体力的にも精神的にも負担の大きい介護の仕事。
介護士は重労働というだけでなく、低賃金の影響で離職率が高くなっています。
少しでも介護士の離職率を減らすために作られた制度の一つが、介護職員処遇改善手当制度です。
「処遇改善手当って何?」「処遇改善手当は私ももらえる?」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、介護士の処遇改善手当について以下の点を中心にご紹介します。
- 処遇改善手当について
- 処遇改善手当をもらう条件
- 処遇改善手当の支給方法
- 特定処遇改善加算について
疑問を解消するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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介護職員処遇改善手当とは
まずは、介護職員処遇改善手当についてご紹介します。
介護士は他の医療職に比べても賃金が低いといわれており、それに伴い介護士になる人が少なく、介護士になったとしても仕事の大変さから離職率が高いのが現状です。
日本では年々高齢化が進み、人生100年時代という言葉も出てきています。
そのため国が介護士不足を問題視し、介護職員の処遇を改善するためにできた制度が処遇改善手当です。
厚生労働省は、「介護職員の安定的な処遇改善手当を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算です。」と発表しました。
介護職員処遇改善手当は介護士だけでなく、ホームヘルパーや生活支援員、保育士、訪問支援員などの障害福祉サービスに従事する職員も対象としています。
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介護職員処遇改善手当をもらう条件
処遇改善手当は、介護職員の全員がもらえるというわけではなく介護職員の中でも条件があります。
指定基準を満たし、介護士の処遇改善の取り組みを行っている事業所でそれが国から認められた施設のみもらえることができます。
職場によっては、同じような業務内容でも手当がつくところとつかないところがあります。
処遇改善手当は、義務ではなくあくまで権利という点に注意が必要です。
そのため、就職したり、転職したりする際には処遇改善手当についてもよく調べておく必要があります。
処遇改善手当をもらう条件として、事業所が処遇改善加算を取得している必要があります。
事業所が処遇改善のための取り組みを行っており、届け出を出し承認を受けている必要があります。
そのため同じような業務内容で条件を満たしていたとしても、事業所が届け出を提出していない場合は手当をもらうことはできません。
事業所が処遇改善加算を取得するための主な条件は以下の通りです。
- 職位・職責・職務内容などに応じた任用要件と賃金体系を整備すること
- 資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保すること
- 経験若しくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期的に昇給を判定する仕組みを設けること
- 賃金改善以外の処遇改善を実施すること
上記の他にも、処遇改善加算を取得するにはさまざまな条件があります。
詳しくは厚生労働省のホームページなどをご覧ください。
処遇改善手当がもらえない場合とは
処遇改善手当がもらえない例には
- 勤務先の事業所が処遇改善加算を受け取っていない
- 介護の事業所に勤務しているが、介護職ではない
- 介護処遇改善手当の分配の際に、事業所が選んだ分配対象になっていない
などがあります。
勤務先が処遇改善加算の取得のための届け出を出していない場合、処遇改善手当を受け取れません。
処遇改善加算取得のための届け出を出していない理由には、事務作業が複雑なためなどがあります。
処遇改善手当を支給するためには、処遇改善計画書、処遇改善実績報告書、職員への処遇改善手当の計算などの作業があります。
小規模の事業所などは、事務作業にさく時間が足りないため、届け出を出すのが難しくなります。
また、介護施設に勤務していても介護事務などは、直接介護の仕事をしない場合、手当の対象外となります。
処遇改善手当は、どのように介護職員に分配するかは、事業所が決定します。
そのため、分配対象になっていない場合、処遇改善手当がもらえません。
しかし、分配方法については、事業所で働く介護職員に周知しなければいけません。
また、介護職員は分配方法に異議を申し立てることもできます。
介護職員処遇改善手当の支給方法
処遇改善手当の支給方法についてはこれといった決まりはなく、基本的には各事業社にお任せしている形になります。
例えば、正社員のみ支給しているところや労働時間数に応じて支給しているところなど支給方法はさまざまです。
支給方法は自由になるため、事業所によっては毎月支給されているケースやボーナスとして支給されるところもあります。
介護職員の処遇改善手当|いくらもらえる?
処遇改善手当の金額は、厚生労働省の資料によると以下のとおりです。
- 加算1、月額3万7,000円相当
- 加算2、月額2万7,000円相当
- 加算3、月額1万5,000相当
- 加算4、加算3×0.9
- 加算5、加算3×0.8
となります。
支給金額は介護施設職員全体ではなく、職員1人あたりの支給金額です。
また、処遇改善加算をうけるためには、4つの条件があります。
- 介護職員の職位や仕事内容に応じた賃金体系をつくる
- スキルアップ研修や研修ための計画策定、資格取得支援の実施をする
- 経験や取得資格などに応じて、昇給していく制度つくる
- 賃金以外で、職場改善に対する取り組みを行う
1つ目は、介護職員の職位や仕事内容によって、賃金体系の整備を行うという条件です。
施設の中では、主任やリーダーなどが存在します。
主任やリーダーの存在を明確にし、役職についたときに給料がどのくらいアップするのか明確にします。
役職についたときの給料を明確にすることで、将来、キャリアアップを目指すときの参考になります。
2つ目は、スキルアップ研修のための計画や、資格取得支援の実施をするという条件です。
介護職員がスキルアップするための費用を負担したり、計画を策定したりします。
資格取得支援や研修をすることで、現場での緊急時の対応ができるようになります。
3つ目は、経験や資格によって昇給する制度をつくるという条件です。
具体的には、介護職員の勤続年数などにより昇給する仕組みをつくります。
また、介護福祉士の資格をもっている場合は、資格手当をつけます。
4つ目は、賃金以外の職場改善の取り組みです。
介護職員の腰痛対策として、転倒やケガの防止のための施設整備などが条件になります。
処遇改善手当は、事業所や職員によっても金額に違いがでます。
そのため、一概にいくらもらえるとはいえないのが現状です。
特定処遇改善加算とは?
給料が安いという理由から、なかなか介護職員の人手不足は改善されません。
そのため、2019年10月より特定処遇改善加算という制度が設けられました。
特定処遇改善加算とは、技能や経験がある介護職員に対しての処遇改善を目的に創設されたものです。
基本的には、介護福祉士の連続経験年数が10年以上であることが条件です。
原則として、経験年数のある介護職員が他の介護職員の平均賃金よりも賃金改善後の見込額が高いことが挙げられます。
他の介護職員からみて平均賃金が2倍であり、年収440万円以上であることがルールの一つです。
上記のように賃金を改善することで、介護職員の離職を防止することが目的です。
勤務形態は関係ある?
ここまで、処遇改善のための制度を詳しく解説してきましたが、勤務形態によって手当に差があったり、もらえない場合もあるのではないかと不安に思った方もいるかと思います。
結論としては介護職員であれば、パートやアルバイト、派遣社員などの勤務形態に関係なく処遇改善手当をもらうことが可能です。
また、資格の有無も関係ありません。
扶養内のパート社員であっても手当をもらうことが可能です。
しかしこういったケースには扶養の枠を超えないように勤務時間の調整が必要になりますので、詳しいことは各事業所に確認することをおすすめします。
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介護職員の処遇改善手当はいつまで?なくなるって本当?
介護職員の処遇改善は、2009年からはじまり拡充されてきました。
しかし、本来は施設の経営努力、労使間の交渉で行うべきなどの指摘があります。
また、介護職員の処遇改善は保険料の負担増につながります。
2022年2月~9月までは補助金、2022年10月以降は介護報酬での対応となると現場の事務負担が増えます。
そのため、負担軽減するために事務手続きを工夫する、介護報酬での対応は利用者負担が増える点について留意すべきとされています。
大きく分けて、事務負担の軽減、利用者負担増・保険料負担増の対策が今度の重要なポイントといえます。
介護業界の人材確保や定着を考えたとき、介護職員の処遇改善はとても大切なテーマです。
しかし、永遠に介護報酬だけで対応していくのは困難といえます。
処遇改善手当はこれからも継続されますが、財源は社会保障改革の中で捻出するとされています。
介護サービスの単位数を引き下げるなどにより、処遇改善加算の財源を生み出すことが求められます。
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特定処遇改善加算の取得状況
厚生労働省の行った調査では、令和3年現在、「介護職員等特定処遇改善加算」の加算を取得している事業所は、全体の約6〜7割となっています。
全体の約3〜4割の事業所は、特定処遇改善加算の取得(届出)をしていないのです。
特定処遇改善加算を取得してない理由をみると、「賃金改善の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」が42.2%を占めます。
「賃金改善の仕組みを設けることにより、職種間の賃金おバランスがとれなくなることが懸念されるため」が40.2%となっています。
全体では、特定処遇改善加算を取得している事業所が増えてきていますが、施設・事業所によっては取得率が5割以下もみられます。
まだまだ取得していない施設・事業所が多いのです。
出典:厚生労働省【令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要】
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介護職の平均給料は?
介護職員の平均給与額の内訳(月給・常勤の者)
①令和3年9月 | |
平均給与額 | 31万6,610円 |
基本給 | 18万7,180円 |
手当 | 8万1,110円 |
一時金(賞与等) | 4万8,320円 |
上記の表は、介護職員(月給・常勤)の平均給与額と給与額の内訳になります。
手当には職務手当、処遇改善手当、通勤手当、家族手当、時間外手当も含まれています。
介護職員は働く施設や事業所、資格等の有無によって給与額が変化します。
全体を通して、どの施設・事業所、資格の有無においても、給与額は増加してきているのです。
出典:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
まとめ:介護士の処遇改善手当
ここまで、介護士の処遇改善手当についてお伝えしました。
要点は以下の通りです。
- 処遇改善手当とは、介護職員の待遇を少しでも改善し、介護職員の人材不足を解消するために作られた制度
- 処遇改善手当をもらうにはいくつかの条件があり、事業所が市区町村に届出を提出し許可を得る必要がある
- 特定処遇改善加算は、技能や経験がある介護職員の処遇改善を目的とした制度
- 処遇改善手当は、勤務形態に関係なく支給される
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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