高齢化が進む中、高齢者に関わる仕事は引く手あまたな状況が続いています。
求人ページには、介護福祉士やホームヘルパーといった資格要件の記載があることも多いです。
介護職としてキャリアを築いていくために、介護福祉士やホームヘルパーの取得を考えている方も多いのではないでしょうか?
介護福祉士の場合、実務経験を利用して資格を取得する方法があります。
本記事では、介護福祉士を取得するときに関わってくる、実務経験について紹介します。
- 実務経験ルートに必要な従業期間と従業日時
- 実務経験の範囲
- 実務経験証明書について
ぜひ最後までお読みください。
介護とは人の命に係わる仕事です。いろいろな専門性が求められるため、国家資格から民間の資格までさまざまな資格があります。具体的にはどのような資格があるのでしょうか?本記事では、介護の資格について以下の点を中心にご紹介します[…]
スポンサーリンク
働いた経験が受験資格になる?
介護職は、無資格でも就職し働くことが可能です。
働きながら介護の知識と技術を学び、経験を経てから国家資格の介護福祉士を受験をします。
上記の方法が、介護福祉士の受験方法の一つである、実務経験ルートにあたります。
しかし、介護の仕事に就いたからといって、すぐに介護福祉士の受験資格が与えられるわけではないので、気をつけなくてはなりません。
対象施設にて従業期間が3年(1,095日)以上であること、従事日数が540日以上であることが必要です。
従業期間と従事日数は試験実施年度の3月31日まで通算することができます。
また、介護職員実務者研修の受講も義務付けられています。
実務経験を積みながら国家資格取得を目指すルートのため、自分のペースで勉強を進めることができる反面、中には仕事と勉強の両立が難しいと感じる方もいます。
そのため実務経験の条件をクリアするのにどれくらいかかるか計算し、受験できる年度に向け早い段階から少しずつ勉強を進めるのがおすすめです。
自身で勉強を進めることが難しいようであれば、通信講座を利用するのも一つの手です。
また、介護福祉士について詳しく知りたい方は下記の記事も参照ください。
介護福祉士は介護が必要な人の生活を支える専門家です。そんな介護福祉士ですが、「なるためにはどうしたらいいのか」「仕事内容はどんな感じか」という疑問を持たれる方も多いかと思います。本記事では、介護福祉士について以下の内容を中心にお[…]
スポンサーリンク
実務経験の範囲は決まっている
実務経験は介護福祉士の試験を受ける際に必要となるため、認められる職種や施設は高齢者施設のみと思われがちです。
しかし、高齢者施設以外にも業務に介護の仕事が含まれる施設も認められます。
また同じような施設であっても認められていない施設もあり、働いても実務経験に含めることができないこともあります。
ここでは実務経験として認められる職種と指定施設について紹介します。
児童分野
児童の分野において認められる施設、事業は、以下の通りです。
知的障害児施設 | 自閉症児施設 | 盲児施設 |
児童発達支援 | 放課後デイサービス | 保育所などの訪問支援 |
居宅訪問型児童発達支援 | ー | ー |
また職種に関しても上記に従事する、「保育士」「介助士」「看護補助者および入所者の保護に直接従事する職員」「訪問支援員」が実務経験として認められます。
児童発達支援と放課後デイサービスにおける指導員や障害福祉サービス経験者・児童指導員は、介護業務を行うことが明記されている必要があります。
また同施設に介護職員が配置されている場合、指導員は実務経験になりません。
上記の実務経験を利用し介護福祉士を受験した場合、社会福祉士や精神保健福祉士国家試験の実務経験にはできないため、複数の資格取得を考えている場合は注意が必要です。
障がい者分野
障がい者分野において認められる施設、事業は、以下の通りです。
障害者支援施設 | 療養介護 | 児童デイサービス |
自立訓練 | 福祉ホーム | 訪問入浴サービス |
地域活動支援センター | 居宅介護 | 重度訪問介護 |
行動援護 | 同行援護 | 移動支援事業 |
また職種に関しては、上記に従事する「介護職員」「介助員」「訪問介護員」「ホームヘルパー」「ガイドヘルパー」が実務経験として認められます。
各施設において介護職員が配置されている場合、保育士・指導員・世話人・ガイドヘルパーといった職種は実務経験と認められません。
また介護福祉士で実務経験として利用した場合、社会福祉士や精神保健福祉士国家試験の実務経験にはできないため、複数の資格取得を考えている場合は注意が必要です。
高齢者分野
高齢者分野において認められる施設や事業は、以下の通りです。
指定通所介護 | 養護老人ホーム | 特別養護老人ホーム |
指定介護老人福祉施設 | 軽費老人ホーム | ケアハウス |
有料老人ホーム | 指定小規模多機能型居宅介護 | 指定通所リハビリテーション |
指定特定施設入居者生活介護 | サービス付き高齢者向け住宅 | 指定訪問介護 |
指定夜間対応型訪問介護 | 指定訪問看護 | 指定介護予防訪問看護 |
また職種に関しては、上記に従事する「介護職員」「介護従事者」「介護従業者」「介助員」「養護老人ホームにて主に介護業務を行う支援員」「訪問介護員」「ホームヘルパー」「主に介護業務を行う看護補助者」が実務経験として認められます。
実務経験として認められるのは、基準を満たし適用を受けてからになります。
適用前から事業を行っていたとしても、実務経験としては認められません。
指定訪問看護・指定介護予防看護の看護補助者のうち、間接的な業務(空床のベットメイキングや検体運搬)は認められません。
その他の分野
介護の業務としてイメージしやすい高齢者・障がい者・児童の分野以外でも、介護福祉士の実務経験として認められる施設があります。
【その他の分野】
救護施設 | 更生施設 | 地域福祉センター |
ハンセン病療養所 | 原子爆弾被爆者養護ホーム | 労災特別介護施設 |
家政婦紹介所 | 健康保険法第88条第1項に規定する訪問看護事業 | ー |
また職種に関しては、上記に従事する「介護職員」「主に介護業務を行う介助員」「介護員」「主に介護業務を行う看護補助者」「家政婦」が実務経験として認められています。
病院や診療所やハンセン病療養所の看護補助者のうち、間接的な業務(空床のベットメイキングや検体運搬)は認められません。
介護等の便宜を供与する事業
介護等の便宜を供与する事業を以下にまとめます。
地方公共団体が定める条例 | 実施要綱等に基づく事業 |
介護予防サービス (指定事業所は除く) | 介護保険法の基準該当居宅 |
障害者総合支援法の基準該当障害福祉サービス (指定事業所は除く) | その他の介護等の便宜を供与する事業 (運営主体が法人格を有していること) |
また職種に関しては、上記に従事する「介護職員」「主に介護業務を行う訪問介護員」が実務経験として認められています。
「介護保険法の基準該当居宅」「障害者総合支援法の基準該当障害福祉サービス(指定事業所は除く)」以外の事業には、実務経験とする条件があります。
- 事業の種類が高齢者・障がい者・障がい児であること
- 実施要綱や条例などに高齢者・障がい者・障がい児・福祉に関するといった記載があること
- 事業目的や概要として介護の業務を行うことが記載されていること
- 介護職員や訪問介護員といった介護を主の業務をする職種で配置されること
以上が条件です。
実務経験として認められるのは、基準を満たし適用を受けてからになります。
また、介護福祉士の受験資格について知りたい方は下記を参照してください。
超高齢社会の現在、介護の仕事は需要が高まっています。介護の資格の中でも、介護福祉士は唯一の国家資格であり、資格取得を目指す方も増えています。しかし、介護福祉士の受験資格は、目指すルートや実務経験などによって取得方法が異なるため、[…]
実務経験の従事日数はどう計算する?
実務経験の従事期間や従事日数は、受験ができるかどうかに関わってくるため正確に知る必要があります。
そのために、まずは従事期間・従事日数とは何かを知りましょう。
従事期間とは?
従事期間とは、老人ホームやデイサービスといった実務経験の対象となる施設または事業において、認められた職種として在職する期間のことをいいます。
在職期間の中には、産休や育休病休といった休職している期間も、籍を置いている状態を保っていれば含むことができます。
正社員だけでなくパートやアルバイトとして働く人も対象となります。
従事日数とは?
従事日数は、雇用契約を元に実際に業務に関わりを持った日数を指します。
従事期間とは違い、実際に介護業務に従事している必要があるため、産休や育休や病休はもちろんのこと有給休暇や研修なども当てはまりません。
一日の勤務時間は問いません。
重複期間・重複日は除く
パートやアルバイトの場合、掛け持ちで仕事を行っている人もいます。
複数カ所の施設で経験がある場合、通算で申請することも可能です。
しかし、掛け持ちで重複期間や重複日がある場合は注意が必要です。
同じ日に複数カ所で勤務しても一日としてカウントします。
多くの施設で一日に何度も仕事をしているからといって、従事期間や従事日数を効率的に稼ぎ、受験を早められるということはありません。
同一期間に複数カ所で業務を行っている場合、それぞれの従事日数内訳証明書が必要です。
見込みで受験することも可能
介護福祉士の筆記試験は1月下旬ごろ、実技試験は3月初旬ごろ実施されます。
受験資格を満たさなくてはいけないのは、願書提出や試験実施時ではありません。
実務経験などの受験資格は、試験実施年度の3月31日までと決められています。
そのため見込みでの受験も可能となります。
しかし見込み受験の場合、ギリギリの日数で受けてしまいその後仕事を休むなどをして日数が足りなくなってしまった場合、合格取り消しになりますので、余裕を持つ必要があると考えられます。
実務経験ルートで受験するには実務経験証明書が必要?
実務経験証明書とは、働いた年数や日数・職種・勤務期間などが記された書類です。
実務経験ルートで受験するためには、実務経験の証明をする必要があります。
そこで用いられるのが、実務経験証明書になります。
現在勤めている職場だけで従事期間や従事日数を満たしているのであれば、実務経験証明書をもらうのは簡単です。
しかし複数カ所で勤め通算することで実務経験を満たすのであれば、全ての職場に実務経験証明書を出してもらう必要があります。
自身で作成できる書類ではないため、早めに連絡し、いつまでに必要かを明確に伝えるようにしましょう。
実務経験証明書の送り方
実務経験証明書は、受験の申込書と一緒に提出します。
実務経験証明書はコピーではなく、必ず原本を提出してください。
見込みで受験する場合は、実務経験証見込み証明書を提出してください。
なお、実務経験見込み証明書の場合は、後日改めて実務経験証明書を提出する必要があります。
後日、実務経験証明書だけを提出する場合は、簡易書留を利用してください。
実務経験証明書の有効期限(150字)
実務経験証明書には有効期限はありません。
過去に取得した証明書であっても、受験手続きに利用できます。
なお、過去に実務経験証明書を提出した方は、原則として再度の提出は不要です。
簡単にいえば、再受験の際には、実務経験証明書を準備する必要はありません。
在籍していた事業所や施設が廃業していたら?
実務経験証明書をもらおうとしたら、以前勤めていた職場が廃業していたというケースもあるかもしれません。
その場合は、指定された複数の書類を受験申込時に合わせて提出することで受験が可能になります。
実務経験として確認したいのは、以下の4点です。
- 施設・事業所
- 職種
- 従業期間
- 業務従事日数
【施設・事業所】
最寄りの法務局で入手できる閉鎖事項全部証明書または履歴事項全部証明書など施設や事業所を確認できる書類の現本が必要です。
【職種】
雇用契約書や雇用通知書、労働条件書や労働契約書、辞令・給料明細書など職種が確認できる書類が必要です。
【従業期間】
勤務表・給料明細・雇用保険・年金によって確認することができるため、実際に確認できる書類の写しが必要です。
【業務従事日数】
勤務表・給料明細などの確認が取れる写しが必要です。
上記の書類は本人が用意する必要があります。
また別途受験年度の受験の手引きが必要になりますので、必ず用意しましょう。
実務経験ルート以外にはどんな受験ルートがある?
介護福祉士を受験するには、「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「経済連携協定ルート」の4つのルートがあります。
どの受験方法を選択するかは受験者の状況や環境次第です。
ではどのような方法で資格取得を目指すことができるのか、ここでは「実務経験ルート」以外の「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「経済連携協定ルート」を紹介します。
養成施設ルート
介護福祉士養成施設とは、厚生労働大臣が指定した学校を指します。
具体的には、介護福祉士で必要な知識や技術を学ぶことができる、四年制大学・短期大学・専門学校のことです。
養成施設に入るには高校卒業又は高校程度の卒業認定に合格していなければなりません。
また卒業した学校の種類で養成施設に通う期間も違います。
普通科の高校卒業では2年以上、福祉系の高校卒業では1年以上、養成施設に通うことが必要です。
2017年1月に実施された試験までは、養成施設を卒業した方に関しては、卒業と同時に介護福祉士の資格取得とされていました。
しかし法改正により翌年2018年1月の試験から、卒業時に得られるのは介護福祉士の受験資格へと変更になっています。
福祉系高校ルート
福祉系高校ルートとは、介護福祉士の取得を目的としている福祉に特化した高等学校に通い、卒業と共に受験資格を得て国家試験に臨むルートを指します。
平成20年度以前は卒業後に筆記試験と実技試験を受ける必要がありました。
しかし平成21年度以降は卒業後に筆記試験を受け合格することで、介護福祉士の資格を取得できるようになりました。
経済連携協定ルート
経済連携協定とは、対象国であるインドネシア・フィリピン・ベトナムの方が日本の介護施設で働き、研修を受けて介護福祉士を目指すルートです。
経済活動と国同士の連携が目的となっています。
上記の3か国の方であれば誰でも来日できるというわけではなく、候補条件のクリアと日本語能力試験をパスしなければなりません。
また来日後も介護施設で働きながら日本語研修を受ける必要があります。
実務経験3年で受験者資格を得ることができます。
介護福祉士の実務経験のまとめ
ここまで、介護福祉士の実務経験について紹介しました。
要点は以下の通りです。
- 実務経験ルートでは、対象施設にて従業期間が3年(1,095日)以上、従事日時が540日以上必要
- 実務経験とは、児童・障がい者・高齢者などの施設にて介護を含む業務経験のこと
- 実務経験証明証とは、働いた年数や日数・職種・勤務期間などが記された書類
これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。