介護施設を利用する際に基本料金に加え、上乗せ介護費を請求されることがあります。
上乗せ介護費とは、いったい何のための費用なのでしょうか。
本記事では上乗せ介護費用について、以下の点を中心にご紹介します。
- 上乗せ介護費用は何のためにあるのか
- 上乗せ介護費用が発生する介護施設
- 上乗せ介護費用の支払方法
上乗せ介護費が必要になったときのためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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手厚いサポートが受けられる?
上乗せ介護費は、通常よりも手厚いサポートを受ける際に必要な費用です。
具体的な内容をみていきましょう。
上乗せ介護費とは?
上乗せ介護費は、介護付き有料老人ホームなどの特定施設において通常よりも手厚いサポートを受ける際に支払う料金です。
まず前提として介護保険サービスは、要介護度や料金ごとに提供されるサービスが厳格に決められています。
理由は、すべての利用者にいつでも同レベルの介護サービスを提供するためです。
たとえば、介護保険法による規定がなければ介護サービス内容や料金は事業者によって大きな差が出てしまいます。
同じ利用料を支払っても、事業者Aと事業者Bで提供サービスが異なる場合があるということです。
事業者ごとのサービス内容の違いは、そのまま利用者間での不公平に直結します。
すなわち事業者Aの利用者は満足度が高い一方、事業者Bの利用者は満足のいくサービスを受けられないなどのケースがあり得ます。
しかし介護保険法による明確な規定があれば、どの事業者でもサービス内容はほぼ同等となります。
利用者によって提供サービスに明らかな差がつくことは少なくなります。
しかし、同じ要介護度の方であっても必要とするサービスには違いがあります。
たとえば、さほどサポートがいらない場合もあれば、手厚いサポートを必要とする方もおられます。
そうはいっても、同じ要介護度の方同士で提供サービスに差をつけることはできません。
提供サービスに差が出ると、おなじく利用者間の不公平につながるからです。
そこで役立つのが、上乗せ介護費です。
支払った方のみ介護保険の規定以上のサービスを利用できるため、基本料金が同じ利用者間で不公平が生じにくいのがメリットです。
上乗せ介護費は人件費?
上乗せ介護費は、ほぼ人件費だと考えてかまいません。
なぜなら上乗せ介護費は、介護保険法で定められた基準以上の人員を配置するための費用だからです。
在籍する介護スタッフの人数が多ければ、その分一人あたりの利用者に割ける人手は大きくなります。
つまり利用者にとっては、手厚いサポートを受けられるというメリットがあります。
反面、特定施設側にとっては利用者一人あたりの人件費が高くかかります。
そこで人件費として、上乗せ介護費を設定することで提供サービスと収益を釣り合わせることができます。
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人員基準がポイント
上乗せ介護費は、すべての特定施設で発生するわけではありません。
上乗せ介護費が発生する特定施設を見分けるためには、人員基準がポイントとなります。
人員基準とは?
人員基準とは、一人のスタッフが対応する利用者の人数です。
通常基準での人員配置は3:1です。
つまり利用者3人に対し、配置スタッフは一人となります。
一方、手厚いサポートを行う施設では、2:1や1:1で人員配置する場合が多いです。
すなわち一人の利用者につき、1~2人のスタッフが配置されています。
なお、人員基準はあくまで基準であり、常時の付き添いをあらわすわけではありません。
1:1の人員配置であっても、一人の利用者のそばに四六時中スタッフが付き添うことはほとんどありません。
たとえば夜間などは、人件費削減のために人員を減らすのが一般的です。
そのため、大きな施設であっても夜勤スタッフは1~2人などのケースもしばしばです。
上乗せ介護費は人員基準次第?
介護施設が利用者に上乗せ介護費を請求できるかは、施設の規模によって異なります。
また、どんなに規模の大きな施設であっても既定の人員基準を満たさなければ上乗せ介護費は請求できません。
ちなみに、前提として上乗せ介護費を請求できるのは特定施設のみです。
特定施設とは、厚生労働省が定めた基準を満たす介護施設のことです。
【特定施設の例】
上乗せ介護費を請求するための人員配置基準は、施設の入居者が30人未満かどうかで異なります。
要介護者が30人以上いる特定施設
必要な人員配置は、2.5:1です。
たとえば入居者が25人いるなら、介護・看護スタッフは最低10名在籍しなければなりません。
要介護者が30人未満の特定施設
必要な人員配置は、最低基準+2人です。
ちなみに最低基準は、3:1です。
たとえば入居者が21人の場合、スタッフは最低7人必要です。
上乗せ介護費を請求するには+2人が必要ですので、実際には9人のスタッフが求められます。
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上乗せ介護費はいつ払うの?
上乗せ介護費はひと月ごとに支払います。
一般的には、毎月の施設利用料やサービス利用料と一緒に請求されます。
ただし支払方法は施設によって異なるため、場合によっては、数カ月分の費用を一括請求されることもあります。
上乗せ介護費の金額は、施設によって設定が異なります。
また、上乗せ介護費は介護保険適用外です。
すなわち、費用は全額自己負担となります。
上乗せ介護費以外にかかる費用は?
特定施設を利用するには、当然ながら上乗せ介護費以外にもさまざまな費用が発生します。
介護施設で発生する費用の主な種類と相場を紹介します。
【主な費用の内訳と相場(自己負担一割)】
- 施設介護サービス費:2万円~3万円
- 居住費(家賃):数千円~数十万円
- 食費:3万~5万円程度
- 水道光熱費・管理費:数千円~数万円
- 日常生活費・消耗品費(歯ブラシ・おむつ・おかしなど):数百円~数千円
具体的な金額や種類は、特定施設によって異なるため一概には言えません。
ただし、一般的には月額10万~30万円程度の費用がかかります。
また、介護施設によっては、月額利用料金のほかに「入居一時金」が発生することもあります。
入居一時金はいわゆる前払い金です。
金額は施設によって異なりますが、数十万~数百万円程度のことが多いです。
介護施設費用の中でも最も金額が大きくなりやすい費用ですので、入居前に必ず確認しましょう。
なお、公的な介護施設では入居一時金は発生しません。
たとえば特別養護老人ホームや、老人保健施設などがあてはまります。
オプションサービスも選択肢の一つ
オプションサービスは、追加料金によって利用できる介護サービスです。
上乗せ介護費とよく似ており、実際のところ両者の違いは明確ではありません。
ただし、上乗せ介護費サービスは身体的介護の側面が強いのに対し、オプションサービスは緊急性の高くないサービスであることが多いです。
たとえばペットの散歩の代行や、日用品の買出し代行、散歩の付き添いなどが一般的です。
とくにプライベートの充実に役立つサービスのため、生活の彩りとしての利用がおすすめです。
ただし、オプションサービスの内容は介護施設によって異なります。
場合によっては、上乗せ介護費と同等に手厚い身体介護を受けられる場合もあります。
どのサービスをどの程度利用すればよいかは、利用者や介護施設によって異なります。
満足のいくサービスを受けるためにも、内容・料金をしっかり比較検討しましょう。
なお、オプションサービスは介護保険適用外です。
つまり利用料金は全額自己負担となります。
上乗せ介護費のまとめ
ここまで、上乗せ介護費についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 上乗せ介護費用は、介護保険法の規定以上の手厚いサービスを受けたい方が人件費として支払う費用
- 上乗せ介護費用が発生するのは、利用者3人未満につき一人のスタッフを配置している特定施設
- 上乗せ介護費用の支払いは、月額料金として支払うのが一般的
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。