令和3年度の介護報酬改定で認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。
介護サービス事業者には対応が求められるため、受講義務化の中身を把握することが求められます。
認知症介護基礎研修で学ぶ内容、受講対象者の範囲など幾つか理解しておくべき項目があります。
今回は以下の項目について説明します。
- 認知症介護基礎研修とはどういうものか?
- 認知症介護基礎研修で学ぶ内容
- 受講義務化の背景
- 受講対象者の範囲
- 認知症介護基礎研修修了後のステップアップ
認知症対応力を向上させてステップアップを目指すことについても触れています。
ぜひ最後までお読みください。
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無資格の介護職員は認知症介護基礎研修の受講が義務に?
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令和3年度の介護報酬改定で、介護に関わる人全員の認知症対応力を向上させるために、無資格者への認知症介護基礎研修受講が義務づけられました。
介護サービス事業者に対する義務づけという点が注意点です。
介護サービス事業者は、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない無資格者について、認知症介護基礎研修を受講させるための措置を講じなければならなくなりました。
ここからは、認知症介護基礎研修がどういうものかについて解説していきます。
認知症介護基礎研修とは?
認知症介護基礎研修を一言で言えば、業務で認知症介護にあたる初任者(新任者)を対象とした研修です。
介護現場の人たちが受講しやすいようにeラーニングを導入した研修を行う自治体が多くありますが、集合型で行われる場合もあります。
eラーニングとはweb サイト上にアップされた学習コンテンツを研修受講者が視聴して学ぶ形式を指します。
認知症介護基礎研修の目的は?
認知症介護基礎研修の目的は、認知症介護に携わる者がサービス提供をする上での最低限の知識・技術を身につけることです。
在宅、施設サービスに関わらず、認知症介護の業務に従事している現任者であれば受講できます。
保有資格や実務経験年数などでの要件はなく、門戸を広げて認知症介護に関わる最低限の知識を介護現場に広く普及させることを目指しています。
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認知症介護基礎研修では何を学ぶ?
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次に、認知症介護基礎研修で学ぶ内容を具体的に確認しましょう。
認知症介護基礎研修の内容
令和3年4月に厚生労働省より示された認知症介護基礎研修の標準的カリキュラムについて説明します。
多くの自治体ではeラーニングでの受講を取り入れており、研修にかかる時間は180分と設定されています。
学習する内容は以下4項目です。
- 認知症の人を取り巻く現状
- 具体的なケアを提供する時の判断基準となる考え方
- 認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
- 認知症ケアの基礎的技術に関する知識と実施上の留意点
認知症介護基礎研修から得られるものは?
認知症介護に関する基礎的知識や技術は、研修受講者の認知症対応力の向上を目指したものです。
研修受講者は、ここで学習した知識や技術を活用して、認知症の人の尊厳を守りながら、本人主体の介護の実現に向けて実践をしていくことになります。
また、介護のサービス提供はチームで行います。
研修受講者は、ここで学んだ判断基準をもとに、同僚やチームリーダーと連携をしながら、サービス提供をしていくことができるようになります。
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受講の義務化が決まった認知症介護基礎研修
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認知症介護基礎研修の創設や義務化に至る経緯について説明します。
認知症介護基礎研修は平成27年一月に策定された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)にもとづき、平成28年度から始まりました。
認知症介護基礎研修の創設以前は、認知症介護実践者研修など一定の介護スキルや実務経験のある者を対象とした研修がありましたが、新人向けの研修がありませんでした。
質の伴う認知症介護の裾野を広げるという観点では、新人を含めすべての職員が基礎的な知識をもっている状態が望ましいです。
それにより、実践者研修の前段階の研修として認知症介護基礎研修の創設が検討されることとなりました。
新オレンジプランにもとづく取り組みを経て、今回(令和3年度の介護報酬改定)の認知症介護基礎研修受講の義務化に至ります。
この義務化については3年の経過措置期間が設けられ、新入職員の受講については一年の猶予期間が設けられました。
経過措置期間の間は研修の受講に対する取り組みは努力義務として位置づけられ、2023年度より、研修受講が完全に義務化されることになります。
認知症介護基礎研修は誰が受講する?
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ここでは認知症介護基礎研修の受講対象者の範囲について解説します。
厚生労働省は2021年3月末に出した通知で、研修受講の義務化の対象とならない職員の範囲について具体的に説明しています。
逆説的な説明の仕方になりますが、義務化の対象とならない職員の範囲を知ることで、研修受講義務のある対象者の範囲が浮かび上がってきます。
受講免除の資格は?
認知症介護基礎研修は無資格者を対象とした研修ですので、看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士等の有資格者は受講免除になります。
実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者も有資格者として受講免除になります。
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受講免除のケースは?
上記の有資格者でなくても、養成施設及び福祉系高校で認知症に関する科目を受講した者は、受講免除の扱いになります。
また、認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の認知症介護に関する研修を修了した者は受講免除の扱いになります。
その他、人員配置基準上、従業者の員数として算定されない従業者や、直接介護に携わる可能性がない者についても受講免除の扱いになります。
受講免除の対象にならないことも
受講免除の対象にはならない場合もあります。
例えば、認知症サポーター養成講座の修了者は受講免除の対象となっていないので、受講義務のある対象者の扱いになります。
認知症サポーター養成講座は一般市民を対象に基礎知識の共有を目的としており、具体的なサービス提供場面が想定されておりません。
認知症介護に業務で従事し、サービス提供していく者を対象とした認知症介護基礎研修とは目的や内容が異なるためです。
また、外国人職員については直接介護に携わり、従業員の員数として算定される従業者であれば、在留資格にかかわらず、研修の受講義務のある対象者となっています。
ただし、外国人職員でもEPA介護福祉士など有資格者は受講免除になります。
認知症介護基礎研修の受講はどこでできる?
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認知症介護基礎研修では基本的に、都道府県、市町村(都道府県知事や市町村長が指定する法人を含む)が実施主体となっています。
介護職員本人が個人で研修受講の申し込みをするのではありません。
申し込みは介護職員が所属する介護サービス事業者を通じて行われます。
繰り返しにはなりますが、無資格者への認知症介護基礎研修の受講義務づけはあくまで介護サービス事業者に対するものです。
介護職員としての更なるステップアップを目指すなら
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認知症介護基礎研修は無資格者や初任者を対象とした研修でした。
一定の実務経験がある者を対象とした認知症対応力向上に向けた研修体系は既にカタチになっています。
「認知症介護実践者研修→認知症介護実践リーダー研修→認知症介護指導者研修」とステップアップ型の研修体系になっています。
段階的にステップアップしていくことで、認知症介護に関する専門性を高めることができます。
研修修了者は実際に介護現場や地域でリーダーや講師の役割を担っているという実績が報告されています。
認知症介護基礎研修を修了すれば、認知症対応力向上を目指して介護現場で経験を積んでいくことになるでしょう。
そのうえで、次のステップアップを目指すならば、認知症介護実践者研修の受講が選択肢になります。
では、認知症介護実践者研修の受講対象者や内容について説明します。
実践者研修は認知症介護基礎研修を修了している者、身体介護に関する基本的な知識や技術を修得している者、概ね実務経験2年程度の者が受講の対象者です。
標準カリキュラムでは、講義・演習に24時間(1440分)、課題設定の実習240分、職場実習4週間、実習のまとめ180分と設定されています。
講義・演習では大項目で「認知症ケアの基本」(840分)、「認知症の人への具体的支援のためのアセスメントとケアの実践」(600分)について学習します。
そして、職場実習にてアセスメントとケアの実践を行います。
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認知症介護基礎研修のまとめ
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これまで、主に認知症介護基礎研修とはどういうものか、研修で学ぶ内容、受講義務化の背景、受講対象者の範囲、更なるステップアップというテーマで説明してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 認知症介護基礎研修は、業務で認知症介護にあたる初任者(新任者)を対象とした研修で、認知症介護に関する最低限の知識を介護現場に広く普及させることを目指している
- 研修で学ぶ内容は4項目あり、研修にかかる時間は180分と設定されている
- 新人を含めすべての職員が基礎的な知識をもっている状態を目指すために認知症介護基礎研修が創設された
- 認知症介護基礎研修の受講対象者は介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を有さない者である
- 養成施設及び福祉系高校で認知症に関する科目を受講した者は受講免除となる一方、認知症サポーター養成講座の修了者は受講免除とならず、受講義務のある対象者という扱い
- 認知症介護基礎研修を修了し、介護現場で経験を積みつつ次のステップアップを目指すならば、認知症介護実践者研修の受講が一つの選択肢になる
これらの情報が少しでも皆様にお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。