高齢化にともない年々増加傾向にあるパーキンソン病。
パーキンソン病を発症すると、様々な症状や合併症があらわれます。
パーキンソン病の症状のひとつである「ジスキネジア」については知っていますか?
本記事では、パーキンソン病とジスキネジアについて以下の点を中心にご紹介します。
- パーキンソン病によるジスキネジアの症状・原因・治療
- パーキンソン病によるジスキネジアの診断
- パーキンソン病によるジスキネジアの予防
- ジスキネジアとジストニアの違い
パーキンソン病のジスキネジアを理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
パーキンソン病について知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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パーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳の中にあるドパミン神経が脱落して消える原因不明の難病です。
主に体を動かす機能に障害があらわれます。
症状は、手足がふるえる(振戦)、動作が小さく遅い(無動)、姿勢が保持しにくく転倒しやすい(姿勢反射障害)、関節の動きに抵抗を感じる(筋強剛)などがあります。
数年かけてゆっくり進行していく病気で、治ることはありません。
50歳以上に多く、40歳以下は若年性パーキンソン病と呼ばれます。
パーキンソン病の症状について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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パーキンソン病のジスキネジアとは
ジスキネジアとは、パーキンソン病の薬が効きすぎることによって出現する不随意運動のことです。
自分では止められない、または止めてもすぐに無意識に体が動いてしまう症状のことを指します。
症状
症状があらわれるのは顔の表情筋や手足、体幹です。
唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口がもぐもぐ動く、歯を食いしばる、目を一度閉じると開きにくくしわが寄る、無意識に手が動く、足が勝手に動き歩きにくい、手足に力が入ってしまう、首がくねくねするなどがあります。
自分で動きを止めることは困難であるため、無理に抑えようとすると悪化する場合もあります。
軽症だと見過ごされますが、重症になると日常生活に影響を及ぼす場合もあります。
原因
ジスキネジアは、脳の神経伝達物質であるドパミンが過剰になることが原因です。
ドパミンが過剰になる原因としては、抗精神薬やドパミンを補充するパーキンソン病薬の副作用が原因です。
パーキンソン病は数年かけてゆっくりと進行するため、病状が進行すると薬が効きにくくなる状況と薬が効きすぎる状況を繰り返します。
薬が効きすぎるときはドパミンの量が過剰になっており、ジスキネジアを発症します。
初期治療の段階でジスキネジアの症状がみられることは少なく、服用期間が長いと起こりやすいです。
パーキンソン病薬の服用から半年から4年ほどでジスキネジアを認めることが多いといわれています。
治療
原因となる薬のコントロールが基本的な治療です。
具体的には、薬の中止、変更、量の調節、他の薬の追加などがあります。
症状が重いケースは症状に対しての薬を処方します。
薬のコントロールが不良の場合は、電気刺激や脳に電極を埋め込む脳深部刺激療法によってジスキネジアを抑えます。
軽症で日常生活に支障がなく、本人が気にしなければ放置する場合もあります。
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パーキンソン病のジスキネジアの診断
パーキンソン病の薬を飲んでいる方に対して、どのような症状か、症状が出現するタイミングはいつかを問診と症状の観察を通して診断します。
採血によって血中のドパミンの量と症状との関連を比較して原因を調べることもあります。
症状が出現するタイミングを調べるのは医師の対応が変わってくるからです。
症状が出現する時期は、薬の血中濃度が高いときか、薬の効き始めや切れるときか、薬が切れたあとかをしっかり観察することが重要です。
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パーキンソン病のジスキネジアの予防
ジスキネジアの予防には、早期発見・早期対応がポイントです。
ジスキネジアは軽症の場合は単なる癖と考えて気づかないことも多いです。
重症化すると日常生活に大きな支障をきたす場合もあるため、パーキンソン病の薬を服用している人はジスキネジアが出現する可能性を意識しておく必要があります。
また、パーキンソン病の患者は、ジスキネジアがあったほうが動きやすい場合もあるため訴えにならないこともあります。
家族の方はジスキネジアに似た症状がないか観察して早めに気がつけるようにしましょう。
パーキンソン病による動きかジスキネジアによる動きか判断が難しい場合は、ビデオに録画して医師に伝えるのもよいでしょう。
パーキンソン病の予防について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読みください。
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ジスキネジアとジストニアの違い
ジスキネジアとジストニアはどちらもパーキンソン病であらわれる症状です。
似ている名前ですが、パーキンソン病の治療薬が原因となるものがジスキネジア、何らかの原因による脳の異常によるものをジストニアと呼びます。
ジストニアは、長時間の筋収縮が特徴でその体の部分がゆがみます。
ジスキネジアは、薬の効果が強くあらわれるときに出現し、ジストニアは薬の効果が弱いときに出現します。
ジスキネジアとジストニアはどちらも自分の意志でコントロールできない不随意運動の一種となります。
パーキンソン病の運動合併症とは?
パーキンソン病の運動合併症とは、薬が効かないことでパーキンソン病の運動障害が出現する「ウェアリング・オフ現象」と、薬が効きすぎることで運動障害が出現する「ジスキネジア」を総称したものです。
血中のドパミンが少ないときに出現するウェアリング・オフ現象と血中のドパミンが多いときに出現するジスキネジアを繰り返します。
パーキンソン病の運動合併症は、L-ドパの保持能力の低下が原因です。
パーキンソン病薬のドパミンを補充するL‐ドパという薬は、代謝が早く効果は短時間です。
内服開始の初期段階では、脳のドパミン神経にL‐ドパが保存されるので効果が続きます。
しかし、数年かけてパーキンソン病が進行するとドパミン神経が減るため、L‐ドパが保存されにくくなります。
L-ドパの保持能力が下がると、ウェアリング・オフ現象があらわれます。
さらに、ドパミンを受ける神経の興奮もコントロール不良になるため、ドパミンが過剰になるジスキネジアも引き起こします。
パーキンソン病の筋固縮について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
パーキンソン病の4大症状に含まれる筋固縮は進行に伴い日常生活に支障をきたします。特に「手足が動かしにくい」「歩きにくい」「顔の表情がこわばる」といった症状が自立した生活を困難にします。パーキンソン病の診断を受けた方、筋固縮の[…]
パーキンソン病とジスキネジアのまとめ
今回はパーキンソン病にあらわれるジスキネジアについてご紹介しました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- ジスキネジアはパーキンソン病の薬が効きすぎることによる不随意運動の一種
- ジスキネジアは問診と観察で症状が出るタイミングを見極めて診断する
- ジスキネジアを予防するには症状を意識して観察し、早期発見に努めることが重要
- 原因がパーキンソン病薬なのがジスキネジア、脳の異常によるものがジストニア
この情報が皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。