急速に高齢化が進む日本において、介護タクシーの重要性が高まっています。
なお、介護タクシー事業を始める際には、さまざまな助成金や補助金を利用できます。
本記事では介護タクシーを開業する際の助成金について、以下の点を中心にご紹介します。
- 介護タクシーを開業する際に利用できる助成金
- 介護タクシー開業に必要な費用
介護タクシー開業の助成金の利用のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
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助成金と補助金の違い
助成金と補助金には、実はさほど大きな違いはありません。
どちらも国・自治体・民間会社から事業者に支給されるお金のことで、受給には審査が必要です。
また多くの場合、返済は必要ありません。
では、どこに違いがあるのかというと受け取りやすさにあります。
助成金は、比較的受給しやすいお金です。
受給審査はあるものの、要件さえ満たしていれば基本的に誰でも合格できます。
要件とはたとえば、従業員数や業種などがあります。
さらに申請はほぼ年間を通して可能であるため、チャンスが多いのも特徴です。
一方、補助金は、やや受け取りにくいお金です。
たとえば、募集期間が約1カ月程度と比較的短いため申請しそびれることも少なくありません。
また、補助金は予算・採択件数にも制限があるため、競争率が高くなる傾向があります。
つまり受給条件を満たしていても、抽選に外れたら補助金は受給できません。
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介護タクシーを開業するときの助成金制度
介護タクシーを開業する際に利用できる助成金について解説します。
まず前提として介護タクシーは、要介護者や身体が不自由な方のためのタクシーです。
多くの場合、車両には車いすやストレッチャーごと乗車できます。
また運転手は、車両の運転だけでなく利用者の介助もおこないます。
そのため介護タクシーの運転手には、介護系の資格取得が求められることもあります。
つまり介護タクシーを開業・運営していくには、人材の雇用・育成や環境整備のためにある程度の費用がかかります。
事業者の金銭的負担を軽減するための制度が、介護タクシーに関する助成金です。
介護タクシーを開業する際に利用できる助成金は、以下の2つがあります。
地域雇用開発助成金
開業にあたり、地域住民を雇用する際に支給される助成金です。
支給金額は、設備費用や労働者の増加人数に応じて変動します。
地域雇用開発助成金は、すべての事業者が利用できるわけではありません。
利用対象者は、雇用機会が著しく不足している地域の事業者です。
たとえば東京都内の三宅村や八丈町など、いわゆる過疎地域が利用対象です。
【助成金額】
48万~960万(設備費用や労働者増加数に応じる)
【主な支給要件】
- 雇い入れに関する計画書を労働局長に提出する
- 施設整備は計画期間内に行う
- 計画期間内に、常時雇用かつ雇用保険の保険者を3名雇い入れる(開業時のみ2名で可)
助成金を受給するには、あらかじめ雇用に関する計画書を地域の労働局長に提出しておく必要があります。
その後は計画書の内容に沿って、計画期間内に設備整備や3人の労働者の雇い入れを行います。
ただし、新たに開業する場合、雇用人数は2人でもかまいません。
キャリアアップ助成金
非正規雇用者のキャリアアップのために利用できる助成金です。
たとえば、非正規雇用者の正社員登用や、非正規・正規雇用者間の給与・待遇の差の是正を実施した場合に申請できます。
キャリアアップ助成金には、以下の7つのコースがあります。
- 正社員化コース
- 賃金規定等改正コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等共通化コース
- 諸手当制度等共通化コース
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
具体的な助成金額や支給要件は、コースによって異なります。
【助成金額】
1万9000円~57万円
【各コース共通の支給要件】
- 雇用保険適用の事業所の事業主であること
- 雇用保険適用の事業所ごとに、キャリアアップ管理者を設置していること
- キャリアアップ計画書を地域の労働局長に提出すること
キャリアアップ管理者とは、キャリアアップに関する知識を有し実際に社内のキャリアアップ制度を管理していく方です。
キャリアアップ管理者は、助成金を申請する事業所の雇用者から選出されます。
一事業所につき一人の設置が必要で、一人が複数の事業所を兼任することはできません。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護タクシー向けの補助金制度
介護タクシーの開業・運営に利用できる補助金を紹介します。
地域公共交通確保維持改善事業費補助金
介護タクシー事業者が、車両や設備をバリアフリー化するために利用できる補助金です。
たとえば、福祉車両の導入などに利用できます。
【対象経費】
- 車両・設備のバリアフリー化
- 福祉車両の導入
【支給額】
車両費の1/3(上限あり)
支給額は、車両の本体価格の1/3です。
ただし、上限額は60万です。
つまり210万円の車両を購入しても、支給額は最大で60万円となります。
ただし、リフト装置つきの車両に限り、支給上限額は80万円です。
参照元:地域公共交通確保維持改善事業費補助金について 【補助金交付の流れ】 二次
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の生産性向上と、持続的な発展のために利用できる補助金です。
たとえば、業務効率化のための環境整備費や、販路開拓のための資金として利用できます。
具体的な利用例は以下の通りです。
【対象経費】
- ストレッチャーなどの機材購入
- 介護タクシーサービスの宣伝チラシの作成
- 宣伝チラシの配布スタッフのアルバイト代
【支給金額】
取り組みに支給する費用の2/3(上限あり)
支給額は、実際の支出額の2/3です。
ただし、上限額は50万円です。
感染拡大防止対策設備導入補助金
感染症の拡大防止のための環境整備に利用できます。
たとえば、車載用の空気清浄機の購入費や、シートの抗菌処理費などに利用できます。
具体的な利用例は以下の通りです。
【対象経費】
- 空気清浄機・空気清浄モニター
- 低濃度オゾン発生器
- 運転席・乗客席の間の防護板の設置
- シートの抗菌処理
【支給金額】
支出額の1/2(上限なし)
介護タクシーの開業にはいくら必要?
介護タクシーの開業に際し、必要な経費を紹介します。
法人設立費用
介護タクシーとあわせて、介護保険タクシー事業を開業する場合に必要な経費です。
ちなみに、介護タクシーとは介護保険適用外のタクシーサービスです。
たとえば、介護施設に入所している方が外出する際に利用できるのが介護タクシーです。
なぜなら施設入居者は、入居施設の提供サービス以外に介護保険を利用できないからです。
一方、介護保険タクシーは介護保険適用のタクシーサービスです。
主に在宅介護の方の外出に利用されます。
介護保険タクシーを開業する場合は、法人資格の取得が必要です。
法人資格取得のための資格は、法人の種類によって異なります。
- NPO法人:数千円~1万円程度
- 株式会社:15~16万円程度
- 合同会社:10万円程度
車両関係費
車両の購入費用と車庫代です。
介護タクシーに利用される車両は、軽自動車からリフト付きのワゴンまでさまざまです。
購入費用は、車種や装備、新車・中古車によって大きく変動します。
車庫代に関しても、広さや立地によってバラつきがみられます。
- 軽自動車の車両購入費:100~180万円程度
- リフト付きワゴン車の車両購入費:300万~600万円程度
- 車庫代:数千円~数万円
事業所の準備費用
事業所の家賃などです。
自宅を事業所にする場合は、ほとんど費用はかかりません。
一方テナントを借りる場合は、家賃や維持費などがかかります。
- 自宅を事業所にする場合:無料が多い
- テナント利用の場合:10万円程度
なお、介護タクシーの事業所は以下の要件を満たす必要があります。
- 3年以上の使用権
- 事務所・休憩または仮眠室の併設
資格取得費用
介護タクシーなどの運転代行業務に従事するには、普通二種免許の取得が必要です。
普通二種免許の講習料金・取得費用は20万円が相場です。
場合によっては、介護系の資格取得が必要な場合もあります。
たとえば「介護職員初任者研修資格」などが代表的です。
- 普通二種免許の取得費用…20万円程度
- 介護職員初任者研修資格の取得費用…5~10万円程度
管理費用
いわゆる消耗品費や光熱費用です。
具体的な金額は事業所によって大きく異なりますが、約20~30万円が相場です。
【管理費用の例】
- 水道代
- 電気代
- 通信費(インターネットなど)
- 設備費用(電話・机・いす・パソコンなど)
- 事務用品・消耗品(FAX紙・印鑑・名刺・カタログなど)
運転資金
人件費・燃料代・修繕費です。
とくに人件費、すなわち給与の確実な支給は、事業存続のうえでも必要です。
給与の設定は事業所によって異なります。
相場は、ひと月あたり一人につき20万~25万円程度です。
介護タクシーの将来性
高齢化している日本において、介護タクシーは今後、ますます需要が高まります。
実際に厚生労働省は、2025年には、75歳以上の人口が全体人口の25%を占めると発表しています。
高齢者の多くは、日常生活に何らかの介護を必要とします。
たとえば高齢の方は足腰が弱くなるため、病院への通院も一人では難しいでしょう。
高齢の方の重要な足となるのが、介護タクシーです。
介護タクシーは単なる移動だけでなく、乗り降りの介助や、病院への付き添いを行います。
身体が不自由な方や、認知症によって一人での通院に不安がある方にも、なにかと心強いサービスです。
介護タクシーがとくに必要とされるのは、公共交通機関が十分でない過疎地域などです。
あるいは独居老人の増加に伴い、今後は大都市圏においても介護タクシーの重要性は増していきます。
参照元:今後の高齢者人口の見通しについて
介護タクシーを開業するときの助成金のまとめ
ここまで、介護タクシー開業の際の助成金についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護タクシーを開業する際に利用できる助成金は「地域雇用開発助成金」や「キャリアアップ助成金」
- 介護タクシー開業に必要な費用は、「設立費用」「車両関係費」「人件費などの管理費用」「資格取得費用」など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。