どんな人であっても人生の最期は平等に訪れます。
病院で過ごしたい方や自宅で過ごしたい方など、最期をどう過ごしたいかは人によってさまざまです。
その中で、ターミナルケアはご存知でしょうか?
身体的・精神的な苦痛を取り除くことを主な目的としており、近年注目を集めています。
以下の点を中心に解説していきます。
- 終末期患者に対して医療、介護ケアを行う
- 主な内容は身体的ケア、精神的ケア、社会的ケア
- ターミナルケアを行う場所は病院、介護施設、自宅
ぜひ最後までご覧いただき、ターミナルケアの理解にお役立てください。
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最期の過ごし方を考えるケア
ターミナルケアは、残された時間をいかに平穏に暮らすかを考えたケアです。
それは、具体的にどのようなケアなのでしょう。
終末期の意味
終末期とは、老衰や病気、障がいの進行などによって、現在の医療では回復する可能性がなく、積極的な治療が行えなくなったときを指します。
余命数カ月と判断されたあとの時期を意味します。
ターミナルケアとは
ターミナルケアとは、終末期医療のことです。
延命措置は行わず、身体的・精神的な苦痛を取り除くことを主な目的としています。
ターミナルケアでは、残りの人生をいかに心穏やかに過ごせるかに重点を置き、さまざまなケアを行います。
ターミナルケアで受けられるケアとは?
ターミナルケアでは、大きく分けて3つのケアがあります。
身体面のケア
終末期には痛み、全身の倦怠感、食欲不振、呼吸難、不眠といった症状があらわれます。
このような症状が続くと精神面にも悪影響が出るので、投薬を中心に痛みなど症状の緩和を行います。
そのほか、寝たきりが長く続くことで「床ずれ」にならないためのケアも行われます。
精神面のケア
誰でも死を目の前にして、冷静でいられないのは当然です。
一旦受け入れた死も、遺される家族のことなどを思うと日々心が揺れて精神的に不安定になります。
こうした不安や恐怖といった感情に寄り添って、できるだけ心穏やかに過ごすためのケアを行います。
たとえば、好きな音楽を流したり、思い出のアルバムや大切にしているものをベッドの周りに配置するなど、本人にとって満足度の高い空間を作るためにいろいろな工夫をします。
社会面のケア
ターミナルケアが長引けば、医療費が心配になります。
金銭のことで本人や家族が思いつめてしまうことがないように、医療ソーシャルワーカーなどが相談に乗ります。
社会福祉制度を利用する際の手続きのサポート、ケアマネージャーによる情報提供など社会面でのケアを行います。
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ターミナルケアに似たケアがある?
ターミナルケアだけでなく、終末期を迎えた患者さんをケアするシステムがあります。
どのような違いや特徴があるのでしょう。
緩和ケア
末期がんなど、生命を脅かす病気に罹っている患者さんに対して、投薬などで痛みを緩和するケアです。
苦痛を和らげることが主な目的ですが、特徴的なのは医療的な方法が取られることです。
余命にかかわらず、積極的な治療を並行して行います。
また、ターミナルケアは終末期に行われる医療ですが、緩和ケアは診断時から行われるケアです。
そのため、ターミナルケアと緩和ケアでは実施される時期の認識が違います。
ホスピスケア
余命わずかで、ホスピスという施設で過ごす患者さんに行われるケアです。
具体的には、痛みや精神的ストレスなどをできるだけ取り除いて、最後のときを心穏やかに過ごせるようにします。
ホスピスケアでは、治癒及び延命を目的とした治療はほとんど行われません。
そのため、ホスピスケアは終末期の治癒を目的とした治療がすべて終わったあとに行われる緩和ケアととらえることができます。
看取りケア
延命治療は施さず、人間らしく最期を迎えられるようにサポートするケアです。
主に在宅や介護施設などで行われることが多く、最後まで介助や身体をさする、声をかけるといったケアを行います。
看取りケアが行える介護施設について知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
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ターミナルケアはどこで受けられる?
ターミナルケアは「病院」「介護施設」「自宅」で行うことができます。
それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介しましょう。
病院で受ける場合
ターミナルケアは、一般病棟の中のホスピスと呼ばれる専門病棟や療養型病院などで受けることができます。
容体が急変しても医師や看護師などが常駐しているので、安心です。
また家族にかかる負担も軽くなるというのがメリットです。
デメリットとしては、費用がかかることや急変したときに家族が看取ることができないことなどです。
介護施設で受ける場合
「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」などの介護施設でもターミナルケアが行われています。
介護スタッフや施設の医師・看護師が24時間体制でケアを行います。
病院と同様に、家族への負担が少ないことがメリットですが、費用がかかることやすぐに駆けつけられないといったデメリットがあります。
在宅で受ける場合
残された時間を慣れ親しんだ自宅で迎えられるのは、本人にとって最良のことでしょう。
必要に応じて、医師や看護師の訪問医療を受けながら過ごします。
メリットは、家族といられる時間が長く取れることと費用が抑えられるという点です。
しかし家族の負担が大きくなるということもあります。
介護負担を少しでも軽くするため、介護サービスを上手に利用しましょう。
ターミナルケア前に話し合っておくこと
ターミナルケアに入ってしまうと、意識がもうろうとしたり、会話が困難になったりする場合があります。
ターミナルケアになる前に、本人と話し合っておいた方がいいことがいくつかあります。
直前で困らないように家族で情報を共有しておきましょう。
ターミナルケアを始める時期
ターミナルケアを始める時期をいつにするのか、本人、家族、医師を交えて話し合っておくべきでしょう。
明確な意思決定ができなくなることを想定して、誰に自分の意志を託すのかを決めておくことも必要です。
ターミナルケアを受ける場所
終末期では、どこで最期を迎えるかということも非常に重要です。
本人の意思決定が可能なら、家族と本人が話し合って決めるべきでしょう。
このとき考慮しなければならないことは、一緒に過ごす家族が本人の希望を受け入れられる状況なのかということです。
時間的、経済的な無理はないか、希望に沿えるようなサービスを受けることができるかなどを考慮したうえで決定することも大切です。
延命治療の有無
ターミナルケアに入る前に、延命治療についても本人と確認するべきでしょう。
いざというとき、本人の意思が伝わっていれば迷いも後悔も最小限にすることができます。
具体的には、食事が摂れなくなったときに点滴や経管栄養をするかしないかなどです。
心肺蘇生の措置はするかしないかなど、その場で即決しなければならない医療措置もあるので方針を決めておくことが大切です。
意思決定場面の意思
ターミナルケアに入ると、病気の進行や病状によっては、話すことや意思表示をすることができなくなる可能性があります。
そのような場合を想定して、判断が必要な場面での意思・考えを前もって提示しておくことです。
このことによって、最後まで自分の意志により自分の生を全うしたという充足感が得られることでしょう。
自宅でのターミナルケア
自宅でターミナルケアするにあたって以下の2つを説明します。
- 自宅でターミナルケアをするメリット
- 自宅でターミナルケアを行うときのポイント
自宅でターミナルケアをするメリット
自宅でターミナルケアをするメリットはいろいろあります。
主なメリットは以下のようなものです。
- 残された時間を家族と一緒に過ごすことができる
- 本人の精神的・肉体的負担の軽減(自宅でリラックスできるため)
- 経済的負担の軽減(病院に比べて)
- 1人にさせておいて寂しくないかなどの心配がない
- コロナ禍での入院のように面会できないことがない
- 訪問看護や訪問介護などのチームと連携し本人や家族の納得のケアができる
自宅でターミナルケアを行うときのポイント
自宅でターミナルケアを行うときのポイントはデメリットをどう軽減するかにあります。
自宅でターミナルケアを行うデメリットには以下のようなものがあります。
- いつも家にいて面倒を見る必要がある(褥瘡ケアや食事、トイレなど)
- 重い介護者の精神的・肉体的負担
- 患者と介護者(家族)の関係に重い負担による悪影響
- 容態急変時の対応
自宅でターミナルケアを行うデメリットを補う以下のようなことがポイントになります。
- 容態急変時のための訪問医療者と介護者(家族)の日頃のコミュニケーション
- 状態にあった医師や看護師の訪問頻度の設定
- 訪問看護や訪問介護チームと介護者(家族)の連携
- ケアマネジャーや介護サービスの利用による介護者の負担軽減・サポート
- 床ずれ悪化予防のための介護者の早め速めの対応
ターミナルケアにかかる費用は?
ターミナルケアには当然費用がかかりますが、とくに「加算」という費用が特徴的です。
ターミナルケア加算とは
ターミナルケアは、通常の介護に比べ、その人らしく最期を迎えられるようにさまざまな体制を構築、実践しています。
ターミナルケア加算とは実績を評価するもので、在宅で利用者が死亡した場合、死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合に算定することができます。
看取り介護加算とは
介護施設での看取り介護を行うことによる介護報酬です。
特別養護老人ホーム、グループホーム、特定施設入居者生活介護での看取りが対象になっています。
看取り介護加算は、対象期間が今までは30日まででしたが、45日まで評価対象となりました。
それだけ、看取りの期間が長くなっているということです。
それぞれに違いはあるのか?
ターミナルケア加算と看取り介護加算では、支援するポイントが異なります。
ターミナル加算は、看護師による医療的なケアが中心となります。
生命を維持するための「痰吸引」や「経管栄養注入」などが行われます。
一方で看取り介護では、終末期の高齢者の介護を介護職員が行い、看護師は健康状態の管理を行うだけにとどまります。
最大の違いは、医療による延命治療を行わないことです。
看取り介護加算は、延命するよりも個人の尊厳を一番に重視することにあるからです。
実際にかかる費用は?
ターミナルケアの費用は、どこで受けるかによって違ってきます。
病院でのターミナルケアでは、治療内容にかかわらず入院費は一定です。
基本的には30日以内で1日49,260円、60日以上で1日33,000円となっています。
ここにプラス食事医療費360円が加算されます。
ターミナルケアの費用には健康保険が適用され、さらに高額医療費制度の対象となるため、あらかじめ「限度額適用認定証」を取得しておくと安心です。
参照元:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
終末期に家族ができることは?
終末期を迎えようとしている家族が身近にいた場合、家族として何ができるのでしょうか?
最も大切なのはコミュニケーションです。
今の体調のこと、どんなことに不安を持っているのか、困っていることがあるかなど、寄り添うことが大切です。
寄り添うことが患者に安心感を与えます。
言葉が話せなくても、長い沈黙があっても、寄り添って手を握ったり、話しかけたり、背中をさすったりして一緒にいることを感じさせてあげることです。
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ターミナルケアの現状と課題
今後のターミナルケアについて以下の2点を挙げます。
- ターミナルケアの現状
- ターミナルケアの課題
それぞれの内容についてご紹介します。
ターミナルケアの現状
日本におけるターミナルケアの現状をあらわす厚生労働省の統計データがあります。
厚生労働省が行っている統計データは人口動態調査における死亡場所の推移です。
以下は年次別の死亡場所の構成割合を抜粋したものです。
【死亡場所の推移】
年次 | 死亡場所の構成割合(%) | |
病院 | 自宅 | |
1960年 | 18.2 | 70.7 |
1980年 | 52.1 | 38.0 |
2005年 | 79.8 | 12.2 |
2020年 | 68.3 | 15.7 |
出典:厚生労働省【第1編 人口・世帯 第2章 人口動態|厚生労働省(第1-25表)】
「死亡場所の推移」は以下のような傾向を示しています。
- 1960年は圧倒的に自宅での死亡(79.8%)が多い
- 1980年を境に逆転し2005年では病院での死亡(79.8%)が圧倒的に多くなっている
- 高齢化社会に入ってから自宅での死亡割合は増加傾向にある(2020年は15.7%)
「死亡場所の推移」の傾向は以下の日本の現状をあらわしています。
- 死亡場所は社会の安定とともに自宅から病院での死亡に変化・逆転した
- しかし、近年は高齢化社会対策により在宅での看取り、終末期ケアが増える傾向にある
多くの方は自宅でなくなりたいとの思いがあります。
2017年の厚生労働省の調査でも約60%の方が「自宅で最期を迎えたい」との希望を示しています。
しかしながら、急速に進む高齢化社会にあってターミナルケアの準備や理解はまだ不十分という現状があります。
ターミナルケアの課題
高齢化に伴う在宅医療や介護の需要は高まっています。
しかし、まだターミナルケアについての知識が十分に周知されていないのが現状です。
人生の最終段階で最も大事なのは本人の意思に沿った医療・ケアが行われることです。
本人の意思に沿った医療・ケアの取り組みは医療・介護現場に加え国民全体への浸透が求められます。
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ターミナルケアのまとめ
ここでは、ターミナルケアについて紹介してきました。
要点を以下にまとめます。
- ターミナルケアとは、余命わずかとなった終末期患者に対して行う医療・介護ケア
- ターミナルケアで行うケアは「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」
- ターミナルケアを行う場所は「病院」「介護施設」「自宅」
人生の残りの時間を心穏やかに過ごすのがターミナルケアです。
できるだけ本人が望む形に近づけるように、早い段階から家族で話し合っておきましょう。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。