パーキンソン病の主な症状は、身体が動かしづらくなる「運動症状」です。
しかし病状が進行すると、末期症状として、その他にもさまざまな症状があらわれます。
本記事では、パーキンソン病の末期症状について、以下の点を中心にご紹介します。
- パーキンソン病の末期症状とは
- パーキンソン病の末期症状以外の症状
- パーキンソン病の段階別の治療方法
パーキンソン病の末期症状の対策のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
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パーキンソン病の末期症状とは
パーキンソン病の末期症状では、「L-ドパ」という治療薬の効果が安定しづらくなります。
「L-ドパ」は脳にドパミンを補充するための薬で、パーキンソン症状を軽減・改善する作用があります。
一般的に、パーキンソン病の初期では「L-ドパ」の効果が出やすいです。
薬が効きやすい期間は「ハネムーン期」と呼ばれ、発症から3年~5年ほど続きます。
一方、パーキンソン病が進行すると、「L-ドパ」の効果が出にくくなります。
効果が出にくくなる期間は「進行期」と呼ばれ、さまざまな末期症状があらわれます。
末期症状として代表的なのは、「ウェアリングオフ現象」と「ジスキネジア」という2つの症状です。
ウェアリングオフ現象
薬の持続時間が短くなるという末期症状です。
一般的には、薬の服用後2時間~3時間で効果が切れてしまいます。
ウェアリングオフ現象が起こると、薬の服用直後は、症状はいったん落ち着きます。
しかし薬の持続時間は短く、2時間~3時間経つと症状があらわれることがしばしばです。
ウェアリングオフ現象が起こるのは、ドパミン神経の代謝に異常があらわれるからです。
パーキンソン病の初期では、「L-ドパ」は一度脳内のドパミン神経に保存され、少しずつ使用されます。
しかし末期になると、ドパミン神経の数が減少してしまうため、「L-ドパ」の保存用量も小さくなります。
つまり「L-ドパ」を一度に使い切ってしまうため、効果の持続期間が短くなるのです。
【ウェアリングオフ現象の具体的な症状】
(薬を服用して2時間~3時間)
- 手足が震える
- 歩行障害
- 意欲の低下
ジスキネジア
ジスキネジアとは薬が効いている時間帯に、手足が勝手に動くという末期症状です。
ジスキネジアは、「ウェアリングオフ現象」の出現後、しばらくしてあらわれることが一般的です。
ジスキネジアは、「L-ドパ」が効きすぎることが原因です。
薬が効きすぎてしまうのは、病状の末期には、ドパミン神経に保存される「L-ドパ」の量が減少するためです。
すなわち「L-ドパ」の血中濃度が高くなるため、ドパミンを受け取る側の神経が興奮しやすくなり、結果として末期症状があらわれます。
ジスキネジアが起こると、口や手足が勝手に動き出します。
本人には症状の自覚がないことが多く、周囲に指摘されて初めて気づくケースもあります。
また、症状の程度には個人差が大きいのも特徴です。
ジスキネジアは、とくに症状による問題・危険がなければ、対策を取らずに様子を見ることが多いです。
一方、ジスキネジアによる支障がある場合は、投薬量を調整するなどして対策をとります。
【ジスキネジアの具体的な症状】
- 手足や肩が勝手にクネクネ動く
- 口が勝手にもぐもぐ動く
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パーキンソン病の症状とは
パーキンソン病の末期症状以外の症状について解説します。
末期症状以外の症状は、身体機能に支障をきたす「運動症状」が代表的です。
その他に、「うつ」「幻覚」「妄想」などの「非運動症状」があらわれることもあります。
非運動症状についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
パーキンソン病というと、皆様はどんな症状を思い浮かべるでしょうか?手が震える、一歩目が踏み出しづらくなる、言葉が出にくくなるなどの症状が有名です。しかし運動機能に関する症状以外に、様々な精神症状があることをご存じでしょうか?[…]
今回は「運動症状」について解説します。
手足が震える
じっとしているときに手足が小刻みに震える症状です。
「静止時振戦」と呼ばれます。
振戦は、パーキンソン病の初期症状として「片方の手・足」から始まることが多いです。
パーキンソン病の方の中には、足や顎が震える方もいらっしゃいます。
振戦の特徴は、じっとしているときに震えが起こることです。
一方、なにかの動作中や睡眠中は、震えが収まるのが一般的です。
震えの頻度はゆっくりで、1秒間に4回~6回が平均的です。
筋固縮
筋固縮とは筋肉が硬直し、スムーズに動かしづらくなる症状です。
関節が曲がりにくくなったり、手足の動きがぎこちなくなったりします。
他人が手足を動かそうとすると、カクカクした動きになる歯車現象も見られます。
本人には自覚がないことも多く、医師の診断などで歯車現象に気づくケースも多いです。
顔の筋肉も硬直するため、表情が乏しくなることもあります。
「仮面様顔貌」と呼ばれる現象で、無表情で、どこか一点を見つめるような顔つきになるのが特徴です。
動作が遅い・少ない
動作が緩慢化する症状で、「無動」と呼ばれます。
無動が起こると、動きが小さくなったり、素早い動作が難しくなったりします。
たとえば歩行が小刻みになるほか、手の振りも少なくなります。
手の動きが不自由になるため、文字の書き取りに支障が出ることもあります。
また、声が小さくなるケースや、抑揚がなくなるケースもあります。
無動の中でとくに代表的な症状が、すくみです。
歩き始めるときに、一歩目を踏み出せずに足がすくむ状態です。
バランスが取れない
「姿勢反射障害」と呼ばれ、まっすぐな姿勢を保てなくなる状態です。
具体的には、「前かがみな姿勢」や、「歩行中の方向転換が困難」などの現象がみられます。
姿勢反射障害が起こると、身体のバランスが取れないため、転倒のリスクが高まります。
たとえば、通常ならば、身体がぐらついたときには無意識に姿勢を変えて転倒を防ぎます。
しかし姿勢反射障害では、とっさに姿勢を整えることが難しいため、そのまま転びやすくなります。
また、姿勢が前かがみになるため、歩行中のスピードが増したり、すぐに立ち止まれなくなったりすることもあります。
立ち止まれなくなる症状は突進進行といい、転倒のリスクが高いです。
パーキンソン病は、難病指定されている疾患でとくに高齢の方に多く見られます。パーキンソン病は早期の発見・治療によって進行をゆるやかにできるため、症状を見逃さないことが大切です。本記事では、パーキンソン病について解説します。[…]
パーキンソン病の治療とは
パーキンソン病の根本的な治療法は確立されていません。
よって治療法は、諸症状の軽減を目指す対症療法が中心となります。
パーキンソン病の治療法について、「初期」と「中期以降」に分けて解説します。
初期
初期の治療は、薬物療法が中心となります。
ただし、パーキンソン病によって生活や仕事に支障がなければ、薬物を使用せずに経過を見守ることもあります。
パーキンソン病の治療に用いられる薬は、大きく分けて「ドパミン系薬剤」と「非ドパミン系薬剤」の2種類です。
「ドパミン系薬剤」は、「ドパミン」という神経伝達物質を補充する薬です。
パーキンソン病の原因はドパミンの減少であるため、薬でドパミンを補うことで、症状の改善が期待できます。
一方、「非ドパミン系薬剤」は、ドパミン系薬剤の補助として用いられることが多いです。
【パーキンソン病の主な治療薬】
- L-ドパ(ドパミン系薬剤)
- ドパミンアゴニスト(ドパミン系薬剤)
- 抗コリン剤(非ドパミン系薬剤)
- COMT阻害剤(非ドパミン系薬剤)
- MAO-B阻害剤(非ドパミン系薬剤)
薬物療法や使用する薬についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
パーキンソン病の治療法は「薬物療法」が中心となります。しかし、薬物療法はときに副作用を伴うため、体調や症状の変化を注意深く観察する必要があります。本記事では、以下の項目について解説します。 パーキンソン病とは パーキンソン病[…]
中期
中期以降は末期症状への対応も必要になります。
具体的には、「薬の服用回数を増やす」「持続時間の長い薬に変更する」などして、薬効を高めます。
あるいは、薬の吸収率を高める工夫がなされることもあります。
たとえば、薬の服用を空腹時にしたり、胃腸薬やビタミンCと一緒に摂取したりすると、「L-ドパ」の吸収率が高まります。
薬剤によって症状がコントロールできない場合は、「外科的治療」が選択される場合もあります。
一般的には、「脳深部刺激療法」という方法が用いられます。
脳に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで、脳の興奮を鎮める治療法です。
パーキンソン病の予防とは
パーキンソン病の予防法を解説します。
適度な運動をする
運動には「ドパミン」の量を増やす作用があります。
よって、パーキンソン病の予防においては、適度な運動が大切です。
なお、すでにパーキンソン病を発症している方も、適度な運動によって、症状の悪化防止が期待できます。
パーキンソン病を発症している方が運動を行う場合は、「軽い運動」を「こまめに」行うことが重要です。
理由は、パーキンソン病になると、一回あたりのドパミンの分泌量が少なくなるからです。
しかし、ドパミンは運動の度に分泌されるため、運動をこまめに繰り返すことでトータルでのドパミン分泌量を増やせます。
パーキンソン病予防のための運動は、「有酸素運動」など、適度に負荷のかかる運動が望ましいです。
過度な運動はかえってドパミンの量を減らすため、控えましょう。
バランスの取れた食事を行う
食生活を見直すことも大切です。
とくに、「肉」「果物」「乳製品」の摂取が少ない方は、バランスよく食卓に取り入れましょう。
また、「大豆・大豆製品」や「ナッツ」などは、ドパミンの原料となります。
さらに「緑茶」や「コーヒー」に含まれる「ポリフェノール」は、パーキンソン病予防に有効です。
ストレスをためない
ストレスは、パーキンソン病の発症・悪化の原因の一つです。
よって、ストレスを溜めないよう心がけることが大切です。
ストレス発散の機会を設け、気持ちを前向きに保つようにしましょう。
楽しい気分には、ドパミンを増やす効果も期待できます。
パーキンソン病の予防法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
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ドパミンを増やすためには
パーキンソン病の原因は、ドパミンが不足することです。
よって、発症・悪化を防ぐには、ドパミンの量を増やす必要があります。
ドパミンを増やすために有効な方法を2点紹介します。
好きなことをする
ドパミンを増やすには、「好きなことをする」「よく笑う」ことが大切です。
理由は、楽しさ・幸福感には、ドパミンの量を増やす作用があるからです。
また、課題をクリアしたときの「達成感」にも、ドパミンの分泌を促す効果があります。
自分が楽しいと思えることに取り組み、前向きで明るい気持ちで日々の生活を送りましょう。
チロシンの多い食べ物を食べる
「チロシン」は栄養素の一種で、ドパミンの原料になります。
よって、チロシンを積極的に摂ることで、ドパミンの量の増加が期待できます。
チロシンが豊富な食品の例は以下の通りです。
- 大豆
- アーモンド
- 乳製品
- かつお節
- たらこ
パーキンソン病の末期症状のまとめ
ここまで、パーキンソン病の末期症状についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- パーキンソン病の末期症状は、「ウェアリングオフ現象」や「ジスキネジア」
- パーキンソン病の末期症状以外の症状は、「振戦」「筋固縮」などの運動症状
- パーキンソン病の治療方法は、薬物による「対症療法」が中心
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。