令和3年度(2021年度)認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。
認知症介護基礎研修には受講対象者や免除条件など、さまざまな知っておくべきことがあります。
認知症介護基礎研修とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
本記事では認知症介護基礎研修の義務化について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症介護基礎研修の概要
- 認知症介護基礎研修の受講が義務化された対象者
- 受講義務化の対象外(免除)となる場合
- 無資格者が受けておきたい研修や資格
- 認知症に特化した研修や資格
認知症介護基礎研修の義務化についてご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症介護基礎研修とは?
認知症介護基礎研修の概要や研修内容はどのようなものなのでしょうか?
それぞれご紹介します。
研修の概要
認知症介護基礎研修は認知症介護に従事する初任者養成という趣旨で創設され、平成28年度(2016年度)よりスタートした研修です。
新任の介護職員を対象に、業務で認知症介護をするうえで最低限必要な知識、技能を短時間で修得することを目的としています。
認知症介護基礎研修を通して、新任の介護職員が認知症の方の尊厳を守り、認知症の本人主体の介護を実践できるようになることを目指しています。
研修内容
令和3年(2021年)4月に厚生労働省が認知症介護基礎研修の標準的カリキュラムを示しました。
標準的カリキュラムは、認知症の方の理解と対応の基本という一科目をeラーニングでの自習で3時間程度学ぶというものです。
eラーニングはweb サイト上にアップされた学習コンテンツを、研修受講者が視聴して学ぶ形式を指します。
研修にかかる費用
認知症介護基礎研修の実施主体は自治体(都道府県、市町村)です。
都道府県知事や市町村長が指定する法人が実施主体となることもあります。
研修にかかる費用は研修の実施主体によって変わってきます。
費用を1000円としている自治体もあれば5000円としている自治体もあります。
詳しくは実施主体のホームページをご確認ください。
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認知症介護基礎研修の受講は義務?
認知症介護基礎研修は平成27年(2015年)1月に策定された認知症施策推進総合戦略にもとづき創設されました。
平成28年度(2016年度)から始まり、令和3年度(2021年度)の介護報酬改定で、認知症介護基礎研修受講が義務化されました。
今まで、一定の介護スキルや実務経験のある者を対象にした認知症介護に関する研修はありました。
しかし新人職員向けの研修がなかったため、認知症介護基礎研修が創設されることとなりました。
令和3年度(2021年度)からの義務化ですが、3年の経過措置期間が努力義務として設けられています。
新入職員の受講については一年の猶予期間が設けられました。
令和6年度(2023年度)より完全に義務化されます。
研修の受講は全員必須?
研修には対象者となる人や、対象外となる人がいます。
具体的な基準はどうなっているのでしょうか?
それぞれご紹介します。
研修対象者
認知症介護基礎研修の受講義務のある対象者は、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を持たない無資格者です。
受講義務化の対象外(免除)となる人
免除となる方は以下の通りです。
- 看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士等など
- 介護福祉士実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者など
- 養成施設及び福祉系高校で認知症に関する科目を受講した者
- 認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の認知症介護に関する研修を修了した者
受講義務免除にならない場合もある
認知症サポーター養成講座の修了者は受講義務化の対象外にはなっていないため注意しましょう。
認知症サポーター養成講座は一般市民を対象に基礎知識の共有を目的としています。
そのため、具体的なサービス提供場面を想定したものではありません。
認知症介護に業務で携わり、サービス提供していく者を対象とした認知症介護基礎研修とは内容が異なるため対象外となります。
研修はどこで受ける?
厚生労働省が示した認知症介護基礎研修の標準的カリキュラムでは、eラーニングを活用した自習での受講が原則となりました。
eラーニングの活用が原則とされたのは受講しやすい仕組みにより研修を行うという考えに基づいています。
その他、集合型の講義・演習、または同時双方向の意思疎通ができるオンライン(Zoomなど)による講義・演習の形式で実施します。
関東では栃木県、茨城県、群馬県、千葉県、東京都でeラーニングでの受講の形式が採用されています。
群馬県は集合研修の形式も採用しており、eラーニングでの受講と集合研修での受講の併用(令和4年度以降eラーニングのみ)となっています。
合わせて受けておきたい研修や資格は?
認知症介護基礎研修では無資格者への受講が義務化されました。
ここでは無資格の介護職員が、合わせて受けておきたい研修や資格について説明します。
介護職員初任者研修
業務で介護に従事する者向けの基礎的な研修として介護職員初任者研修があります。
介護職員初任者研修で学ぶ内容は認知症介護に限定はしておらず、介護人材の一般的なキャリアパスの入口になります。
介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士という流れで介護福祉士を取得できます。
訪問介護に従事しようとする者や在宅・施設を問わず介護の業務に従事しようとする者が受講の対象になります。
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介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護福祉士の国家試験を受験するためには、必ず受講しなければならない講座です。
介護福祉士実務者研修は、介護人材の一般的なキャリアパスで介護職員初任者研修の次のステップに位置します。
平成28年度の介護福祉士国家試験から受験資格に、実務経験3年以上に加え実務者研修の修了が必須となりました。
実務者研修では、20科目(450時間程度)受講する必要があります。
その他、医療的ケアに関する演習(喀痰吸引・経管栄養・救急蘇生法)もあります。
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介護支援専門員
介護支援専門員は、別名ケアマネジャーとも呼ばれます。
要介護者、要支援者の相談に応じて、介護サービスを受けられるように、ケアプランの作成やサービス事業者等との連絡調整を行います。
特別養護老人ホームなどの介護施設で勤務して、介護職員が実施するサービス内容を計画する業務に従事することもあります。
介護支援専門員になるには、保健医療福祉分野での実務経験(医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士等)が5年以上必要です。
その後、介護支援専門員実務研修受講試験合格、介護支援専門員実務研修の課程修了で、介護支援専門員になることができます。
介護事務
受付の担当、レセプトと呼ばれる介護給付費明細書の作成、介護支援専門員の業務のサポートなどが介護事務の仕事です。
介護事務の仕事は資格がなくても行えますが、介護保険制度やレセプト作成に関する知識が求められます。
また介護事務管理士という資格は、正確に介護報酬を計算し、レセプトを作成できるスキルがあることの証明になります。
介護支援専門員と同様、介護事務は介護への直接従事とは異なる仕事を担います。
介護福祉士
介護福祉士は、身体上や精神上の障害により、日常生活を営むのに支障がある方に介護を行うための資格です。
資格取得には養成施設ルート、実務経験ルート、福祉系高校ルート、経済連携協定ルートの4通りがあります。
介護福祉士は、介護に直接従事する介護職員としてキャリアを積んでいくことを目指すならば取得したい国家資格です。
介護福祉士について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
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認知症に特化した研修や資格と比較表
続いて、認知症介護に特化した資格や研修について解説します。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する民間資格で、認知症介護に特化した人材の育成を目的としています。
認知症介護のプロを目指すならば、取得したい資格です。
認知症ケア専門士の試験を受験するには、受験年の3月31日より10年以内に認知症介護に関する3年間の実務経験があることが必要です。
認知症介護実践者研修
認知症介護基礎研修以外の国が進める認知症介護に関する公的な研修も確認しましょう。
認知症介護実践者研修→認知症介護実践リーダー研修→認知症介護指導者研修とステップアップ型の研修体系になっています。
上記の研修は一定の知識や実務経験がある者を対象にしています。
対象者は、認知症介護基礎研修を修了している者、身体介護に関する基本的知識・技術を修得している者、概ね実務経験2年程度の者です。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践者研修の次のステップに位置するのが認知症介護実践リーダー研修です。
認知症介護実践リーダー研修も、認知症介護実践者研修と同様に、厚生労働省が定め、都道府県・指定都市等が実施する公的研修です。
対象者は、介護業務に概ね5年以上従事した経験がある者、認知症介護実践者研修を修了し一年以上経過している者です。
認知症介護の主な資格の難易度・資格取得費用比較
資格名 | 受験資格 | 難易度(合格率) | 資格取得費用 | 資格保有者給与 |
認知症介護基礎研修 | 認知症ケアに携わる介護従事者 無資格の介護従事者 | 試験なし | 無料~5,000円 | 平均26万円 |
認知症介護実践者研修 | 研修は各都道府県から指定や委託された機関が行うため、受講資格や受講費用などの受講内容はそれぞれ異なります。 | 試験なし | 無料~25,000円 | 手当3,000~20,000円 |
認知症介護実践リーダー研修 | 認知症介護実践者研修の修了から1年以上経過している 認知症の方の介護業務に5年以上従事した経験がある 以上の項目などを満たしている必要があります。 | 試験なし | 無料~5,0000円 | 手当が認知症介護実践者研修より高い |
認知症ケア専門士 | 「試験実施年の3月31日から過去10年間に、3年以上認知症ケアの実務経験を有している」というのが資格となります。 | 53.7%(2021年度) | 26,000円 | 認知症介護基礎研修より高い |
認知症介護基礎研修の義務化のまとめ
今回は認知症介護基礎研修の義務化についてご紹介しました。
認知症介護基礎研修の義務化についての要点を以下にまとめます。
- 認知症介護基礎研修は新任の介護職員が対象
- 看護師や介護実務者研修修了者、福祉系高校で認知症に関する科目を受講した者など対象外となる人はさまざま
- 一般的なキャリアパスは介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士である
- 実務経験がある者を対象とした認知症介護に特化した民間資格として認知症ケア専門士がある
- 実務経験がある者を対象とした認知症介護に特化した公的研修として認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。