介護福祉士試験は、介護系の資格試験の中でも唯一の国家試験です。
介護福祉士試験は筆記と実技の2つですが、受験者によっては実技試験を免除される場合もあります。
本記事では介護福祉士試験の実技について、以下の点を中心にご紹介します。
- 介護福祉士試験の試験内容
- 介護福祉士試験のポイント
- 介護福祉士試験で実技を免除されるための条件
介護福祉士試験の実技の対策のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
介護資格に興味がある方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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介護福祉士試験とは
介護福祉士試験とは、介護福祉士の資格を取得するための試験です。
なお、介護福祉士資格は、介護に関する資格の中でも唯一の国家資格にあたります。
介護福祉士試験は、「筆記試験」と「実技試験」の2つから成り立ちます。
筆記試験は例年1月の最終日曜日、実技試験は3月上旬に実施されます。
筆記試験は、全11科目で総得点125点です。
合格点は毎回異なるものの、おおむね6割~7割以上の得点が求められます。
実技試験は総得点100点で、おなじく6割程度の得点が必要です。
ただし、実際の合格基準点は、問題の難易度にあわせて前後することが一般的です。
ちなみに、介護福祉士試験の合格率は平均70%程度です。
介護福祉士試験について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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出典:[介護福祉士国家試験]資格制度の概要:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
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介護福祉士の実技試験免除対象者
介護福祉士試験では、実技試験が免除される場合があります。
実技試験が免除されるのは、以下の4つのルートから介護福祉士試験を受験する方です。
福祉系高校ルート
福祉系の高校を卒業して、介護福祉士試験に臨むルートです。
ただし、2008年以前の入学者と2009年以降の入学者では、実技試験免除の要件が異なります。
2009年以降に入学した方は、実技試験免除の対象者です。
すなわち、卒業後に筆記試験に合格すれば介護福祉士の資格が取得できます。
一方、2008年以前に入学した方は、筆記試験・実技試験の両方に合格しなければなりません。
ただし、2008年以前の入学者でも「介護技術講習」を修了した方は実技試験が免除されます。
介護技術は介護福祉士養成施設が実施する講習で、32時間以上の受講により修了します。
経済連携協定(EPA)ルート
資格取得のために来日した外国人の方向けのルートです。
具体的には、EPA対象国であるフィリピン・インドネシア・ベトナムの方が利用できます。
EPAは、貿易の自由化と、外国間の投資や人の移動を保護するための制度です。
介護福祉の面においては、日本での介護資格取得を目指す外国人の受け入れをサポートしてます。
EPAに基づいて介護福祉士資格取得のために来日した方は、「EPA介護福祉士候補者」と呼ばれます。
EPA介護福祉士候補者が実技試験を免除されるには、「介護技術講習」または「介護福祉士実務研修」の受講・修了が必要です。
いずれの条件も満たしていない場合は、実技試験に合格しなければなりません。
なお、日本人はEPA介護福祉士候補者にはなれません。
養成施設ルート
介護福祉士の養成施設を卒業して、国家試験に臨むルートです。
介護福祉士養成施設とは、文部科学大臣または厚生労働大臣の認可を受けた学校です。
種類としては、短期大学・4年制大学・専門学校などがあります。
【介護福祉士養成施設の種類】
- 介護福祉士養成施設
- 社会福祉士養成施設
- 保育士養成施設
- 福祉系大学
ちなみに、実試験免除を得るための卒業期間は学歴によって異なります。
【実技試験免除資格を得るための卒業期間】
- 普通科の高等学校を卒業した場合…2年以上
- 社会福祉士養成施設・保育士養成施設・福祉系大学を卒業した場合…1年
2017年~2021年に養成施設を卒業した方には、基本的に無条件で介護福祉士資格が付与されます。
ただし、有効期限は5年間です。
資格を維持し続けるためには、卒業後5年以内の試験合格か、5年間の実務経験が必要です。
2022年以降に養成施設を卒業した方は、筆記試験合格で資格が取得できます。
実務経験ルート
3年以上の実務経験と「実務者研修」を修了した方向けのルートです。
具体的には介護事業所に3年以上従業し、かつ540日以上の実務日数が必要です。
実務者研修は、「介護職員基礎研修」「喀痰吸引等研修」の両方の修了でも代替できます。
介護福祉士の受験資格について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
超高齢社会の現在、介護の仕事は需要が高まっています。介護の資格の中でも、介護福祉士は唯一の国家資格であり、資格取得を目指す方も増えています。しかし、介護福祉士の受験資格は、目指すルートや実務経験などによって取得方法が異なるため、[…]
出典:[介護福祉士国家試験]受験資格:実技試験免除:介護技術講習:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
介護福祉士実技試験のポイント
介護福祉士試験の実技試験では、実際の介護の現場を想定したシミュレーション試験が行われます。
具体的には、当日渡される課題に沿ってどのような介護を実践するのかを試されます。
課題には、以下のような項目が記されています。
【課題の例】
- 利用者の氏名
- 利用者の年齢
- 今の状況(自室で身だしなみ中・テラスで休憩中 など)
- 身体状況(視力低下・身体の麻痺 など)
- 利用者が希望していること(食堂に移動して食事したい など)
受験者は上記の項目から適切な介護内容を考え、実践します。
実際の試験時間は5分程度で、試験前には10分程度の黙考時間が与えられます。
実技試験で抑えるべきポイントは、介護の3大原則「安全・安楽」「個人の尊厳」「自立支援」の尊重です。
具体的には、以下のようなポイントを踏まえながら介護を実践します。
- 利用者とのコミュニケーション(基本的なあいさつ・アイコンタクト など)
- 利用者の健康状態の把握(疲労の有無・空腹の程度 など)
- 事前の説明と承諾(食堂に移動しましょう などの声掛け)
- 身だしなみの確認(シャツのボタンは閉まっているか・不快な場所はないか など)
- 状況説明(食卓の上の皿・箸・コップの配置 など)
- 的確な身体的介助(ベッドから降りる・歩行時の介助 など)
被介護者である利用者には、モデルが扮します。
モデルを務めるのは、福祉系の学生が一般的で基本的にモデルは返事や自発的な行動は行いません。
受験者の声掛けに沿ってしか行動しないことを念頭に置き、的確な介護を行いましょう。
介護福祉士の筆記試験内容
介護福祉士試験の筆記試験について解説します。
出題形式
出題形式は、5者択一の選択形式です。
設問数は125問で、一問一点で採点されます。
試験時間
試験時間は220分です。
午前と午後の2部制になっています。
午前の試験時間は10時~11時50分です。
午後の分は13時45分~15時35分です。
試験科目
試験科目は全11科目です。
- 人間の尊厳と自立、介護の基本
- 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- 社会の理解
- 生活支援技術
- 介護過程
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障害の理解
- こころとからだのしくみ
- 医療的ケア
- 総合問題
合格基準
総得点の60~70%程度の得点が必要です。
具体的には、125点中70~75点前後が平均的な合格点です。
ただし、実際の合格点は問題の難易度にあわせて補正されます。
また、全ての科目で最低一問以上は正解しなければなりません。
介護福祉士の合格率について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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介護福祉士とヘルパーの違い
介護福祉士とヘルパーは、ともに介護系の専門職です。
仕事内容が似ているため混同されることも多いですが、両者には異なる点があります。
最も大きな違いは資格の有無です。
介護福祉士は国家資格取得者であるのに対し、ヘルパーには資格は必要ありません。
そのため、介護福祉士とヘルパーは仕事内容や待遇面においても明確な区別がされています。
仕事の違い
ヘルパーは基本的に、利用者の体に触れることはできません。
そのため仕事内容は、洗濯・食事作り・見守りなどの生活援助が中心となります。
対して介護福祉士は、身体的介護を行えます。
たとえば、食事・入浴・排泄などの介助が代表的です。
また、介護福祉士は、介護の現場で働くスタッフの育成・指導などの役割も担います。
あるいは介護チームのリーダーとして、現場責任者となるのも介護福祉士の大切な業務です。
待遇の違い
国家資格取得者である介護福祉士は、ヘルパーよりも給与・福利厚生の面で優遇されます。
たとえば同じ業務内容であっても、介護福祉士には特別手当てがつくことも多いです。
また、介護福祉士の資格は、就職・転職の際にも有利です。
正社員や管理職としての雇用の機会も多いため、就職先の幅が広がる点がメリットです。
一方、ヘルパーは多くの場合、パート・アルバイト待遇での雇用となります。
ただし、ヘルパーの中でも「介護職員初任者研修」の修了者は、採用や給与面で優遇されやすいです。
ヘルパーについて詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
「介護保険のヘルパー利用では、いったいどのようなことができるのだろう?」「介護保険でヘルパーを利用する際の、利用の流れなどについて詳しく知りたい。」と上記のような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。介護保険[…]
介護福祉士試験の過去問
介護福祉士試験の過去問について
- 介護福祉士筆記試験の過去問
- 介護福祉士実技試験の過去問
に分けてそれぞれご紹介します。
介護福祉士筆記試験の過去問
介護福祉士筆記試験の過去問題集はいろいろなところから出されています。
無料で利用できるものも多くあります。
主なところを以下にご紹介します。
- 公益財団法人社会福祉振興・試験センター
- 第31回(平成30年度)~第33回(令和2年度)試験問題(PDF)
- (同年度)音声読み上げよう試験問題
- (同年度)ふりがな付き試験問題
- (同年度)合格基準・正答一覧(PDF)
- 過去問.com
第21回(平成20年度)~第33回(令和2年度)の過去問一覧
- ヘルス・ケア・サポート ハクビ
第25回(平成24年度)~第33回(令和2年度)介護福祉士国家試験 過去問題アプリ
介護福祉士実技試験の過去問
介護福祉士実技試験の過去問題については、試験対策に使える動画や参考書があります。
YouTubeには実技試験の対策になる動画が多くアップされていますのでご確認ください。
以下のような参考書もあります。
- 2016年版 U-CANの介護福祉士 実技試験対策総まとめ(生涯学習のユーキャン)
- 介護福祉士国家試験実技試験のチェックポイント2016(中央法規出版)
- 介護福祉士実技試験過去問題集<’16年版>(成美堂出版)
出典:[介護福祉士国家試験]過去の試験問題:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
介護福祉士試験の実技まとめ
ここまで、介護福祉士試験の実技についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 介護福祉士試験とは、介護系の資格試験の中で唯一の国家資格
- 介護福祉士試験で実技免除となるのは「実務経験者」「福祉系学校卒業者」「養成施設卒業者」「EPA介護福祉士候補者」
- 実技試験で抑えるべきポイントは、介護の3大原則「安全・安楽」「個人の尊厳」「自立支援」の尊重
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。