パーキンソン病は脳の病気ですが、歩行に特徴があります。
いったいどんな特徴があるのでしょうか?
今回の記事では、パーキンソン病の歩行の特徴を説明したうえで転倒予防の対策についても説明します。
- パーキンソン病の歩行の特徴について
- パーキンソン病の転倒予防の方法について
ぜひ最後までお読みください。
パーキンソン病について知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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パーキンソン病とは
パーキンソン病は、身体が動かしにくくなったり、自分の意思とは無関係に手足がふるえるといった症状が現れる病気です。
原因について順を追って解説します。
まず、脳の黒質という部分の神経細胞が変性・減少してしまいます。
黒質ではドーパミンと呼ばれる神経伝達物質も作っていますが、黒質の変性・減少によりドーパミンも減少してしまいます。
ドーパミンは運動などの指令を次の神経へ伝達する役割を担っているので、ドーパミンの減少により神経伝達がうまくいかなくなります。
これが原因で、身体の動かしにくさ、手足のふるえがパーキンソン病の症状として現れます。
パーキンソン病の代表的な症状は4つあります。
これらの症状は四大症状と呼ばれる運動症状です。
1.安静時振戦(手足がふるえる)
パーキンソン病の初期症状として最も多くみられます。
まず身体の片側に手や足のふるえが生じます。
病状の進行により両側の手足ともふるえることもあります。
何もしていないときにふるえが起こりますが、動いているときは、ふるえが軽くなったり消失したりすることが特徴です。
2.筋固縮(手足の筋肉がこわばる)
手足の筋肉の緊張が高まり、身体がスムーズに動かなくなってしまいます。
パーキンソン病では歯車様固縮が特徴とされています。
ほかの人が検査のために腕を曲げ伸ばしすると、筋肉の抵抗が強くなったり弱くなったりしてスムーズに曲げ伸ばしができません。
この抵抗感の有無がまちまちであるため、歯車のようにギコギコとしていることから歯車様固縮と呼ばれています。
抵抗感、こわばりが続く状態を鉛管現象と呼びます。
3.無動・動作の緩慢(身体の動きがおそくなる)
動作の開始がなかなかできない、また、動作が遅くなってしまう症状です。
歩行を始めようと考えても最初の一歩が出るまでに時間がかかってしまったり、寝返りができなくなってしまったりします。
4.姿勢反射障害(倒れやすくなる)
転びそうになっても、反射的に姿勢を立て直すことができずに転びやすくなってしまう症状です。
本来人間の身体は、身体が傾いたときには反射により倒れないように姿勢を調節する機能があります。
しかし、姿勢反射障害が進行すると座っていてもまっすぐ座ることができず斜めに傾いたり、前や後ろに倒れてしまいます。
これまで説明した症状は運動症状と呼ばれるものですが、他にも非運動症状と呼ばれるものがあります。
例えば自律神経症状といって、便秘や頻尿、立ちくらみなどの症状がみられることもあります。
パーキンソン病の症状について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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パーキンソン病患者の歩行の特徴
四大症状によって、パーキンソン病患者の歩行には様々な歩行障害が出現します。
また全ての歩行障害は、本人の焦りや恐怖心などの精神面が影響して症状が強まることがあります。
それでは一つずつ紹介します。
すくみ足になる
歩行の最初の一歩目が踏み出しにくくなる症状です。
すくみ足は、歩行開始・方向転換・狭い場所を通るときに生じると言われています。
平地を歩くときには、すくみ足が生じる方でも、階段や足下に跨ぐものがあるとすくみ足が生じないことがあります。
これを逆説的歩行と呼び、パーキンソン病に特有の歩行だといわれています。
すり足になる
人の正常な歩行は踵から地面につき、つま先は最後につくのですが、パーキンソン病患者の特徴的な歩行のすり足歩行では、足を床にすって歩くようになります。
すり足歩行で歩くと絨毯の縁などに引っかかり転びやすくなってしまいます。
歩幅が小刻みになる
歩くときに歩幅が狭くなり、その際に腕の振りも小さくなります。
これは小刻み歩行と呼ばれています。
方向転換時に転んでしまう
姿勢反射障害の影響により、方向転換時に転倒しやすくなってしまいます。
これは、方向転換の際には転ばないように体のバランスをとることが大切ですが、姿勢反射障害のためバランスを修正することが難しくなっています。
そのため方向転換の際に転んでしまう方が多くいます。
加速歩行になる
歩いているうちに、前につんのめるような姿勢になり速度がどんどん加速してしまう現象です。
急に小走りのようになり、自分の意思では歩行を止めることができず、壁などにぶつかって止まるか、転んでしまうことがあります。
パーキンソン病の特徴的な立位姿勢には、脊柱が曲がっている前傾姿勢があります。
前傾姿勢は加速歩行を助長させてしまう原因にもなります。
パーキンソン病の筋固縮について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
パーキンソン病の4大症状に含まれる筋固縮は進行に伴い日常生活に支障をきたします。特に「手足が動かしにくい」「歩きにくい」「顔の表情がこわばる」といった症状が自立した生活を困難にします。パーキンソン病の診断を受けた方、筋固縮の[…]
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パーキンソン病患者の歩行の注意点
パーキンソン病によって歩行障害がみられるようになると転倒リスクが高まります。
転倒してケガをすると寝たきりの原因になることがあるため、転倒によってケガをしないように転倒を予防することが大切です。
ここではパーキンソン病患者ご自身が気をつける方法について説明します。
歩幅が小刻み・すり足の場合
つま先が上がらず歩いてしまうため、足を持ち上げるように心がけて歩きましょう。
腕の振りも小さくなってしまうことが多いので、腕を大きく振ることも忘れずに行ってください。
また、踏み出した足が踵から地面につくように意識して歩きましょう。
すくみ足の場合
始めの一歩が出しにくい場合は、「1.2.1.2」と心の中でリズムを取るようにすると、足が出しやすくなることがあります。
その他にも、前に足を出そうと意識するのではなく、まず片方の足を半歩後ろに引いてから、その足を前に出すようにしましょう。
方向転換をする場合
方向転換では体の急激なバランスの変化に対応することが難しく転倒してしまうことがあります。
そのため方向転換をする際には、軸足を中心にして小さく回るのではなく、大きく円を描くようにして回ると良いです。
加速歩行になってしまう場合
歩いているうちに、前傾姿勢が強まり小刻み歩行になってしまうと加速歩行を助長してしまいます。
そのため身体が前傾姿勢にならないように背筋を伸ばして姿勢をまっすぐにしてから焦らないで歩きましょう。
もしも姿勢をまっすぐにすることが難しい場合は歩行車の利用も有効です。
パーキンソン病患者の歩行訓練
パーキンソン病の治療にはさまざまなものがあります。
ここでは歩行訓練についてご紹介します。
歩行訓練は、移動手段としての歩行能力を維持するためだけが目的ではありません。
歩行によって使う手足や体の筋力やバランスの維持を助け、病気の進行予防にもなります。
そのため、パーキンソン病患者さんのリハビリでは、積極的に歩行訓練を行うことが重要です。
パーキンソン病患者さんの歩行は、歩き始めや向きを替える際に、すくみ足や小刻みになりやすいことが特徴です。
足首から体にかけての筋肉が、強く持続的に収縮するためです。
常に筋肉に力が入り、体が一本の棒のように固くなってしまいます。
そのため、
- 体重を前後左右に運ぶことが難しい
- 体を支えるために足が突っ張ってしまう
などの問題があります。
歩行訓練は、固くなった体を以下のように対処しながら行います。
- 歩幅に合わせて横断歩道のような線を引く
- メトロノームや声掛けによってリズムをとる
- 腕を大きく振る
特に、1~2Hz(1秒間に1回~2回の頻度)のリズムに合わせて腕を振ると効果的です。
固くなった筋肉の緊張がほぐれて、健常者のようにリズミカルに歩行が可能となります。
歩行訓練の際には積極的に行っていきましょう。
出典:外山ほか『すくみ足、小刻み歩行を呈するパーキンソン病患者に対する歩行訓練について』
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パーキンソン病患者の歩行の介助
パーキンソン病患者の転倒は本人が気をつけることが大切ですが、その他にも本人が住む部屋の環境を整えたり、歩行を助けたりと介助する側が工夫をすることで転倒予防が可能になります。
環境を整える
パーキンソン病患者は足が上がりにくいため、つまずいて転んでしまうことが多くあります。
したがって部屋を歩いていてつまずかないような部屋作りをしましょう。
例えば、絨毯やマットを敷かない・電気コードを動線上に出さない・スリッパをはかない・スロープを設置して小さい段差を解消することなどがあります。
他にも歩行時にいつでもつかまれる場所を用意すると良いといわれています。
これはバランスを崩してしまったときに支えになることに加えて、バランスを崩してもつかまれる場所があるから大丈夫だと患者自身の恐怖心を軽減することができるからです。
また方向転換に苦手意識があるため、方向転換をしなくても済むように部屋の動線を工夫することも大切です。
特に、通路に物を置かない・家具の配置を変更することなどが効果的です。
転んでしまったときのことを考え、家具の角にクッションテープを貼り、体がぶつかってしまってもケガが最小限で済むようにすると良いでしょう。
家族も対応する
パーキンソン病患者が一人で歩くことが大変なときは手助けしてあげましょう。
その際の歩行の手助けでは、当人の左右どちらかの脇から手を取り体を支えます。
そして患者の体がまっすぐになるようにして手助けをしましょう。
パーキンソン病の患者は前傾姿勢になると、加速歩行になりやすくなってしまいます。
そのため歩行の手助けの際には、体をまっすぐに支えてあげることを意識すると良いでしょう。
また、パーキンソン病には運動症状だけではなく非運動症状もあります。
非運動症状の中でも注意機能などの認知面に弱さが見られることがあります。
注意機能が低下すると、歩きながら会話をする・荷物を持って歩くなどの二つのことを同時に行うことが難しくなります。
そのため手助けをしているときは、本人が歩くことに集中できるように工夫しましょう。
例えば、荷物を持たせない・過度に話しかけないなどの工夫があります。
その他にもパーキンソン病患者は、焦りなどの精神面の作用が歩行に影響するといわれています。
不安や恐怖、焦りは転倒リスクを高めてしまう原因になるため、本人に安心して歩いてもらえるように、急かさないようにしたり、優しく声を掛けたりするなどの工夫をしましょう。
パーキンソン病のリハビリについて詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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パーキンソン病患者の歩行の補助具
パーキンソン病患者の方が利用可能な歩行補助具について、歩行器と歩行補助杖をご紹介します。
歩行器
パーキンソン病患者の方は体重の移動が苦手です。
そのため、体重を預けて使える歩行器は安全性が高いといえます。
特に、前方への突進に対応できる機能が付いた歩行器は有効です。
- 抑速ブレーキ付き歩行器:車輪にブレーキの強さを調節できるつまみがある
- 電動アシスト歩行器:上り坂でパワーを発揮し、下り坂でブレーキがかかる
などの安全性が確保された歩行器があります。
歩行補助杖
歩行補助杖は地面との接地面が1つのもの(T字杖)か、複数のもの(4点杖)があります。
- T字杖:地面との接地面が1つであるため、杖の支持力は小さいが、不整地でも使いやすい
- 4点杖:支持力が強く、足の筋力が弱い場合に頼りになるが、不整地には対応しにくい
などそれぞれ特徴があります。
また、杖には足元に障害物の棒が付いている物もあります。
目印を頼りにすると歩きやすくなる特徴を活かした物で、すくみ足を改善する効果があります。
さまざまな歩行補助具があるため、状態に応じて適切なものを使いましょう。
何がご自身にあっているかわからない場合は、福祉用具専門相談員や、リハビリを担当する療法士などに聞いてみるといいでしょう。
歩行障害で転倒してしまった場合の対応
転倒予防をしていても、転倒してしまうこともあります。
ここでは転倒した場合の対応について説明します。
転倒を発見したら、ケガの有無や意識がボーッとしていないかを確かめて下さい。
多くはすり傷や打撲ですが、骨折や頭蓋内出血を起こしていることもあります。
転倒直後に意識がない場合は、窒息を防ぐために横向きにして寝かせましょう。
関節を動かせない・腫れや変形が強い・背中や胸、腰の痛みが強く続く場合は骨折の可能性があるので患部を動かさないようにして、かかりつけ医に連絡し、判断を仰ぐようにしましょう。
かかりつけ医に連絡がつかない場合は救急車の要請も一つの手段です。
意識もありケガもないことが確認できたら、ゆっくりと起こしましょう。
転倒直後に症状がなくても、転倒後48時間は意識がボーッとしている、頭痛や吐き気があるなどの症状が生じる可能性があるため、必ず注意深く観察をしてください。
パーキンソン病の介護について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
パーキンソン病は、徐々に身体が動かなくなり介護が必要となっていきます。生活のあらゆる面での介護が必要となり、介護する方にも大きな負担がかかります。 少しでも介護の負担を軽くできるように、介護のコツを知っておきたいですよね。[…]
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パーキンソン病患者の歩行のまとめ
ここまでパーキンソン病の歩行の特徴や、転倒予防の具体的な対策などを中心にお伝えしてきました。
また、転倒してしまった場合の対応についても説明しました。
以下まとめです。
- 歩行の特徴として、すくみ足・すり足・小刻み歩行・方向転換の苦手さ・加速歩行などがある
- 転倒予防の方法は、自身で気をつけるポイントと、環境の工夫・手助けの工夫の2種類のポイントがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。