炭水化物は3大栄養素の1つです。
炭水化物は体のエネルギー源となる糖質と、エネルギー源にはならないものの、さまざまな健康効果を持つ食物繊維に分類されます。
炭水化物と食物繊維の関係はどのようなものなのでしょうか?
本記事では、炭水化物と食物繊維について以下の点を中心にご紹介します。
- 炭水化物の食事摂取基準は
- 食物繊維の理想値は
- 日本人の摂取量は
- 健康効果について
- 摂取上の留意点
炭水化物と食物繊維について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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炭水化物と食物繊維の関係は?
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炭水化物と食物繊維はどのような関係性があるのでしょうか?
2つの栄養素について詳しく説明します。
炭水化物とは
炭水化物は脂質やたんぱく質と並ぶ3大栄養素の1つで、炭素・水素・酸素の3種の元素からなる化合物です。
炭水化物のうち消化しやすいものが糖質で、消化しにくいものが食物繊維に分類されます。
同じ炭水化物で同じ元素から成り立っていても、化学的な結合の仕方が異なるため、体への作用は異なります。
炭水化物が3大栄養素に分類されるのは、エネルギーを産み出す糖質の性質によるものです。
炭水化物について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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食物繊維とは
食物繊維は人の消化酵素で分解されず、エネルギー源にはなりませんが、さまざまな健康効果を持っています。
食物繊維は水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の働きは次のとおりです。
- 水溶性食物繊維:空腹感を抑制したり血糖値の急激な上昇を抑えたりする
- 不溶性食物繊維:胃や腸で水分を吸収して便の量を増やして便通を促進する
なお水溶性食物繊維、不溶性食物繊維ともに腸内環境を整える働きがあります。
食物繊維を含む食べ物について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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炭水化物の食事摂取基準
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炭水化物の食事摂取基準は、エネルギー源としての働きに着目して設定されています。
エネルギー源となるのは糖質なので、炭水化物の食事摂取基準は、糖質の食事摂取基準と同じと考えてよいです。
炭水化物の食事摂取基準は「%エネルギー」という指標で表現されます。
必要なエネルギーのうち、取得する分は何%が理想的かという指標です。
例えば30~49歳の男女の場合を例に挙げると、炭水化物・たんぱく質・脂質の摂取目標値は、それぞれ次のように設定されています。
- 炭水化物:50~65%
- たんぱく質:13~20%
- 脂質:20~30%
目標値が意味するのは、エネルギーを炭水化物・たんぱく質・脂質からバランスよく取得することが大切であるということです。
炭水化物の目標値である50~65%は1歳以上の男女で違いはなく、妊婦や授乳婦でも変化しません。
なお0歳児の目標値は設定されていません。
実際に、炭水化物を何g摂取するのがよいのか把握したいときは、炭水化物1gあたり4kcalのエネルギーを産生するという知識を踏まえ、1日のエネルギー必要量から計算すると良いでしょう。
一例を挙げると、30~49歳で身体活動レベルが普通の男性では、1日あたりに必要なエネルギー量は2700kcalです。
炭水化物から取得すべきエネルギー量は50~65%なので、1350~1755kcalになります。
実際の摂取量に換算すると、337~438g(小数点以下切り捨て)です。
炭水化物の摂取量について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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食物繊維の食事摂取基準
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日本人の食事摂取基準(2020年版)によれば、18歳以上の成人における1日あたりの食物繊維摂取量の目標値は以下のとおりです。
年齢(歳) | 男性の摂取目標量(g/日) | 女性の摂取目標量(g/日) |
18~64 | 21以上 | 17以上 |
65以上 | 20以上 | 17以上 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.165
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日本人の摂取量は炭水化物も食物繊維も減っている
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日本人の炭水化物と食物繊維の摂取量は、長期的に見ると減っています。
国立健康・栄養研究所のホームページで、炭水化物の摂取量を1949年~2019年まで確認できます。
1歳以上の男女に関する、1日あたりの炭水化物摂取量の平均値における推移は以下の通りです。
年 | 摂取量(g) |
1950 | 418 |
1960 | 398.8 |
1970 | 368.3 |
1980 | 313 |
1990 | 287 |
2000 | 266.2 |
2010 | 257.6 |
2019 | 248.3 |
出典:国立健康・栄養研究所「主な健康指標の経年変化:栄養摂取状況調査」
続いて、食物繊維の1日あたりの摂取量の推移については、2002年に出された論文で、1950年~2000年までの数字が報告されています。
年 | 摂取量(g) |
1950 | 20.5 |
1960 | 18.8 |
1970 | 14.9 |
1980 | 15.2 |
1990 | 14.4 |
2000 | 15.0 |
出典:内閣府「日本人における食物繊維摂取量(平均値)の推移」
炭水化物・食物繊維をバランス良く摂る必要性
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炭水化物(糖質)はエネルギー源ですが、消費エネルギーを超えて摂取してしまうと、肥満につながるので要注意です。
それゆえ栄養管理の観点からは、消費エネルギーに合わせて、糖質の摂取量をコントロールすべきという考え方になります。
一方で食物繊維は、研究論文によると体重のコントロールを含め、血中総コレステロールや収縮期血圧、空腹時血糖などの値を改善させるという報告があります。
よって積極的に摂取すべき栄養素と考えられているのです。
糖質は過多にならないように、食物繊維を積極的に摂取していくと考えると、食品のなかの糖質と食物繊維の量を意識することが重要です。
例えば、主食を白米から玄米に変えた例で考えてみましょう。
白米と玄米では糖質の量はほとんど変わりませんが、含まれている食物繊維の量は玄米のほうが4~5倍多いです。
そのため、同じ茶碗1杯の白米と玄米を食べたときに、摂取する糖質の量は変わりませんが、食物繊維の量は4~5倍も変わってしまいます。
栄養素の摂取効率が違うわけです。
白米や甘味飲料、酒類などの炭水化物(糖質)はエネルギーを摂取できても、ミネラルやビタミン、食物繊維などは少なくバランスが良くありません。
したがって、炭水化物(糖質)を摂取するうえでは質が求められます。
同様にパンに関しては、食パンをライ麦パンや全粒粉入りパンに替えることで、摂取エネルギーを変えずに、摂取できる食物繊維の量を増やすことが可能です。
炭水化物と糖質の違いについて詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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糖質制限ダイエット中は食物繊維不足に注意
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糖質制限は、糖質の摂取(エネルギーの摂取)をコントロールして、ダイエットする方法です。
しかし、糖質制限中でも食物繊維は積極的に摂取すべきであることに変わりありません。
理解せずに行ってしまうと、糖質制限を目指しながら食物繊維の摂取制限につながってしまいかねません。
よって、食品のなかの炭水化物の量の多さではなく、炭水化物を糖質と食物繊維に分解し、それぞれの量が多いか少ないかということを把握したほうが良いです。
糖質制限ダイエットをしているなら、糖質が低く食物繊維が豊富な食品を摂取することを目指しましょう。
そのような食品として、大豆(ゆば、納豆)や海藻(ひじき、のり、わかめ)が挙げられます。
食物繊維の日本人の摂取量は年々減少傾向
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国立健康・栄養研究所のホームページで、2000年以降の食物繊維量も確認できます。
1950年頃は、日本人の食物繊維の摂取量は、1人あたり1日20gを超えていました。
しかし1970年には15g前後になり、それ以降は2019年までほぼ横ばいという結果です。
なお、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、アメリカ・カナダでの基準を踏まえ、成人では1日あたり24g以上の食物繊維の摂取が理想の値とされています。
欧米での研究において、1日あたり24g以上の食物繊維を摂取することで、心筋梗塞や脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスク低下が見られたという報告があります。
1日あたり24g以上の摂取が理想であるものの、食事摂取基準において18~64歳の男性で21g以上、18~64歳の女性で18g以上という数値にしているのは、理由があります。
実際の食物繊維の摂取量が理想よりかなり下回っていたため、現実的な目標設定にしたということです。
多くの日本人において、食物繊維の摂取量が理想値をかなり下回っています。
白米を玄米に、食パンをライ麦パンや全粒粉入りパンに替えるなどして、食物繊維の効率的な摂取を心掛けたいところです。
出典:国立健康・栄養研究所「栄養素等摂取量」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」p.156
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炭水化物と食物繊維のまとめ
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ここまで、炭水化物と食物繊維の関係についてお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 体内で必要なエネルギーの50~65%を炭水化物から摂取することが目標
- 食物繊維は、成人で1日あたり24g以上の摂取が理想
- 1950年からの推移をみると、炭水化物や食物繊維の摂取量は減っている
- 食物繊維の積極的摂取で、心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病の発症リスクが低下する
- ダイエットのために糖質制限する場合にも、食物繊維は積極的に摂取する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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