超高齢社会を歩む日本になくてはならないのが介護保険法です。
介護保険法は、3年ごとに改正されるため、内容の理解が大変です。
介護保険法とは、どのような内容や特徴なのでしょうか?
本記事では、介護保険法について以下の点を中心にご紹介します。
- 介護保険法の仕組み
- 老人福祉法との違い
- 介護保険制度について
介護保険法に関して理解を深めるためにも、ご参考いただけますと幸いです。
是非最後までご覧ください。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
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変化し続ける介護保険法とは?
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介護保険法は、超高齢社会へと突入した日本においてなくてはならない制度の一つです。
介護保険法は、加齢や疾病などが原因となり要介護状態となった方が、住み慣れた地域で日常生活が送れるように社会全体で支え合っていくための制度です。
介護や支援が必要となった方に対して、かかった費用の一部給付を行います。
以下、介護保険法について説明します。
介護保険法の目的
介護保険法の目的とは、介護を必要とする方がその人らしい自立した生活を送っていけるように支援することです。
介護保険法の原文には目的として、以下の内容が記載されています。
『この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。』
介護保険法の仕組み
介護保険法は、社会保険の一つとして位置づけられており、40歳以上の被保険者によって納められる保険料と、国・都道府県・市町村からの公費によって運営されています。
運営主体は市区町村が担当し、被保険者が利用した介護サービス費用の7~9割を保険者が負担します。
要介護状態となっても、金銭的負担を抑えながら手厚い介護サービスを受けられるのが介護保険法の特徴です。
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介護保険法が改正され続ける理由
介護保険法は、高齢者介護の現状を踏まえ、社会のニーズに合わせた制度とするべく3年ごとに改正されます。
2017年の改正では、介護保険の持続可能性や制度を利用する人々の公平性に重きがおかれ、高所得層の自己負担額が3割へ引き上げられました。
直近では2021年4月に介護保険法が改正され、高額介護サービス費支給制度の見直しが行われました。
詳しい内容については後半で説明しますが、少子高齢化による介護財源圧迫への対策として、年々介護サービス利用料金や自己負担額などの見直しが行われています。
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老人福祉法とはどう違う?
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日本には介護保険法が制定される以前の法律として、老人福祉法がありました。
介護保険法が誕生した背景を知るためにも、老人福祉法への理解は重要となります。
以下、老人福祉法について介護保険法との違いも踏まえながら説明します。
老人福祉法とは?
老人福祉法は、日本の高齢者人口の増加を受け、高齢者を支える法律として1963年に施行されました。
老人福祉法は、助けが必要な方を公費によって支えることを目的としています。
さらに、基本理念として以下の記載があります。
『老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。』
『老人は、老齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して、常に心身の健康を保持し、又は、その知識と経験を活用して、社会的活動に参加するように努めるものとする。』(厚生労働省ホームページより引用)
また、老人福祉法では都道府県、市区町村への福祉計画作成義務や、7つの老人福祉施設と6つの老人居宅生活支援事業を規定しています。
老人福祉施設
老人福祉施設は以下の7つです。
- 老人デイサービスセンター
- 老人短期入所施設
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 老人福祉センター
- 老人介護支援センター
老人居宅生活支援事業
老人居宅生活支援事業は以下の6つです。
- 老人居宅介護等事業
- 老人デイサービス事業
- 老人短期入所事業
- 小規模多機能型居宅介護事業
- 認知症対応型老人共同生活援助事業
- 複合型サービス福祉事業
老人福祉法と介護保険法の違いは?
老人福祉法は1963年7月に、介護保険はそのあと2000年4月に施行された法律であることから、時代背景や目的には違いがあります。
まず制度誕生の背景ですが、老人福祉法は高度経済成長における都市化や核家族化が要因となり、家族同士で支え合う互助機能が低下し、地方に住む高齢者の介護問題が背景にありました。
対する介護保険法は、認知症や高齢者介護への認識が高まる中、高齢化が進んだことで社会保障費が膨れ上がり財源を圧迫するようになりました。
さらに、バブルの崩壊から経済の停滞が起こったことを背景に誕生したのが制定の流れです。
両法の大きな違いとしては、高齢者介護を支える仕組みが公助と互助で異なる点です。
老人福祉法では、公費をもとに国が措置として支援をする公助の形式となります。
介護保険法では保険料を徴収し社会保障として給付するため、社会全体で支え合う互助の形式となります。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護保険法が支える介護保険制度とは?
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介護保険法のもと市区町村で運営されている介護保険制度は、多くの要介護者を支えている社会保険制度です。
以下、介護保険制度について説明します。
介護保険の対象者
介護保険の対象者には第1号被保険者と第2号被保険者の2種類があります。
第1号被保険者は、65歳以上の高齢者の方です。
第2号被保険者は、40歳以上65歳未満の方で健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険に加入している方です。
出典:厚生労働省「介護保険制度について」
介護保険で利用できるサービスとは?
介護保険で利用できるサービスには、以下の3つがあります。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 地域密着型サービス
居宅サービスは、在宅生活を行ううえで欠かせないサービスです。
代表的な居宅サービス
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 通所介護
- 通所リハビリ
- 短期入所生活介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売など
施設サービスはその名の通り、施設へ入所して介護を受けられるサービスです。
代表的な施設には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあります。
地域密着型サービスは、居住地とサービス事業所が同一市町村の場合に利用できるサービスです。
代表的なサービス
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 小規模多機能居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
介護保険の利用には要介護認定が必要?
介護保険の利用には要介護認定が必要です。
要介護認定は要支援1~2、要介護1~5までの認定があり、市区町村ごとの指定窓口にて申請手続きを行う必要があります。
申請後は自宅にて介護認定調査が実施され、主治医の作成した医師意見書の内容をもとに介護認定審査会にて認定が決められます。
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介護相談窓口の地域包括支援センターとは?
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介護が必要だと感じた場合、地域包括支援センターへ相談することで介護保険制度利用に向け必要な支援を受けられます。
地域包括支援センターは、介護保険法によって地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的としている福祉機関です。
以下、地域包括支援センターについて説明します。
地域包括支援センターで働いている人は?
地域包括支援センターで働いている専門職は、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員です。
配置される常勤職員数は介護保険法により決められており、地域における第1号被保険者(65歳以上の高齢者)の数に応じて異なります。
たとえば、第1号被保険者の数が3,000人~6,000人ごとに、以下の専門職がそれぞれ1名以上配置されます。
- 保健師その他これに準ずる者
- 社会福祉士その他これに準ずる者
- 主任介護支援専門員その他これに準ずる者
その他、要介護認定が要支援1~2の方の介護予防サービス利用計画(介護予防ケアプラン)を作成支援するために介護支援専門員がいます。
地域包括支援センターの役割は?
地域包括支援センターは地域における保険、医療、介護、福祉に関する支援を行う福祉機関です。
前述の通り、介護保険法で定められた地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、関係機関と連携をはかりながら地域住民への支援を行います。
実際の支援内容は、要支援認定者への介護予防ケアマネジメント、高齢者や障害者の金銭問題や虐待問題に対応する権利擁護事業などです。
また、生活が困難な方の支援を行うために地域の専門職が集う地域ケア会議の開催や、認知症介護に携わる家族が専門家と相談できる機会として、認知症カフェの開催も行います。
介護相談ならまずは地域包括支援センターへ
いざ家族の介護が必要になったとしても、どのように制度やサービス利用をしたらよいか、誰に相談すべきかわからなくなってしまうことがあるかもしれません。
そんな時は地域包括支援センターへ相談することで、必要な支援を受けることができます。
相談の内容に応じ、各専門職が支援をしてくれるので安心です。
たとえば、介護保険制度の利用方法がわからなければ、制度の概要説明から代行申請まで行ってもらえます。
実際の生活における課題や問題点の明確化や、必要な対応の提案、利用制度やサービスに応じて関係機関と連絡をとりながら橋渡しもしてくれます。
このように介護の相談先に迷った場合には、地域包括支援センターへ相談するのがおすすめです。
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2021年施行の介護保険法のポイントは?
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2021年4月より介護保険法が改正され施行されています。
以下、介護保険法を改正するポイントやもたらされる影響について説明します。
改正されたポイントは?
今回改正された介護保険法のポイントとして以下の内容があげられます。
- 感染症や災害への対応力強化
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援、重度化防止の取組の推進
- 介護人材の確保、介護現場の革新
- 制度の安定性、持続可能性の確保
改正によってどんな影響がある?
改正による被保険者への影響として、高額介護サービス費支給制度の内容変更があげられます。
高額介護サービス費支給制度については、これまで負担上限が44,400円となっていましたが、年収770万円以上の方の上限が93,000円、年収1,160万円以上の方の上限は140,100円に変更されました。
このような負担額の引き上げは被保険者にとってはマイナスな印象を受けますが、前述した通り介護保険法は社会全体で支え合う互助を基盤とした仕組みであり、制度の持続には必要な対策といえます。
介護保険法のまとめ
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ここまで介護保険法の特徴や、その内容・関連サービスを中心にお伝えしてきました。
要点は以下の通りです。
- 介護保険法は、40歳以上の被保険者が納める保険料と、国・都道府県・市町村からの公費(年金)によって運営されている
- 介護保険法は互助によって、老人福祉法は公助によって高齢者介護を支えている
- 介護保険制度によって居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスを利用できる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。