介護が必要な人に対して直接介護を行う職種を「介護士」といいます。
一方で、介護士とは別に「介護福祉士」と呼ばれている人たちがいることをご存知でしょうか。
「介護福祉士」と「介護士」はどんな違いがあるのか疑問に思う人も多いでしょう。
本記事では、「介護福祉士」と「介護士」の違いについて以下の点を中心にご紹介します。
- 介護福祉士と介護士の違い
- 介護福祉士になる方法
- 介護福祉士に向いている人
介護福祉士と介護士の違いを理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護福祉士と介護士の違い
※画像はイメージです
介護福祉士と介護士は、どちらも介護が必要な人に対して直接介護サービスを提供する職員のことをいいます。
一方で介護福祉士と介護士は、資格の有無、業務内容、給与の面で違いがあります。
具体的にどのように違いがあるのでしょうか?
介護福祉士と介護士の3つの違いについてご紹介します。
資格の有無
介護福祉士と介護士の一つ目の違いは、国家資格の有無です。
介護士とは介護の仕事を行う人全体を指します。
一方、介護福祉士とは国家資格を保有して介護の仕事をしている人のことを指します。
介護系の資格の中で唯一の国家資格であり、一定以上の知識・経験・介護技術を持つことの証です。
ただし、介護の仕事自体は「介護福祉士」の資格を持っていなくても行うことができます。
また、介護福祉士について詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
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業務内容
介護福祉士と介護士の2つ目の違いは、業務内容です。
介護サービスを提供するという点ではどちらも同じです。
ただ、介護福祉士はリーダーとしての側面や、専門的な介護技術や知識が求められます。
専門的な知識や技術を活かし、介護士に対する指導も行います。
また、ケアプラン作成に必要なサービス担当者会議に参加し、専門的な知見から意見を述べるといった業務も担っています。
給与
介護福祉士と介護士の3つ目の違いは給与です。
厚生労働省が発表した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均給与月額は33.8万円だったのに対し、介護士は28.2万円でした。
どの種類の介護施設においても介護福祉士の給与が高いことがわかります。
介護福祉士と介護士は月給5~7万円程の違いが出ています。
- 全体:介護福祉士33.8万円 介護士28.2万円
- 介護老人福祉施設:介護福祉士36.4万円 介護士30.4万円
- 介護老人保健施設:介護福祉士35.3万円 介護士28.3万円
- 介護療養型医療施設:介護福祉士34.0万円 介護士28.6万円
- 介護医療院:介護福祉士32.9万円 介護士27.3万円
- 訪問介護事業所:介護福祉士32.7万円 介護士0円(無資格者は就労不可)
- 通所介護事業所:介護福祉士30.5万円 介護士24.9万円
- 通所リハビリテーション事業所:介護福祉士32.3万円 介護士27.7万円
- 特定施設入居者生活介護事業所:介護福祉士34.5万円 介護士28.3万円
- 小規模多機能型居宅介護事業所:介護福祉士31.5万円 介護士25.2万円
- 認知症対応型共同生活介護事業所:介護福祉士31.2万円 介護士26.5万円
また、介護福祉士の手当について詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
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介護福祉士になるには?
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介護福祉士になるためには、一定の条件を満たした状態で財団法人社会福祉振興・試験センターに登録する必要があります。
実際に介護福祉士として登録するには実務経験ルート、養成施設ルート、福祉系高校ルート、経済連携協定ルートの4つのいずれかのルートを通って国家試験に合格する必要があります。
実務経験ルート
介護福祉士になるための一つ目の方法は、実務経験を積んで国家資格を受験する方法です。
実務経験ルートは、無資格で介護士になった人のほとんどが通るルートです。
実務経験ルートの場合は、以下のどちらかの条件を満たすことが国家試験の受験資格の条件になっています。
また実務経験ルートの場合は筆記試験のみで、実技試験は免除となります。
- 「従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540時間以上」+「実務者研修修了」
- 「従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540時間以上」+「介護職員基礎研修」+「喀痰吸引等研修」
従業期間とは対象施設に在籍していた期間を指し、従事日数とは実際に業務に当たった日数のことを指しています。
養成施設ルート
介護福祉士になるための2つ目の方法は、専門の養成施設に通って国家資格を受験する方法です。
専門の養成施設とは、高校を卒業後に進学する専門学校や4年制大学などのうち介護福祉士養成施設の指定を受けている学校を指します。
2017年までは、国家試験を受けなくても養成施設を卒業するすべての学生が介護福祉士を取得できました。
しかし現在は経過措置があり、2017年4月1日~2022年3月31日の卒業生までは条件付きの取得になっています。
国家試験を受験しない場合もしくは国家試験を受けたが不合格だった場合でも、介護福祉士の効力が卒業後5年間付与されます。
この期限付き介護福祉士として5年間継続勤務した場合に、無条件で正式に介護福祉士として登録可能になります。
福祉系高校ルート
介護福祉士になるための3つ目の方法は、福祉系高校に通って国家資格を受験する方法です。
福祉系高校ルートは、
- 平成20年度以前に入学した人
- 平成21年度以降に入学した人
- 特例高校等に入学した人
の3つに細分化されています。
平成20年度以前に入学した人
平成20年度以前に福祉系高校に入学した人の場合は、次のいずれかの条件を満たすことによって介護福祉士国家試験を受験できます。
- 学校教育法による高等学校(専攻科及び別科を除く)において、改正前の社会福祉士及び介護福祉士法施行規則に定める教科目・単位数を修めて卒業した方・大学へ「飛び入学」した人
- 学校教育法による高等学校の専攻科(修業年限2年以上)において、改正前の社会福祉士及び介護福祉士法施行規則に定める科目・単位数を修めて卒業した人
平成21年度以降に入学した人
平成21年度以降に福祉系高校に入学した人の場合は、次の科目の単位を取得したうえで卒業(卒業見込みも含む)すると介護福祉士国家試験を受験することができます。
なお平成21年度以降に福祉系高校に入学した人の場合は実技試験が免除となり、介護福祉士国家試験のときは筆記試験のみとなります。
科目 | 単位数 |
社会福祉基礎 | 4 |
介護福祉基礎 | 5 |
コミュニケーション技術 | 2 |
生活支援技術(医療的ケアを含む) | 10 |
介護過程 | 4 |
介護総合演習 | 3 |
介護実習 | 13 |
こころとからだの理解 | 8 |
人間と社会に関する選択科目 | 4 |
合計53単位
特例高校等に入学した人
特例高校等とは、先にご紹介した福祉系高校とは別に厚生労働省が独自の基準により指定した学校です。
この学校を出た場合は、福祉系高校と同様の科目について履修若しくは単位を取得して、卒業した後に介護に関する実務経験(従業期間9ヶ月(273日)以上かつ従事日数135日以上)を満たす必要があります。
また、基本的には介護福祉士国家試験のときに筆記試験に加えて実技試験を受験することが必要となります。
経済連携協定ルート
介護福祉士になるための4つ目の方法は、国が実施する経済連携協定に基づいて研修を受けながら就労し、介護福祉士取得を目的とするルートです。
令和3年10月現在、経済連携協定ルートの対象になるのはインドネシア・フィリピン・ベトナムの方です。
経済連携協定ルートの対象になった人をEPA介護福祉士候補者と呼んでいます。
あくまで経済連携協定に基づいて介護福祉士取得を目的とする、インドネシア・フィリピン・ベトナムの方が対象です。
注意しましょう。
また、介護福祉士の仕事内容について詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。
介護にかかわる資格には、さまざまなものがあります。そのなかでも、介護福祉士の資格取得を目指している方は多いのではないでしょうか。そこで今回は介護福祉士について以下の点を中心にお伝えします。 介護福祉士の仕事内容[…]
どんな人が介護福祉士に向いている?
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介護福祉士に向いている方は、以下の特徴を持った人です。
知識や技術を持っている
介護福祉士に向いている人の特徴の一つ目は、知識や技術を持っていることです。
介護福祉士には、介護士のリーダーとして介護現場を引っ張っていく役割が求められます。
そのため、専門的な知識や技術が必要です。
常に最新の技術や知識を取り入れていれば、現在利用者が抱えている課題に対して柔軟かつ効果的に対応することができるようになります。
介護に関する知識や経験・技術を持っている方であれば、介護福祉士として活躍できるでしょう。
教育することが好き
介護福祉士に向いている特徴の2つ目は、教育することが好きなことです。
介護福祉士には、一般の介護士を指導する役目もあります。
介護福祉士が一般の介護士を指導することで、施設全体の介護の質を底上げすることが期待されます。
人に教えるのが得意な人は、介護福祉士としての素質を持っていると言えます。
視野が広い
介護福祉士に向いている特徴の3つ目は、視野が広いことです。
介護福祉士は現場全体を広い視野で俯瞰的に見渡しながら、的確な指示を出す必要があるからです。
また、利用者が抱えている課題に対して一方的な見方ではなく、様々な視点から理由と原因を探る視野の広さも求められています。
成長意欲が高い
介護福祉士に向いている特徴の4つ目は、高い成長意欲を持っていることです。
そもそも介護福祉士になるためには3年間の実務経験と実務者研修を修了する必要があります。
キャリアアップを目指すという意欲が高い人でないとなかなか実現できるものではありません。
介護福祉士取得後はより専門的な認定介護福祉士や介護支援専門員を目指すことができます。
このため、介護の分野で成長していきたいと考える人にとって、介護福祉士は必要な資格なのです。
まとめ:介護福祉士と介護士の違い
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ここまで、介護福祉士と介護士の違いについてご紹介してきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護福祉士と介護士の違いは、国家資格の有無、業務内容、給与など
- 介護福祉士になるには「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「経済連携協定ルート」のいずれかの方法で国家試験に合格することが必要
- 介護福祉士に向いている人は、「知識や技術を持っている人」「教育することが好きな人」「視野が広い人」「成長意欲が高い人」
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。