元気なときは気にならなくても足腰が弱くなって介護が必要になってくると、家の中の生活もしにくくなります。
そこで検討したいのがリフォームです。
リフォームをすることで介護される方だけでなく、介護する方にとっても負担が軽減されます。
そこで本記事では、介護リフォームについて以下の点を中心にご紹介します。
- 介護のためのリフォームするべき場所
- リフォーム費用が安くできる制度
- スムーズにリフォームを進めるためのポイント
ぜひ最後までご覧いただき、介護リフォームにお役立てください。
また、在宅介護について興味のある方は、こちらもご参考ください。
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介護のためのリフォームとは?
在宅で介護をしていく場合、快適な生活空間にするためには介護リフォームは欠かせません。
介護リフォームの目的やリフォームすべき理由を考えてみましょう。
介護リフォームの目的とは?
介護リフォームには、主に2つの目的があります。
介護される方が暮らしやすくする
高齢の方や介護される方が、できるだけ自分の力で動けるようにすることです。
ある程度自立した生活ができることで、活力のある生活にもつながるでしょう。
日常生活で欠かせないトイレ、入浴などがスムーズに行えるようにリフォームします。
介護する方の負担を軽くする
介護度が上れば上がるほど、介護する方の負担は大きくなります。
身体を支えたり、車いすを家の中で利用したり、肉体的に大変です。
介護する方が足腰を痛めてしまっては、満足な介護もできなくなってしまいます。
介護する方の負担を少しでも軽減するのが介護リフォームです。
介護リフォームすべき理由とは?
誰でも高齢になると足腰が弱くなります。
今まで平気だった階段の上り下りが辛くなったり、少しの段差でつまずいたりします。
高齢者の事故の80%は、家の中で起こるといわれているのです。
家で転倒して骨折、入院して認知症を発症するというケースも少なくありません。
できるだけ家での事故を減らすためにも、介護リフォームを検討してみましょう。
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介護リフォームの必要性について
介護リフォームは、なぜ必要なのでしょう。
介護リフォームのメリットを考えてみましょう。
日常生活の負担を減らす
高齢になると足腰が弱くなってきます。
体が動くときには気が付かなかった場所、とくに階段や段差が負担になります。
日常生活の中で動きやすく、身体への負担を軽減するために介護リフォームは必要です。
家の中の事故を未然に防ぐ
転倒などで骨折などをすると、寝たきりの生活になってしまう可能性があります。
実は、高齢者の事故は8割が家の中で起こっているのです。
階段などの大きな段差だけでなく、部屋と部屋の間にある小さな段差も高齢者にとっては危険なものです。
こうした家の中の事故を未然に防ぐためにも、介護リフォームは必要です。
介護者の負担を減らす
介護リフォームは、介護される方だけでなく介護する方にとっても必要です。
介護は毎日のことですから、少しでも介護者の方の負担を軽くしなくてはなりません。
そのため、車椅子が楽に通れるスロープやトイレ、お風呂などの介護リフォームが必要です。
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介護リフォームを検討すべきタイミング
介護リフォームは、家の段差が辛く感じたり、不便に思ったときがタイミングです。
将来何があるかわからないので、本格的な介護が必要になる前に検討することです。
なかでも、介護リフォームを最も検討すべきタイミングは、要介護認定を受けたときです。
要支援・要介護認定を受けたタイミングで、自宅での事故が多くなると考えた方がいいでしょう。
また、要支援・要介護認定されると、介護リフォームに補助金が支給されます。
20万円の範囲内で、介護保険の負担金が1割で自己負担が最大2万円で済みます。
介護リフォームの負担が軽減されるので、ぜひ利用しましょう。
介護用にリフォームすべき場所はどこ?
介護リフォームをする場合、どこにどのようなリフォームをすればいいのかを考える必要があります。
やみくもにリフォームするのでは、費用ばかりかかってかえって邪魔になってしまうこともあります。
玄関のリフォーム
玄関の介護リフォームのポイントを紹介します。
手すりをつける
手すりは、移動するとき、上り下り、立ったり座ったりといった動作を補助します。
スロープを設ける
スロープを設けることで、車いすを利用するときや歩行するときに段差がなくなりスムーズな移動が可能になります。
引き戸にするなど使いやすい扉にする
スライド式の引き戸にすれば、握力の弱くなった高齢者でも開け閉めしやすくなります。
また、間口が広く開放できるので、車いすの出入りもしやすくなります。
トイレのリフォーム
トイレの介護リフォームのポイントを紹介します。
手すりをつける
トイレでは、立ったり座ったりという動作が楽にできるように手すりをつけます。
体重全体が手すりにかかる場合もあるので、場合によっては壁の補強も必要になります。
和式から洋式にする
和式トイレを使用する場合には、足腰に大きな負担がかかります。
負担ができるだけかからないように、和式トイレから洋式トイレへの交換をします。
浴室のリフォーム
浴室の介護リフォームのポイントを紹介します。
手すりをつける
手すりは、洗い場から浴槽に入るとき、浴室から洗面所へ移動するときなどに使用します。
とくに浴槽から立ち上がるときに手すりを使えば、身体を安定して持ち上げることができます。
滑りにくい床にする
浴室は水に濡れて滑りやすくなっています。
足腰が弱っていると転倒しやすいので、滑りにくい床材に交換します。
またぎやすい浴槽にする
洗い場から浴槽に入るとき、足を上げてまたぐときにバランスを崩して転倒する危険性があります。
洗い場と浴槽の段差をできるだけ小さくするためのリフォームを行います。
階段のリフォーム
階段の介護リフォームのポイントを紹介します。
手すりをつける
階段の手すりの取り付けは、介護リフォームの中でも多いです。
使う人の体型に合わせて、高さ調節や手すりの太さを考えて取り付けることが大切です。
段差を少なくする
高く足を上げる必要がないように、階段の数を増やして一段の高さを低くするリフォームも可能です。
滑り防止
階段は、滑りやすいので落下の危険性があります。
階段に滑り止めをつけたり、カーペットなどを敷くリフォームができます。
床のリフォーム
床の介護リフォームのポイントを紹介します。
段差をなくす
家の中のさまざまな場所の床には、わずかな段差がある場合も多いものです。
元気なときには気が付かなかった段差でも、足腰が弱くなるとつまずきの原因となります。
段差をなくして、スロープを設置するなどの介護リフォームが可能です。
滑り止めのカーペットを敷く
部分的に滑り止めのカーペットを敷くと安心です。
介護リフォームの費用相場
リフォーム内容により費用は大きく変わってしまいます。
なのでここでは先に紹介した、リフォームすべき場所に沿って費用相場を紹介していきます。
玄関のリフォーム
玄関リフォームではスロープや手すりの設置が多いと思います。
スロープや手すりの設置工事の相場は20万円前後です。
しかし、スロープや手すりを設置するため、段差を撤去する工事や土間コンクリートのハツリ工事、門扉の撤去工事などが発生するケースがあります。
そういった、付帯工事を合わせると40〜50万円程度が相場になります。
トイレのリフォーム
和式のトイレから洋式のトイレへ変更する工事の費用は、20万円〜40万円程度が相場です。
また、トイレのスペースを拡張する場合は10万円〜30万円程度、トイレを増設をする場合は40万円〜60万円程度が相場のようです。
浴室のリフォーム
滑りにくい床材へ変更する場合は10万円〜20万円程度、手すりの設置は数万円程度の費用相場です。
浴槽の交換をする場合は、50万円〜100万円程度が必要です。
階段のリフォーム
階段に手すりをつけるには、数万〜10万円程度の相場です。
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介護リフォームの費用が安く済む場合もある?
介護のためのリフォームはお金がかかって、なかなか踏み出せないという方も多いでしょう。
しかし、高齢者を対象に介護リフォームの費用が安く済む場合もあります。
助成金を上手に活用して、必要な介護リフォームをしてみませんか。
居宅介護住宅改修費
介護施設や病院で介護・治療をするのではなく、自分の家で介護生活を送る方に限って支給されます。
介護保険制度で受けられる助成金や市町村で受けられる助成金があり、それぞれ条件があるので事前に確認しておきましょう。
高齢者住宅改修費用助成制度
最も身近な助成金制度で、介護保険が適用されます。
私たちは、40歳から介護保険料を納めますが、介護保険から住宅改修費用助成金が支払われます。
そのため40歳に満たない要介護者には適用されないので注意しましょう。
要支援1~2あるいは、要介護1~5に認定された被保険者が対象になります。
認定を受けるためには、各市町村の窓口で申請し医師の診断書を揃えて、面接を経た上で決定されます。
住宅特定改修特別税額控除
介護リフォームは税金控除の対象にもなります。
控除額としては、リフォーム工事額200万円までという条件の元、10%が控除となります。
助成金等を受ける場合には、助成金額を差し引いた額の控除となります。
対象になるリフォームとは?
介護リフォームで助成金が支給される工事内容は決められています。
介護リフォームは、介護保険の被保険者の生活を補助するためのものです。
介護に関係のない工事とみなされた場合、支給されないこともあります。
対象になるリフォームは
- 手すりの取り付け
- 床の段差解消
- 滑り防止
- 使いやすい扉への取替え
- 和式トイレから洋式トイレの取替え
支給される額は?
支給される額は、被保険者1人につき20万円までです。
満額の20万円のリフォーム費用だとすると、自己負担が1割の場合には2万円、3割の場合には6万円の自己負担となります。
その他の生活保険サービスについて興味のある方は、こちらもご参考ください。
高齢化が進み、要介護者の増加や介護期間の長期化などがみられるようになりました。また、老老介護という言葉もあるように介護する家族も高齢化しています。そういった現状を踏まえ、介護の負担を減らすために作られた制度が介護保険です。[…]
介護リフォームを行うには?
介護リフォームで助成金を受ける場合には、着工前に申請する必要があります。
リフォームが完了してから申請しても、助成金が出ないので注意しましょう。
助成金支給までの流れとしては
- 工事前に承認申請を行う
- 承認されてから工事着工
- 工事終了状況を報告し助成金の支給を申請
- 助成金支給
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賢く介護リフォームしよう|介護保険適用のための条件
介護リフォームの検討は、介護保険が適用されるタイミングがベストです。
では、介護保険による介護リフォームの条件をみていきましょう。
介護保険による住宅改修費支給のための条件
介護保険による介護リフォームには、いくつかの条件があります。
補助金額
介護保険による介護リフォームの補助金額は20万円が上限となっています。
このうち、自己負担金が1割の方は2万円となります。
実質18万円が補助金額となります。
上限の20万円は、何回でも分割が可能です。
手すりを付けるのに10万円、段差をなくすのに10万円といった具合です。
また、要介護区分が3段階以上進んだ場合、再度20万円の介護リフォーム補助が受けられます。
支給方法
介護リフォームの補助金の支給には、「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。
「償還払い」は利用者が業者に工事代金を支払い、あとからその分を支給する方法です。
「受領委任払い」は自己負担金だけ業者に支払い、残金は直接自治体が業者に支払います。
償還払いの場合、一時的であってもまとまった金額を用意しなければなりません。
自治体によっては、あらかじめ申請することで受領委任払いが可能になります。
利用手続きの流れ・必要な書類
介護保険で介護リフォームをする場合には、以下の必要書類を用意しなければなりません。
- 介護保険被保険者証
- 住宅改修内容を記載した書類
- 改修場所や費用見積を記入した申請書
- 改修前の状態の分かる写真
- ケアマネジャーの作成した住宅改修理由書
- 施工業者の作成した工事図面や工事費見積書
- 領収書や工事費内訳書
- 改修後の状態の分かる写真
こうしてみると、必要書類をいろいろ用意する必要があるので、ハードルが高そうです。
しかし、ほとんどの書類作成はケアマネージャーやリフォーム業者がやってくれます。
市区町村による補助金との違い
介護保険以外にも介護リフォームの補助金はあります。
それが市区町村独自で行っている助成金です。
助成金額は、各自治体によって大きく違います。
また、所得額の制限を設けているところもあり、介護保険に比べて条件が厳しくなっています。
また、自治体によっては、介護保険での補助と併用できないケースもあります。
介護保険でまかなえない工事代金を自治体が補うという考え方からです。
各自治体に直接問い合わせてみましょう。
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介護リフォームで保険を適用する際の注意点
助成金に関して注意したいのが支給方法です。
支給方法には、償還払いと受領委任払いの2種類があります。
償還払いは、介護リフォームにかかった費用を全額業者に支払い、その後領収書と申請書を提出して自己負担金分を除く金額が支払われます。
一方で受領委任払いは、工事費用は初めから自己負担割合だけを業者に支払います。
残りの分は市町村から業者に支払われます。
市町村によって支給方法は変わりますが、どちらも選べる市町村も増えてきました。
やはり負担が少ないのは、受領委任払いではないでしょうか。
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介護リフォームの事例
ここで、実際に行った介護リフォームの事例をご紹介します。
【トイレ】
リフォームの内容 | 寝室横のトイレ増築・畳からフローリングへの変更など |
費用 | 約390万円 |
工期 | 3日間 |
ポイント | 車椅子のまま行ける広々としたトイレ |
リフォームの内容 | トイレへの手すり設置 |
費用 | 約25万円 |
工期 | 3日間 |
ポイント | 壁に下地補強を施し、安全性アップ |
【寝室】
リフォームの内容 | 寝室の床を畳からフローリングへ変更・段差解消など |
費用 | 約130万円 |
工期 | 19日間 |
ポイント | 寝室にベッドを置くためのリフォーム |
【浴室】
リフォームの内容 | 浴槽交換・段差解消など |
費用 | 約121万円 |
工期 | 7日間 |
ポイント | 温度差を考慮した浴室・段差解消で安全性アップ |
【全体的なリフォーム(リノベーション)】
リフォームの内容 | リビングと和室の一体化・床材の変更など |
費用 | 約471万円 |
工期 | 30日間 |
ポイント | 車椅子でも生活しやすいバリアフリー重視のリフォーム |
住宅の構造やリフォーム会社によって、費用や工期は変動します。
実際に介護リフォームを依頼する際は、納得がいくまで事前確認を行いましょう。
スムーズに介護リフォームを進めるために
介護リフォームでは、助成金が大きなネックになります。
介護保険の適用範囲は決まっているので介護リフォームに慣れた業者でなければ、助成金を受けることができない可能性もあります。
良心的な業者であれば、上限の20万円以内で必要な介護リフォームを提案してくれることでしょう。
施工業者を選ぶときには、ケアマネージャーさんの助言を受けることも大切です。
ケアマネージャーさんはたくさんのケースを知っているので、介護の状況に合わせたリフォームを提案してくれます。
また、福祉用具を専門にしている業者さんなら介護状況や家の状況、生活環境などからきめ細かな提案が期待できます。
家族の負担が大きい在宅介護。負担を解消するための相談先としては、家族やケアマネージャーが一般的です。一方で、「信頼できるケアマネージャーに会えない」「ケアマネージャーの選び方が分からない」と悩んでいる方も多いと思います。本記[…]
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介護リフォームに役立つ資格
介護リフォームに役立つ資格として、福祉住環境コーディネーターという資格があります。
資格の取得方法、仕事内容について紹介していきます。
福祉住環境コーディネーターとは
高齢者や障がい者に対して安全に、そして快適に暮らすための住環境を提案・整備するアドバイザーです。
1級から3級までの3つの級があり、試験に合格すると福祉住環境コーディネーターの名称で働くことができます。
資格取得方法
2・3級は年2回、1級は年1回行われる試験に合格すると資格取得となります。
試験に向けた勉強方法には、テキストによる独学、もしくは福祉住環境コーディネーターの通学・通信講座を受講する方法の2つがあります。
仕事内容
福祉住環境コーディネーターの仕事は主に3つあり、
- ①住宅改修のアドバイス
- ②福祉用具や介助用具の選定アドバイス
- ③住宅改修費支給申請の理由書作成
となります。
1・2は環境や状況に合わせ、多くの種類から適した用具を選ぶといった内容です。
3の住宅改修費支給申請とは、在宅の要支援1または2の認定を受けた人が日常生活で必要とする住宅改修の工事を行う際に、改修が必要と認められれば自治体から改修工事費が支給される仕組みです。
慣れ親しんだ家で住み続けたいと考える高齢者はとても多いです。一方で、年齢を重ねることで足腰の筋肉や心肺機能が衰え、ちょっとした段差につまずいたりトイレや風呂などの生活動作に困難が生じます。そういった住環境をリフォームしたいといった声[…]
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介護リフォームのまとめ
ここでは、介護リフォームについて紹介してきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護に必要なリフォームするべき場所は、玄関、トイレ、浴室、階段、床
- リフォーム費用が安くできる援助制度には、介護保険の住宅改修費用助成制度がある
- スムーズにリフォームを進めるためには、ケアマネージャーさんに相談することが大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。