末期がんは介護保険の特定疾病に位置づけられています。
その中で、どのような状態かという定義が定められていることはご存じでしょうか?
家族が末期がんを患っており、介護保険が適用される末期がんの定義を知りたい方も多いです。
今回は、介護保険と末期がんについて以下の点を中心にお伝えしていきます。
- 介護保険とは
- 特定疾病における末期がんの定義
- 末期がん以外の特定疾病
少しでも参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護保険とは?
末期がんの定義の前に、まず介護保険とは何か、というところから解説していきます。
介護保険とは、介護が必要な方のために、介護に関する費用を給付してくれる保険制度のことをいいます。
介護の必要な方を社会全体で支えようという考え方のもと、2000年から施行されている保険制度です。
介護保険には、第一号被保険者と第二被保険者の2種類があります。
次に、それぞれの対象者について解説していきます。
第一号被保険者
第一被保険者は、65歳以上の者とされています。
介護保険の支給は、要支援・要介護の認定がおりれば、どんな原因でも受けることができます。
第二号被保険者
第二被保険者は、40歳~64歳までの医療保険加入者です。
介護保険の受給条件には、末期がんや関節リウマチなど加齢に起因する疾患(特定疾患)によって要支援・要介護状態であるという診断が必要となっています。
以下の記事では介護保険法について詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
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特定疾病内の末期がんとは?
ここでは、がんとはどんな病気か、介護保険の特定疾患で言われる末期がんとはどんな状態のことを言うのかについて解説していきます。
がんとは
がんは、悪性腫瘍ともいわれています。
腫瘍は、体の中にできた細胞の塊が無秩序に増えていくものです。
その中でも細胞の奥にまで入り込んだり(浸潤)、血液などにのってあちこちに飛んでしまったりする(転移)もののことを悪性腫瘍といいます。
がんには種類があり、固形がん(癌腫、肉腫)や、血液のがんなどがあります。
がんで有名なものは、固形がんでは肺がん、胃がん、乳がん、子宮がん、大腸がん、骨肉腫などがあり、血液のがんでは白血病や悪性リンパ腫などです。
末期がんとは
がん(悪性腫瘍)は、ステージ0からステージⅣまでの5つに分類されます。
ステージの分類は以下の通りです。
ステージ0 | がんが上皮細胞内にとどまり、リンパ節への転移がない |
ステージⅠ | がん細胞が少しずつ広がっているが、筋肉層でとどまっており、リンパ節への転移がない |
ステージⅡ | リンパ節への転移はないが、筋肉層を超え浸潤している。もしくは癌腫瘍は広がっていないが、リンパ節へ若干の転移がある |
ステージⅢ | がん細胞が浸潤しており、リンパ節への転移もある |
ステージⅣ | がんが原発巣を超えて他の臓器に転移している |
以前は末期がんと言われるものは、ステージⅣのがんが原発巣を超えて臓器に転移している状態のことでした。
しかし、最近では医療が発達し、がんは治る病気になってきています。
そのため、医療現場で「末期がん」という名前は使われなくなってきました。
特定疾病における末期がんの定義とは
前述したように、医療現場では末期がんという言葉は使われなくなってきています。
しかし、介護保険では特定疾患の位置づけのために、末期がんの定義が使われています。
特定疾病におけるがんの定義は以下のものをすべて満たした状態をいいます。
- 自立増殖性:がん自体が他の器官などの影響を受けずに、無制限に自律的に増殖する
- 浸潤性:がん細胞がはじめに発生したところから、他の組織にまで進行、進展して浸潤している
- 転移性:血液やリンパ液にがん細胞が乗って、遠くの臓器や全身にまで進行、進展しており転移している
- 致死性:上記3つによって、何かしら治療をしないと死に至る
なお、厚生労働省では、特定疾病における「がんの末期」の定義は以下のように位置づけられています。
「『治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態』と定義することが適当」
(引用:厚生労働省)
末期がんの診断基準
末期がんの定義について、解説してきました。
次に、末期がんの診断基準についても見ていきます。
介護保険における末期がんの診断基準は、厚生労働省からは以下のように示されています。
「以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態にあるもの。」
- 組織診断または細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの
- 組織診断または細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診断など)等で進行性の性質を示すもの
(引用:厚生労働省)
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
特定疾病には他の病気もある?
特定疾病には全部で16種類あり、末期がんを除くと他に15種類の病気が含まれます。
末期がん以外の15種類の特定疾患については、以下のようになります。
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
それぞれの病気について簡単に解説していきます。
関節リウマチ
膠原病(こうげんびょう)の一つです。
自己免疫が主に自らの手足を傷つけ、関節痛や関節の変形をもたらす炎症性自己免疫疾患を指します。
筋萎縮性側索硬化症
重篤な筋肉の萎縮と低下をもたらす、神経変性疾患のことをいいます。
発症から3〜5年で呼吸筋麻痺をきたす進行が早い疾患です。
治癒のための有効的な治療法は、まだ解明されていません。
後縦靱帯骨化症
後縦靭帯が骨化する疾患です。
脊椎椎体後面を上下に走る後縦靭帯の骨化により、脊柱管が狭くなり神経が圧迫されて、知覚障害や運動障害が現れます。
骨折を伴う骨粗鬆症
骨形成より骨吸収のスピードの方が早くなり、骨の中にたくさんの穴ができ骨がスカスカな状態になることをいいます。
骨折の原因になるほか、背中が曲がることによる骨の変形や骨性の痛みが現れます。
骨粗鬆症の骨折の場合、日常的な負荷によって骨折を生じてしまうケースが多いです。
初老期における認知症
40歳から64歳までに生じる認知症で、若年性認知症ともいわれる疾患です。
アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、クロイツフェルトヤコブ病などがあります。
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病について以下で簡単にご紹介します。
進行性核上性麻痺
脳の基底核、脳幹、小脳の神経細胞が減少し、転びやすい、下の方が見えにくい、認知症、しゃべりにくい、飲みこみにくいといった症状が出現する疾患です。
大脳基底核変性症
上記進行性核上性麻痺にパーキンソン症状が加わった疾患です。
パーキンソン病
脳内の中脳にある黒質という神経細胞の減少により、ふるえや動作緩慢、小刻み歩行などの症状が現れる疾患です。
脊髄小脳変性症
脳の小脳という部分の病気で、神経疾患の一つです。
歩行時のふらつきや手の震え、ろれつが回らないなどの症状が現れます。
脊柱管狭窄症
神経をかこっている脊柱管が狭くなり、神経を圧迫する疾患です。
歩行しているとだんだん足が痺れてきたり、痛くなったりする症状が出ます(間欠性跛)。
休んでいると症状が消えることが特徴です。
早老症
体細胞分裂の染色体に異常があり、加齢を促進してしまう疾患です。
多系統萎縮症
多系統萎縮症は、「線条体黒質変性症」「オリーブ橋小脳萎縮症」「シャイ・ドレーガー症候群」の3つの病気の総称です。
それぞれ簡単に説明します。
線条体黒質変性症
はじめはパーキンソン病の症状に似ていますが、やがてふらつきや排尿障害が出てきて、抗パーキンソン薬も効きにくくなる疾患です。
オリーブ橋小脳萎縮症
起立歩行のふらつきなど小脳症状から始まる疾患です。
中年以降に発病し、遺伝性はありません。
シャイ・ドレーガー症候群
尿失禁や失神を起こすような自律神経障害で発病します。
多系統萎縮症の病気経過の前半の症状がこの症状の場合、特別に区別されます。
線条体黒質変性症もオリーブ橋小脳萎縮症も進行すると自律神経障害を伴います。
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
糖尿病を起因とする神経障害(しびれなど)、腎症(腎不全)、網膜症の合併症を指します。
脳血管疾患
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の代表的な脳の疾患です。
閉塞性動脈硬化症
動脈硬化症は全身疾患ですが、症状に伴って腹部大動脈抹消側、四肢の主幹動脈、下肢の動脈に閉塞がみられます。
間欠性跛行(かんけつせいはこう)、安静時痛、潰瘍(かいよう)、壊死などの状態に該当する場合に閉塞性動脈硬化症といわれます。
慢性閉塞性肺疾患
慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎の状態に該当する状態を指します。
両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
両膝関節または股関節が何らかの原因で変形し、痛みなどが出ている状態です。
末期がんの場合は対応が早くなる?
介護保険でのサービス利用時には、ケアプランが必要になります。
ケアプランは基本的に介護保険の申請をし、認定が下りた後でないと作成ができません。
しかし、申請から認定が下りるまでには一定の時間がかかります。
末期がんの場合、状態が急速に悪化する可能性もあり、介護保険の認定が下りる前に介護保険サービスが必要になってくる可能性もあります。
そのため、末期がんの場合は申請日当日に認定調査を行い、直近の認定審査会で二次判定をするなど、迅速に要介護認定が行われます。
また、末期がんの場合は申請から認定段階でも暫定のケアプランが作成できるようになっています。
以前は「末期がん」との記載が必要でしたが、患者が末期がんに該当するのかの判断が難しく、医師の意見書に記載がしづらいという理由で介護保険への利用が進みませんでした。
しかし現在は「がん」との記載でも、患者が末期がんの定義にある「医学的知見で回復の見込みがない状態の場合」は、受理をしてもいいということになっています。
このように、介護保険サービス利用に急を要する場合は、早い対応を行なってくれます。
回復の見込みがない場合のがんの場合は、主治医の先生に確認してみましょう。
介護保険と末期がんの定義のまとめ
ここまで特定疾患の末期がんについての情報や、介護保険と末期がんの定義などを中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護保険とは、介護を必要とする方のためにその費用を給付してくれる保険制度
- 特定疾病における末期がんの定義は、「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態」
- 末期がん以外の特定疾病は15種類あり、関節リウマチや筋萎縮性側索硬化症、初老期における認知症などが該当する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。