「介護現場で活用されるトランスとは、いったいどのような事柄を指すのだろう?」
「介護現場で活用されるトランスのやり方や注意点などについて詳しく知りたい。」
と多くの方が上記のような疑問や悩みを抱えていることでしょう。
介護現場で活用されるトランスとは、要介護者をベッドや車椅子などに移乗させる動作のことです。
またトランス介助のポイントやNGポイントがあるほか、要介護者が重いなどで上手くできない場合の対処法があります。
今回は介護現場で活用されるトランスとはどのような事柄を指すのか、またトランス介助のやり方や注意点などについて詳しく解説していきます。
- トランスとは
- トランス介助のやり方
- トランス介助のポイント
ぜひ最後までお読みください。
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トランスとは
トランスとはトランスファーの略称で、移動・乗り換えの意味があります。
介護用語としてトランスが使われる場合は、要介護者をベッドから車椅子などに乗り移る「移乗動作」のことを指します。
高齢者になるにつれ足腰が弱くなり、車椅子の使用の機会が増えます。
要介護者が車椅子に乗り降りする時に自分の力だけでは上手くできないことがあるため、トランス介助が必要になります。
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トランス介助のやり方
トランス介助が最も必要とされる機会は、車椅子からベッドへ移乗するタイミングです。
こちらでは車椅子からベッドへのトランス介助のやり方について解説します。
①浅く座ってもらう
要介護者が移乗しやすいように、車椅子に浅く座ってもらいます。
この時に要介護者の太ももの中間辺りに車椅子の端が来るように注意が必要です。
②車椅子の位置を合わせる
ベッドの高さを車椅子の座面の高さに調節します。
移乗後にベッドに横になる向きを想定し車椅子をベッドの位置に極力近づけ、移動する角度を少なくします。
足を地面に降ろしやすい様にフットレストを外し、状況によりベッド側のアームレストを跳ね上げます。
移乗の際に位置がずれない様に車椅子にブレーキが掛かっているか確認します。
③支えやすい姿勢をとる
要介護者の足底が地面に付いていることを確認します。
要介護者の身体に密着した状態で両肩甲骨を支え、前屈姿勢を促します。
この時に介助者が足を引きすぎないように注意が必要です。
④腰の高さを変えず、一緒に回転する
重心の高さを要介護者に合わせて、腰を低くします。
ベッド側の肩甲骨と反対側の骨盤をしっかりと支え、密着します。
介助者の足は支持基底面(重心の真下の足下面積)を意識し、要介護者の軸足(ベッド側)の延長線上と踏み込んだ時に両者が重なる位の位置に配置します。
この時の注意点は介助者が後方への重心移動と回旋や座る動作が安定する姿勢を取ることが重要です。
前方に誘導し臀部を浮かせます。
臀部の高さを変えず、要介護者と同時にベッド側へ回転します。
この時に回転しすぎに注意が必要です。
⑤ゆっくり座ってもらう
密着したまま、ゆっくりベッドに臀部を下ろします。
この時にベッドに腰掛けた姿勢が安定しない状態で、要介護者から離れると危険です。
座位が安定したことを確認してから離れます。
要介護者が両手を体の両側について、足を肩幅に開くとより安定します。
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トランス介助のポイント
トランス介助のポイントはいくつかあります。
各項目のポイントについて解説します。
できるだけ本人に任せる
トランス介助を含め介護全般に言えますが、要介護者が自立した日常生活を送ることを前提にサポートを行います。
すべての動作を介助してしまうと筋力を衰えさせる原因になるため、できるだけ要介護者本人の能力に任せることも重要です。
本人のペースに合わせる
無理のない移乗を行ってもらうため、本人のペースに合わせることが重要です。
急かし過ぎると怪我や転倒事故の原因になります。
そのため要介護者の能力に合わせて、動作のサポートを行う必要があります。
転落に注意する
トランス介助の際に車椅子やベッドからの転落に注意する必要があります。
介助者のペースで行ったり、要介護者の能力以上の動作を要求すると転落の原因となります。
またブレーキの掛け忘れやフットレストを上げ忘れていたり、車椅子をベッドに付ける角度が開きすぎてしまうことも転落防止のため注意が必要です。
トランス介助のNGポイント
トランス介助のポイントはいくつかあります。
各項目のポイントについて解説します。
ズボンを引っ張り上げる
トランス介助の際にズボンを引っ張り上げるとズボンが伸び、支える力が十分に伝わらなくなります。
また衣服が破けてしまうことや転倒事故など怪我の原因になるため危険です。
そのため臀部をしっかりと支えて要介護者の身体を安定させて、移乗するように気を付けることが重要です。
腕力に任せて持ち上げる
トランス介助の際に腕力に任せて持ち上げると、要介護者の足に力が入れられないほか介助者の腕や腰に大きな負担が掛かります。
また要介護者の骨折や脱臼と転倒などのリスクがあり危険です。
そのため要介護者の身体に密着した状態で両肩甲骨を支え前屈姿勢を促し、移乗の動作をスムーズに行える体勢にすることが重要です。
介護される方が重い場合はどうすればいい?
身体力学を活用した介護技術ボディメカニクスを上手く取り入れることで、体重の重い要介護者でも問題なくトランス介助を行うことができます。
ボディメカニクスには8種類の原則があり以下の通りあげられます。
介助者の支持基底面を広く保つ
介助者が足幅を前後左右に大きく開き、支持基底面(足裏や重心の真下など床と接している足下面積)を広げることで立った姿勢を安定させます。
要介護者と介助者との重心を密着し近づける
要介護者と介助者の身体を密着(重心を近づける)することで、移動の方向がぶれなくなります。
また一方向に大きな力が加わるため、少しの力で介助を行えます。
大きな複数の筋肉を使う
手や腕だけでなく、腰や足などの筋肉を意識して介助を行います。
同時に複数の筋肉を使うことで、背筋・腹筋・大腿四頭筋・大殿筋などに負荷を分散させ大きな力を出すことができます。
要介護者の身体を小さく球体に丸める
要介護者の腕を胸部の前で組ませ、膝を緩く曲げできる限り体を球体に近づけます。
これによりベッド側に接する面を小さくすることができ、力の分散を防ぐことや介助を行いやすくできます。
介助者の重心を低くし、重心移動を利用する
介助者は重心を低く保つため膝を曲げ、腰を落とします。
姿勢が安定するほか、腰への負担が少なくなります。
また足の先を移乗する方向に向けて膝の屈伸を利用し重心の移動で動かすことで、スムーズな移乗ができます。
介助者の腰など身体をねじらない
介助者の身体をねじると姿勢が不安定になり、重心もぐらつきます。
肩・腰など身体全体を平行に保ち、意識して動かすと姿勢・重心が安定します。
要介護者は押さずに引く
押す力よりも引く力の方が、少ない力で動かせます。
そのため要介護者を動かす場合は、手前に引くことで簡単に移動できます。
てこの原理を利用する
てこの原理は支点(支える位置)・力点(力を加える位置)・作用点(力が作用する位置)で物を動かす仕組みです。
これを利用して介助者の肘・膝などを支点に、介助者を動かすことを意識します。
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トランス介助がうまくできない場合は?
どうしてもトランス介助が上手くできないという方がいると思います。
ネットや人から見たり話で聞いたりして学んだとしても、経験が少なかったりすると実際に上手くいかないことがあります。
また要介護者との関係性でも相性が合わずに、トランス介助が上手くいかない可能性もあります。
トランス介助は知識や経験だけでなく信頼関係も重要になるため、いきなりうまくできることは少ないと言えます。
そこで不安を解消する方法は、在宅介護サービスの一つでもあるヘルパーを利用することがおすすめです。
ヘルパーであれば知識だけでなく技術と経験を積んだ資格を有した方が、トランス介助を行います。
トランス介助のやり方やポイントを熟知しており、要介護者も安心して身体を任せられます。
またヘルパーの方からトランス介助のやり方やポイントをアドバイスしてもらえるため、実際に目で見て覚え、経験として学ぶことも可能と言えます。
「介護保険のヘルパー利用では、いったいどのようなことができるのだろう?」「介護保険でヘルパーを利用する際の、利用の流れなどについて詳しく知りたい。」と上記のような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。介護保険[…]
まとめ:介護現場で活用されるトランス
こちらの記事では、介護現場で活用されるトランスとはどのような事柄を指すのか、またトランス介助のやり方や注意点などについて詳しく解説しました。
- トランスとは「移動・乗り換え」のこと
- トランス介助のやり方は「浅く座ってもらう」「車椅子の位置を合わせる」「支えやすい姿勢をとる」「腰の高さを変えず、一緒に回転する」「ゆっくり座ってもらう」
- トランス介助のポイントはできるだけ本人に任せペースに合わせること
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。