支援が必要な方にサポートを行う仕事といえば「介護」と「看護」を思い浮かべる方も多いと思います。
しかし、実際のところ介護と看護の違いが分からない方や、どのように違うのか知りたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では介護と看護の違いについて以下の点を中心にご紹介します。
- 介護と看護の目的の違い
- 介護と看護の職種の違い
- 介護と看護の仕事内容の違い
また現在介護士の方が看護師を志すメリットなどについても触れておりますので、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
介護に関する資格についても解説していますので、ぜひこちらの記事もご覧ください。
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介護と看護の違い
介護と看護の違いがわからない方も多いと思いますので、この2つの違いからご紹介していきます。
ここでは目的、職種、仕事内容においての違いについて触れていきます。
介護と看護の異なる点についてすでにご存知である方もいるかもしれませんが、ここで一緒におさらいしておきましょう。
目的の違い
介護と看護はまずケアを行う目的が違います。
介護の目的は対象者が安全で快適な日々を送れるようにすることです。
ちなみに介護の対象者はご高齢の方や、身体に障がいがあることをなど理由として支援を必要としている方と限られています。
該当する対象者の方に対して生活全般のサポートを行います。
次に看護の目的ですが、実は介護とは異なっている点が多いです。
まず、看護の目的は対象者の身体と心の状態が回復・治癒させることです。
「看護」の対象者は、ご高齢の方や身体に障がいがある方だけでなく、全年代の病気・怪我を負っている方などが幅広く含まれます。
また看護は身体の状態を治癒するだけでなく、予防するための指導や対象者の家族のケア・相談なども担います。
職種の違い
次は、職種の違いについてです。
まず、介護は福祉職という職種に該当します。
具体的な職種を上げると、介護福祉士やケアマネージャー、介護職員初任者研修や実務者研修(ヘルパー)修了者などが含まれます。
一方で看護は医療職という職種に該当します。
医療職はあくまでも「治療」に重点を置きながら医療行為などのケアを行うため、医者や看護師、准看護師、理学療法士などが含まれます。
仕事内容の違い
ちなみに介護と看護は目的と職種が違っているため、必然的に仕事内容も異なります。
分かりやすくいうと、介護は上記で紹介した対象者の方に対して身体介助や生活援助などの業務を行います。
- 身体介助:食事介助、入浴介助、排泄介助など
- 生活援助:掃除や調理、洗濯などのサポート
提供するケアは、対象の方の身体や心の状態に合わせて変わります。
介護スタッフは、対象の方が自立した日々を送ることができるように相手を一番に考えながらニーズに合わせてサポートを提供します。
一方、看護は対象者の状態に対する治療や予防、服薬管理や点滴、診察の補助などの業務を行います。
介護と看護を比べると、看護は医療行為を行うことができるというところであるといえるでしょう。
看護師が行う医療行為(点滴や採血など)は、資格や専門知識などがない方は実施できません。
このように介護と看護は、このようにそれぞれ違っていることが分かりました。
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資格にも明確な違いがある?
介護は福祉職、そして看護は医療職が行う行為であるため資格にも明確な違いがあります。
まず、介護士の資格には「介護職員初任者研修」や「実務者研修」そして「介護福祉士」などがあります。
この中の「介護職員初任者研修」と「実務者研修」は民間資格であるため、介護の経験や資格がない方でも取得することが可能です。
ちなみに介護福祉士は国家資格ですが、介護の現場で3年(実働日数は540日)以上の経験を重ねて、以下の条件からどれか一つを満たすと受験資格を得ることができます。
- 実務者研修を修了している
- 介護職員基礎研修を修了している
- 喀痰吸引等研修を修了している
その他にも、2017年〜26年度に養成施設を卒業する方は、国家試験の取得に関わらず卒業後5年間は、介護福祉士取得者とみなされます。
2027年以降卒業の方は介護福祉士試験の受験が必須となります。
しかし、介護の場合には資格を取得していない方も介護士という職種で現場で働くことができるというメリットがあります。
また、実務者研修や介護福祉士など、資格を取得していくことでさらに活躍していけるところも介護の魅力です。
一方、看護師の資格には国家資格の「正看護師」と、都道府県知事が発行する免許である「准看護師」があります。
どちらも似ている印象を受けますが、看護師として働くためには必ず資格が必要であるところがこの2つが決定的に違っているところです。
また、看護師を取得するには、文部科学大臣や都道府県知事の指定した大学や看護師養成所などを卒業する必要があります。
准看護師を取得したり、指定の大学や学校などを修業したりしてから実務経験を積むと正看護師の受験資格を得ることが可能です。
ちなみに、看護師になるためには必要な学科を修了する必要がありますが、医療現場では特に資格の優位性が高いため介護よりも収入の設定が高めになります。
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お給料にも違いがある
介護と看護ではお給料にも違いがあります。
介護士のお給料と看護師のお給料で分けてご紹介します。
よりリアルなデータで比べるために、厚生労働省が発表した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」を元に解説していきます。
平成31年2月時点の月給・常勤者のお給料で比較しておりますので、ぜひ違いを比較しながらご覧ください。
看護師のお給料
まずは、看護師のお給料についてです。
平成31年2月時点の看護師の平均お給料は、37万2940円になります。
また次の見出しで触れておりますが、介護士のお給料と比較していただくと看護師のお給料の方が高いことが分かります。
この差額が発生する理由として、看護師の資格が必須である医療行為を行う場面が多いということも関係していると考えられます。
また、夜勤を担当すると夜勤手当がつくためお給料を増額させることも可能です。
介護士のお給料
次は介護士のお給料についてです。
平成31年2月時点の介護職員全体を対象とした平均お給料は、30万120円です。
また、何か資格を取得している介護職員だけを対象とした平均お給料は、全体平均よりやや高い30万2480円となっております。
さらに、介護福祉士を取得している方を対象とした平均お給料は、31万3590円になります。
介護福祉士を取得している方の平均お給料と看護師の平均お給料と比べてみると、介護士のお給料の方が5万9350円分低い金額となっています。
しかし、さらに資格を取得していると資格手当がついたり、夜勤の回数などで夜勤手当の金額も変わったりしていきますので、お給料の金額をこれ以上に高めていくことも可能です。
介護資格なしの方のお給料
介護のお仕事は資格のない方でも行うことができますが、果たして介護の資格なしの方のお給料はおいくらなのでしょうか。
資格なしの方の平均お給料は、26万4800円になります。
また、介護職員全体の平均お給料と、資格なしの方の平均お給料を比べてみると、差額は3万5320円であることが分かります。
さらに介護福祉士を取得している方の平均お給料と、資格なしの方の平均お給料を比較すると、差額はなんと4万8790円という結果が出されました。
このことから、介護の資格があるかないかの違いによって、約3万5000円~5万円もの差額が生まれることが分かりました。
介護系の資格の中でも、特に「介護福祉士」は需要が高めであるため、収入を増やしたい方はぜひ取得されることをおすすめします。
介護保険サービスにも違いがある?
介護保険で利用できるサービスの中に「訪問介護」と「訪問看護」がありますが、果たしてこの2つにも違いはあるのでしょうか。
それぞれのサービス内容も併せてご紹介します。
訪問介護とは?
そもそも訪問介護は、厚生労働省にて以下のように定義されています。
「訪問介護」とは:訪問介護員等が、利用者(要介護者等)の居宅を訪問し、入浴・排せつ・ 食事等の介護、調理・洗濯・掃除等の家事等を提供するものをいう。
ちなみに訪問介護員等とは、介護福祉士や実務者研修、介護職員初任者研修など、介護の資格を取得している方のことを示します。
「身体介護」と「生活援助」そして「通院等乗降介助」を行うサービスであると定義されています。
- 身体介護:被介護者の身体に触れて行う支援を行うこと(排泄・食事など)
- 生活援助:身体介護以外で、日常生活の支援を行うこと(掃除・洗濯など)
- 通院等乗降介助 :病院などに通う際の乗り降りなどの支援を行うこと
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訪問看護とは?
次に訪問看護についてですが、こちらも厚生労働省により以下のように定められています。
「訪問看護」とは:疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。
上記の文章より、訪問看護は主に医療職の看護師が提供するサービスであることがお分かりいただけると思います。
また、訪問看護では療養上で必要な身体介護・指導、医師の指示による医療処置や経過観察、ターミナルケア、床ずれ・リハビリ・認知症の方へのケアなども行います。
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サービスの違いは?
訪問介護と訪問看護はまず、サービスを提供する職種が違っています。
訪問介護の場合には介護士をはじめとした福祉職が、そして訪問看護は看護師などの医療職がサービスを提供することが多いです。
また訪問介護の場合には、介護士が行うことができる医療処置が限られていますが、訪問看護では医師の指示の下で看護師による処置を受けることができます。
(研修を受けている介護士の場合は、例外として訪問介護でも、痰(たん)の吸引および経管栄養を実施することができる)
日常生活の支援を行って欲しい時に訪問介護を、治療などを行って欲しい時には訪問看護というように使い分けられる場合も多いです。
看護と介護をうまく組み合わせることで生活の質を高める効果もありますので、ぜひ両方のサービスを活用されることをおすすめします。
介護福祉士から看護師になりやすくなるかも?
現在、介護福祉士などの資格を保持している方が看護師を目指す場合に従来よりも短い期間で資格を取得できるようになる共通基礎課程制度が厚生労働省で検討されています。
具体的に概要を説明すると、まずは医療や福祉の資格を取得する際に学ぶ一年目のカリキュラムに共通科目として「共通基礎過程」を設置します。
現在、介護福祉士の方が看護師の資格を取得するには3年間かかりますが、共通基礎過程制度を利用すると一年目の「共通基礎過程」をクリアすることができます。
そのため、最短2年間で国家試験の受験資格を得ることが可能となるという魅力的な制度です。
共通基礎過程制度は、そもそも福祉・医療の現場における人材不足を解消するために提案されました。
また介護福祉士が看護師になることで、介護と医療、両方の知識を持った人材を獲得することができるとも考えられています。
この制度が適用されたら、介護福祉士と看護師以外にも以下のような職種が対象となります。
対象の職種:看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、診療放射線技師、臨床検査技師、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、保育士
(今後の議論の進行により、制度の詳細等が変更される可能性がありますのでご了承ください)
看護師から介護福祉士になるメリット
看護師から介護福祉士になることで受けることができるメリットがあります。
具体的に挙げると4つありますので、併せてご紹介します。
看護師の知識と経験を活かせる
看護と介護の関係性は密接であるため、医療職のチームと連携が取りやすいと感じる方も多いです。
また被介護者の体調の変化などにも気づきやすいため、介護の資格をお持ちでなくても自信をもってケアを行うことができます。
就職の選択肢が広がる
看護師や介護福祉士は、ただでさえ人手不足が問題視されている職種であるため両方を取得している方は高く評価されます。
就職の際の選択肢が増えるため、自分に合っているところを選んで働けるようになります。
ステップアップするために取得可能な資格が増える
介護福祉士以外にも取得することができる資格はあるため、ステップアップをしたい方にもおすすめです。
例えば、被介護者の日常がより自立したものとなるように計画することができる「ケアマネージャー」や「サービス管理責任者」などの資格を取得することが可能です。
介護教員になれる道が開かれる
そもそも、介護福祉士養成学校の教員や、初任者研修・実務者研修の講師を「介護教員」と呼びますが、介護福祉士になることで介護教員になれる道が開かれます。
介護教員は教員免許がなくても就ける職種ですが、介護士や看護師として5年以上現場で勤務してきた経験が必要となります。
介護教員は、これまでの介護の経験や看護の活かすことができる職業です。
介護と看護の違いについてのまとめ
ここまで、介護や看護の違いについて中心にお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護は対象者が安全で快適な日々を送れるようにするために行い、看護は対象者の身体と心の状態が回復・治癒させるために行う
- 介護士は福祉職で、看護師は医療職
- 介護は対象者のニーズに合わせて身体介助や生活援助などを行い、看護は対象者の状態に適切な治療や予防、服薬管理や点滴などを行う(医療行為も含む)
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。