介護福祉士は、介護に関わる資格の中で唯一の国家資格です。
介護福祉士になるためには、国家試験に合格した後に「社会福祉振興・試験センター」へ登録する必要があります。
しかし、実は「欠格事由」に該当すると介護福祉士としての登録が認められない場合や、取得した介護福祉士の資格を剥奪される場合があることをご存知でしょうか。
今回は介護福祉士の欠格事由について、詳しくご紹介していきます。
- 介護福祉士の欠格事由とは
- 欠格事由に該当するとどうなる?
- 介護福祉士の欠格事由に該当する場合
介護福祉士として絶対に侵してはならない欠格事由についてしっかり学んでいきましょう。
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欠格事由とは
介護福祉士の欠格事由とは、介護福祉士として相応しくないと判断される理由のことを言います。
欠格事由については、「社会福祉士及び介護福祉士法」によって定められています。
介護福祉士を目指している人が欠格事由に該当している場合は、たとえ国家試験に合格しても介護福祉士として登録することはできません。
さらに虚偽の内容や不正な方法で介護福祉士に登録したことが明らかになった場合は、介護福祉士の資格が剥奪される罰則もあります。
このように聞くと、介護福祉士の欠格事由に該当すると非常に厳しい罰則を受けると考えがちです。
しかし、普通に過ごしていれば欠格事由に該当するような事態になることは基本的にありませんのでご安心ください。
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介護福祉士の欠格事由に該当する場合
介護福祉士の欠格事由に該当するケースは、以下の三つです。
一つずつ解説していきます。
精神機能の障害により業務ができない場合
介護福祉士における欠格事由の一つ目は、「精神機能の障害により業務ができない場合」です。
精神機能の障害によって認知機能や判断能力、コミュニケーション能力が低下した場合は、介護福祉士の欠格事由に該当します。
以前は「心身機能」の障害により業務ができない場合が該当していましたが、解釈の変更によって上記のように変更されています。
若年性認知症などによって脳の機能が低下したり重度の精神疾患になったりして、通常の仕事をこなすことが困難となった場合が該当します。
身体は元気でも他者と円滑なコミュニケーションを図ることが難しくなったら、介護福祉士として働き続けることが難しいということになります。
介護の仕事の基本は、他者とのコミュニケーションや仲間とのチームワークです。
業務に支障をきたす精神状態となってしまったら介護福祉士として働き続けることはできなくなってしまいます。
ただし、治療により症状が改善した場合は復職することも可能です。
禁錮以上の刑や罰金刑に処された場合
介護福祉士における欠格事由の二つ目は、「禁固以上の刑や罰金刑に処された場合」です。
下記の二つに該当する場合は、介護福祉士の資格が剥奪されます。
- 何らかの刑事事件を起こし、禁錮以上の刑に処された場合
- 社会福祉士及び介護福祉士法、精神保健福祉士法の規定その他社会福祉又は保健医療に関する法律によって罰金刑に処された場合
各種報道を見ると、逮捕された時点で勤務先を解雇されるケースが一般的です。
しかし日本には推定無罪という考え方があります。
介護福祉士の資格が剥奪されるのは、あくまで刑が確定してからということになります。
なお、たとえ前科があっても刑罰を終えて2年が経過すれば欠格事由の対象から外れるので、介護福祉士として登録することが可能になります。
執行猶予期間は欠格事由の対象期間中に含まれるため注意しましょう。
相応しくない行為・秘密の漏洩をした場合
介護福祉士における欠格事由の三つ目は、「相応しくない行為・秘密の漏洩をした場合」です。
社会福祉士及び介護福祉士法では、下記の三つに該当する行為を行った人は介護福祉士としての資格を剥奪(登録を取り消されること)されることが規定されています。
- 虚偽又は不正の事実によって登録を行った場合
- 介護福祉士として相応しくない行為(信用失墜行為)を犯した場合
- 秘密の漏洩(秘密保持義務違反)を犯した場合
この規則は介護福祉士が上記の行為を行った場合の措置について書かれているものです。
しかし当然ながら、まだ介護福祉士でない人にとってもこのような行為を犯したことが明らかになった場合は同様に欠格事由に該当するので、介護福祉士として登録することができません。
なお、処分の対象となってから2年間が経てば再び介護福祉士としての登録が可能となります。
その他の介護福祉士になれない理由
いくら欠格事由に該当していなくても、無条件で介護福祉士になることができるわけではありません。
介護福祉士は国家資格ですから、資格を得るためには条件を満たす必要があります。
受験資格を得る必要がある
介護福祉士になるためには、国家試験に合格して「社会福祉振興・試験センター」へ介護福祉士として登録することが必要です(介護福祉士養成施設を卒業している場合を除く)。
介護福祉士国家試験を受けるためには、次の2つの受験資格要件を満たす必要があります。
- 従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上と実務者研修の修了
- 実務者研修の修了と介護職員基礎演習・喀痰吸引等研修
実務経験を満たすためには、厚生労働省が定める利用者を直接介護する業務に就く必要があります。
例えば生活相談員などの相談援助業務や看護師、調理員などは利用者の介護をするのが主な業務ではありませんので、実務経験の対象になりません。
「実務者研修」は介護福祉士の受験資格を得るために必ず必要な資格です。
「実務者研修」自体は無資格未経験でも受講することができるので、介護の仕事に就く前に受講しておくことも可能です。
試験に受からなければいけない
介護福祉士国家試験は毎年1回開催されます。
介護福祉士国家試験に合格後、所定の事務手続きをすることによってようやく介護福祉士を名乗ることができるのです。
試験は筆記試験と実技試験の2つがあります。
ただし、先ほどご紹介した「実務経験+実務者研修」の受験資格で試験を受ける場合は実技試験は免除になります。
筆記試験は例年1月下旬に実施されており、合格発表は3月下旬となっています。
受験要項は毎年6月下旬頃に発表され、受験申込の受付期間は8月中旬から1ヶ月程度と短期間です。
実務経験証明書を勤務先から作成してもらう必要があるので、余裕を持って申し込み手続きを進めるようにしましょう。
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法令違反の罰金刑全てが該当するわけではない?
欠格事由として「禁固刑や罰金刑に処された場合」とご紹介しましたが、実は全ての法令違反が対象になるわけではありません。
具体的に対象となる罰金刑の法律は、以下の通りです。
- 社会福祉士及び介護福祉士法
- 児童福祉法
- 身体障害者福祉法
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
- 生活保護法
- 社会福祉法
- 児童扶養手当法
- 老人福祉法
- 特別児童扶養手当等の支給に関する法律
- 児童手当法
- 介護保険法
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
- 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律
- 平成二十二年度等における子ども手当の支給に関する法律
- 平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法
- 子ども・子育て支援法
- 国家戦略特別区域法(第十二条の五第十五項及び第十七項から第十九項までの規定に限る。)
- 公認心理師法及び民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律
- 医師法
- 歯科医師法
- 保健師助産師看護師法
- 医療法
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
- 薬剤師法
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法
例えば、事故を起こして道路交通法に違反した場合の罰金刑は介護福祉士の欠格事由に当たりません。
医療や福祉・保育などの法律に関する罰則が欠格事由の対象になります。
介護福祉士と欠格事由のまとめ
ここまで、介護福祉士の欠格事由についてご紹介してきました。
- 介護福祉士の欠格事由とは、介護福祉士として相応しくないと判断される理由のこと
- 欠格事由に該当すると、介護福祉士として登録することが認められない
- 介護福祉士の欠格事由とは、「精神機能障害によって業務ができない場合」「禁固刑や罰金刑に処された場合」「相応しくない行為や秘密の漏洩を犯した場合」の三つ
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。