介護サービスを利用するとき、要介護認定を受けることで自己負担を減らすことができます。
要介護認定の判定では「介護認定審査会」が重要な役目を果たしていることを知っていましたか?
本記事では介護認定審査会の役割について以下の点を中心に解説します。
- 介護認定審査会の目的
- 要介護認定の流れ
- 適切な認定を受けるためのポイント
要介護認定を受けるときのためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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介護認定審査会とは?
「介護認定審査会」は市町村が設置する審査会で、要介護度を判定する機関です。
介護サービスを利用するためには「要介護認定」を受けることが必要です。
要介護認定の結果である要介護度により、受けられるサービスや給付額、負担額の上限などが変わります。
少子高齢化に伴い介護サービスの利用を検討する方も多くなっています。
高齢者の多くが利用している介護保険サービス。介護保険サービスについて調べると、介護認定という言葉が良く目につくと思います。介護認定とはどういうものなのでしょうか?本記事では、介護認定についてや介護認定の種類を以下の点を中心に[…]
目的
要介護認定の結果は介護を受ける人のサービスを決定することになるため、実情に応じて公正公平に判定されなければなりません。
そのため、審査は一次判定と二次判定の二段階で行います。
介護認定審査会は二次判定を行う機関で、複数の専門家により構成されています。
機械的に行われる一次判定に対し、専門的な知見から正確な判定をすることを目指しています。
介護認定審査会の会議によって一次判定の結果を変更することもあります。
委員構成
介護認定審査会に参加する委員は、保健、医療、福祉に関する学識経験者で構成されます。
委員は各市町村長が任命しますが、関係団体から推薦された方を任命することが多いです。
任命後は非常勤の特別職の地方公務員となります。
各分野に該当する職種としては、以下の通りです。
- 保健:保健師や看護師など
- 医療:医師、歯科医師、薬剤師など
- 福祉:社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員など
5人を標準として各市町村の条例で定められており、任期は2年で再任も可能です。
会議
会長は委員の中からの互選によって選出されます。
会長が招集する介護認定審査会は原則非公開で行われ、委員にも守秘義務が課せられます。
また、公正公平を期すため、個人を特定する情報は削除されます。
会議の議事である審査結果は出席した委員の過半数により決定し、同数の場合は会長の意見によって決まります。
そのため会長や過半数の委員が欠席した場合、会議が成立しません。
いずれかの分野の委員が欠席となっている場合も開催しないことが望ましいとされます。
会議では必要に応じて審査対象者の家族や介護者、主治医、調査員などの話を聞くこともあります。
また、審査対象者が入院あるいは入所している施設に所属する方が委員の中にいた場合、意見を述べることはできますが判定に加わることはできません。
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要介護認定の手順とは?
要介護認定では介護サービスを受ける方の状態を調査して、要介護状態かどうか、どの程度の状態かを判定します。
要介護認定の結果は介護サービスの内容を決定づけるため、全国一律で決まっている基準に従って一次判定と二次判定の2段階で審査を行います。
判定基準となるのは「日常生活を送るために必要な介護にかかる時間」と「状態の維持・改善の可能性」です。
調査等で得られた情報をもとに「介護の手間」を判定して基準と照らし合わせることで、「非該当」「要支援1~2」「要介護1~5」の8段階のいずれかが決まります。
要介護認定を受けるためには、介護を受ける市町村への申請が必要です。
一次判定
市町村に要介護認定の申請をすると、訪問による認定調査と主治医意見書の作成を行います。
一次判定ではそれぞれの調査結果を入力すると、コンピュータが介護にかかる時間を算出して判定結果を出します。
コンピュータを使うことで「介護の手間」を客観的に判定できるようになっています。
一次判定で出された結果は決定ではなく、二次判定に送られて介護認定審査会で審査されます。
認定調査
市町村の職員や委託されたケアマネジャーなどが「介護認定調査員」として自宅や病院等を訪問し、介護を受ける方の心身の状態や日常生活などを確認します。
調査項目は全国一律で決められていて、基本調査74項目と特記事項となっています。
主な調査項目には「介護を受ける方の身体能力に関すること」「介護者の手間に関すること」「認知機能・精神障害に関すること」などがあります。
調査時間は30分から一時間程度で、できれば介護者も同席していることが望ましいです。
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主治医意見書
主治医意見書は市町村の依頼により主治医が作成します。
主治医がいない場合は市町村が紹介する医師の診断を受けて作成します。
意見書作成料の自己負担はありません。
主治医意見書は、介護サービスを受ける方の心身の状態をより詳しく知るために必要です。
認定調査と似た項目もありますが、異なる視点から書かれているため状況を多角的に見ることができるという意義があります。
長期間受診していない場合には現在の状況が正しく反映されません。
健康で医師にかかる必要のない方も、定期的に健康診断を受けて心身状態を確認しておくとよいでしょう。
二次判定
二次判定では「一次判定の結果」「主治医意見書」「認定調査における特記事項」の3点をもとに介護認定審査会が要介護認定の結果を決定します。
介護認定審査会
介護認定審査会では、初めに特記事項の記載と主治医意見書の内容に整合性があるかを確認し、一次判定の結果の修正や確定をします。
次にそれぞれの項目について介護の手間がかかるかどうかを議論します。
一次判定の結果に変更が必要な場合には、特記事項や主治医意見書の具体的な記載を理由として明記し事務局に報告します。
必要に応じて次のような項目を「介護認定審査会として付する意見」として出します。
- 認定の有効期間を原則よりも延長または短縮する
- 要介護状態の軽減または悪化の予防のために必要な療養についての意見
結果通知
結果は申請日から30日以内に通知されます。
「要介護認定通知」「認定内容が記載された介護保険被保険者証」が郵送で届き、その効力は申請日にさかのぼって発生します。
認定には有効期間があります。
認定の有効期間が過ぎても介護が必要だと見込まれる場合は更新申請が必要です。
更新申請は有効期間満了の60日前から可能です。
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介護保険審査会とどう違う?
要介護認定にかかわる機関として「介護保険審査会」があります。
介護認定審査会とよく似た名前ですが役割などが異なります。
ここではその違いについて説明します。
役割の違い
「介護保険審査会」は都道府県が設置する機関です。
そもそもの役割が異なっており、介護保険審査会では介護給付や保険給付などに関する審査や要介護認定の審査など、市町村が行った処分に対して不服申し立てがあったときに対応します。
委員構成の違い
介護保険審査会の委員は都道府県知事が任命します。
被保険者を代表する委員3人、市町村を代表する委員3人、公益を代表する委員3人以上で構成され、人数は条例で定められています。
会長は公益を代表する委員から選出されます。
任期の違い
介護保険審査会の委員の任期は3年で、介護認定審査会の委員の任期よりも長くなっています。
再任可能なところはどちらも変わりません。
要介護認定に不満があるときは?
要介護認定の結果を最終判断するのは介護認定審査会ですが、その結果に対する責任は市町村が負っています。
要介護認定の結果に不満があるときはまず市町村に相談しましょう。
それでも納得がいかないときには、「介護保険審査会」に対して不服申請ができます。
申請できる期間は認定結果を知った翌日から60日以内です。
審査の結果「不当」と結論づけられた場合には、認定が取り消されて調査が改めて行われます。
新たな要介護度が出るまでには申請から数か月かかることもあるので注意が必要です。
別の方法として、区分変更申請を行うことも可能です。
区分変更申請は、認定を受けている要介護度の有効期間中に状態や環境の変化に伴い要介護度を変更するために行われます。
要介護認定の結果が実情と合っていないと感じた場合には区分変更申請を活用しましょう。
介護認定審査会では何が重視される?
要介護認定の結果を最終的に判断するのは「介護認定審査会」です。
介護認定審査会による会議では、「認定調査の特記事項」と「主治医意見書」を基準に「介護の手間がどのくらいかかるか」を審査しています。
認定調査は原則として一回で30分から一時間程度で行われるため、調査員が重視するポイントを押さえて現状をきちんと伝えることが重要です。
現状を伝えるためには、介護が大変になる時間帯を訪問時間に設定して介護者も調査に立ち会いましょう。
介護を受ける本人がいれば認定調査は可能ですが、正しい情報を伝えきれないことがあります。
しかし家族以外の人が来ることでいつも以上に頑張ったり、質問に対してよく見せるための回答をしたりすることも珍しくありません。
訪問時間は限られているため、いつもの困りごとがその場では伝えきれません。
そのため普段の様子、病気やけがなどの既往歴、問題行動などを記録して、調査員にメモを渡すとスムーズに調査が進みます。
普段の様子を動画で残しておくのも効果的です。
特に夜中の行動は訪問では確認できませんので記録しておきましょう。
各データは特記事項として介護認定審査会に持ち込まれます。
また認定調査時に気づきにくい症状については主治医意見書に書かれていると、実態に配慮してランクが上がりやすくなります。
介護保険サービスを利用している方、またはこれから利用しようと思っている方々は、「日常生活自立度」という言葉を聞いたことがありますか?日常生活自立度は要介護認定を受ける際、参考にされる評価尺度であり、関係する書類でよく記載されています。[…]
介護認定審査会のまとめ
ここまで、介護認定調査会の役割と要介護認定を中心にお伝えしました。
要点は以下の通りです。
- 「介護認定審査会」とは要介護認定の結果を審査するために専門家で構成された機関で、各市町村に設置されている
- 要介護認定はコンピュータによる一次判定と介護認定審査会による二次判定によって結果を判定する
- 適切な認定を受けるためには「介護の手間」を具体的に伝えることが重要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。