護者の状態やペースに合わせる必要があります。
口の中を清潔にしておく
食事の準備の種類の一つに、口の中を清潔にしておくことがあげられます。
口の中を清潔にする意味は、食事中に誤嚥した場合に口の中の傷口や粘液から細菌が体内に入るのを防ぐためと言われています。
そのため、口腔ケアや口腔体操を行い誤嚥リスク予防や唾液の分泌により食事を楽しくとることができるように心掛けましょう。
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食事介助の基本
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食事介助の基本の種類はいくつかあり、以下の通りあげられます。
要介護者の隣に座る
要介護者の隣に座るとは、食事介助で基本となる要素です。
要介護者の隣に座ることは、同じ目線で食事のサポートができ誤嚥のリスクを防ぐことにつながります。
介助者が立ち上がったまま食事介助すると要介護者の首の向きが苦しく、姿勢も悪くなります。
また、正面に座るのではなくサイドの位置に付くことで食事介助をしやすくなります。
適量を口に入れる
適量を口に入れるとは、食事介助の際に要介護者に食べ物を丁度良い分量(スプーン1杯分が目安)だけ口に含ませることを意味します。
多かったり少なかったりすると誤嚥のリスクがあがったり、咀嚼しづらくなります。
また硬い食べ物であれば多すぎると吐き戻しがあるため、適量を口に入れることが重要です。
箸やスプーンは下から
箸やスプーンを口の下からいれることは、食事介助での基本的な事柄となります。
食べ物を口に運ぶときは、スプーンを要介助者の口の下あたりに持っていき口の奥ではなく手前にいれます。
例えば上から入れたり水平に入れようとすると、誤嚥のリスクが高まります。
また食べ物を口の手前で含んだら、口を閉じたタイミングでスプーンを取り出しましょう。
バランスよく口に運ぶ
バランスよく口に運ぶことも、食事介助での基本的な動作と言えます。
食事は、主菜・副菜・水分などを順番にバランスよく口に運ぶことが大切です。
食べ物を口に運ぶ際に気を付けるべきポイントは、声掛けをすることです。
要介護者の中には、味覚・嗅覚・視覚が低下している方もいます。
何を口に含んだのか分からないということもあるため、口に運ぶ前に「次は〇〇を食べましょうね」と声を掛けましょう。
些細な気配りも要介護者の精神的不安を無くす意味で重要です。
ゆっくりと食事を進める
食事介助はできるだけ要介護者のペースに合わせてゆっくりと行いましょう。
急かしてしまうと咀嚼できず誤嚥のリスクが高まります。
身体的・精神的にもストレスを与えてしまうため、要介護者の気持ちになってゆとりのある食事をサポートしましょう。
ただあまり長すぎてもいけないので、およそ30分くらいを目安に食事を行うと良いとされています。
長時間ですと要介護者が疲れてしまい、食事自体を嫌になってしまう恐れがあります。
気持ちよく食事を楽しんでもらえるように、心から寄り添うことが大切です。
食後のケア
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食事のケアの種類はいくつかあり、以下の通りあげられます、
口腔ケアを行う
食後のケアの一つである口腔ケアは、口の中を清潔に保つための方法です。
例えば義歯を洗浄したり・歯磨きを促すことで口腔内を綺麗にしてもらいます。
なぜ口腔ケアが必要なのかというと、食べ物の残りかすが残っていると虫歯の原因になるからです。
また誤嚥や窒息のリスクを下げるために、必ず口の中は何もない状態にします。
口の中が綺麗になったことを最後にチェックし、口腔ケアは完了です。
しばらくは横にならないでいてもらう
しばらく横にならないでいてもらうことは、食後のケアで大事なことです。
口腔ケアと同様に口の中に食べ物が残っていたりすると、誤嚥の原因になります。
また臓器の向きが悪いと胃から溶解した内容物や胃液が逆流する危険性があります。
そのため食後はおよそ30分から1時間は横にならないでいてもらうことが大切です。
食欲の程度などを記録する
食後のケアで食欲の程度などを記録することは、とても重要です。
食事の記録は食事の摂取量だけでなく、残った食事・食事にかかった時間・献立の内容を記録しておきます。
食事の記録をすることで、要介護者の嗜好や傾向を確認でき、今後の食事の対策(好き嫌いや困っていることなど)ができるようになります。
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要介護者が食事を食べない場合の対処方法
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食事前の準備、食事介助の基本に気をつけていても、要介護者が食事を食べてくれないことがあります。
その際の対処法のいくつかを紹介します。
食欲を刺激する声かけを行う
「美味しそうな魚ですよ」や「よく味が染みていますよ」など、簡単な声かけが効果的なこともあります。
他にも、食事前に食べ方や道具の使い方などを説明しておくと、スムーズに食事に入りやすい場合があります。
便秘などお腹の調子によってご飯を食べる意欲がなくなっている場合もあります。
普段の様子からはわからない場合もあるため、積極的に確認することが大切です。
食事形態を変更する
カットの大きさや食べ物の固さを変えると要介護者にとって食べやすくなる場合があります。
また、盛り付けを工夫することも大切です。
小分けにして一度に盛り付ける量を減らすと、見た目上の圧迫感がなくなり食欲につながるケースがあります。
食器を変えてみたり、箸からスプーンやフォークに変えてみたりすることも効果的なことがあります。
食事環境を改善する
例えば、家族や要介護者と仲の良い人を招き、楽しい雰囲気で一緒に食卓を囲むと食欲が高まることがあります。
外食をするなど場所を変えてみるのもよいでしょう。
食事の際に音楽をかけてみたり、暖色系の黄色や赤色のランチョンマットを使ったりなど、五感から食欲を刺激してみるのも良いと思います。
好きな食事を提供する
本人や家族から好きなものを聞き、提供してみましょう。
また、食欲がないときは、喉越しが良く消化の良いもの、冷たくてさっぱりしたものなどが好まれます。
カタログやチラシなどの絵や写真を見せながら「コレなら食べられそう?」と聞いてみるのもおすすめです。
水分摂取を促す
食欲がないときは、脱水になりがちです。
また脱水が原因で食欲が落ちることもあります。
味噌汁や野菜スープなどでも水分摂取は可能ですので、食事の際に促すようにしましょう。
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介護食の選び方
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要介護者ごとに噛む力や飲み込む力・味覚・嗅覚などの低下の度合いが違うため、人それぞれ選び方が異なります。
こちらでは食後食の選び方を区分ごとに詳しく具体的に解説いたします。
介護食の区分
介護食の区分は日本介護食品協議会で制定され、UDF(ユニバーサルデザインフード)により4つのタイプから区切られます。
介護食の区分の分け方は栄養バランスを前提に、要介護者にとって噛みやすさと飲み込みやすさで分けられます。
区分1
区分1は普通のご飯(白米)が簡単に噛めるレベルです。
大きい食品や硬い食べ物は、やや食べづらく感じることがあります。
普通に飲み込める方向けです。
区分2
区分2は木綿豆腐の硬さでも歯茎などでつぶせるレベルです。
大きい食品や硬い食べ物は食べづらく感じます。
場合によっては、飲みにくいことがあります。
区分3
区分3は絹ごし豆腐の硬さを舌でつぶせるレベルです。
細かい食品や柔らかい食べ物であれば食べられます。
ただし水やお茶が飲みにくいことがあります。
区分4
区分4はおかゆなどペースト状の食べ物などを噛まなくても飲み込めるレベルです。
固形物の食品は少量でも食べづらく感じます。
また水やお茶が飲み込みづらいことがあります。
食べる能力に合わせて選ぶ
介護食には要介護者の食べる能力に合わせて、さまざまな形態があります。
食事形態の種類は以下の通り挙げられます。
- きざみ食:細かく刻んである食事
- 軟菜食(ソフト食):要介護者でも自力でかみ砕くことができる食事
- ミキサー食:食べ物をミキサーにかけてポタージュ状にした食事
- 嚥下食:柔らかく調理した食べ物をポタージュ状またはペースト状もしくはゼリー状にした食事
- 流動食:流し込めることを目的とした液状の食事
介護食の特徴(メリット)を理解し、要介護者の食べる能力に合わせて選ぶことが重要です。
要介護者の咀嚼機能(噛む力)や嚥下機能(飲み込み力)を把握することで、食事でむせてしまうことや誤嚥リスクを予防できます。
出典:日本介護食品協議会「UDF区分策定の経緯」
介護食について知りたい方は以下の記事もお読みください。
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介護と食事介助のまとめ
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- 食事前の準備は、「食事に集中しやすい環境を作る」「口の中を清潔にしておく」など
- 食事介助の基本は、「要介護者の隣に座る」「適量を口に入れる」「箸やスプーンは下から」「バランスよく口に運ぶ」「ゆっくりと食事を進める」など
- 食後のケアは、「口腔ケアを行う」「しばらくは横にならないでもらう」「食欲の程度を記録する」など
- 介護食の選び方は、要介護者の噛む力や飲み込む力で食事を選ぶ
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。